公務員はなぜクビにならないの?
過去に公務員がクビになった事例はないの?
公務員は民間企業に属する会社員とは異なり、会社の都合等でいきなりクビ(解雇)になることはありません。
なぜなら、法律により身分保障されているからです。
とはいえ不祥事や違法行為等を行った場合には、公務員でも懲戒免職で実質クビ扱いなります。
実際に公務員が不祥事を起こして懲戒免職になった事例も数多く上がっており、決して珍しいことではありません。
この記事では公務員が実質クビ扱いになる主な3つのケースをご紹介すると共に、過去の事例に関してもいくつか解説しています。
最後まで読んでいただくことで、公務員が実質クビ扱いになる条件等を詳しく把握できるでしょう。
終身雇用制度が崩壊している現代社会において、公務員に関しても一度採用されれば定年退職まで安泰というのは、安易な考えです。
明らかに本人が「能力不足」であれば、公務員であっても実質クビ扱いになるケースもあります。
公務員は法律に守られており基本的にはクビになることはない
公務員は一度なってしまえば身分保障制度により、簡単にクビになることはありません。
国家公務員の場合は、国家公務員法で身分が保障されており、地方公務員の場合は地方公務員法で同じく身分保障されているからです。
とはいえ、例外的にクビになるケース(懲戒免職、分限免職、依願退職など)もあるため、100%途中で職を失うリスクがないとは言い切れません。
法律により身分保障されている公務員は会社員とは異なり、仮に自治体の財政状況が悪くても自発的に依願退職しない限り、受動的に解雇になることはありません。
国家公務員の場合(国家公務員法 第75条)
国家公務員の場合は、「国家公務員法 第75条」により身分保障されています。
以下は、国家公務員法より一部抜粋した文章です。
(身分保障)第七十五条 職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。
出典:e-Gov国家公務員法より
要約したら法的もしくは人事院規則に適した正当な理由がない限り、クビになることはないとうことです。
地方公務員の場合(地方公務員法 第27条)
地方公務員の場合は、「地方公務員法 第27条」に明記されています。
以下は、地方公務員法から一部抜粋した文章です。
地方公務員法27条(分限及び懲戒の基準)2項「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条令で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降級されることがない。」
出典:e-Gov地方公務員法より
国家公務員と同じく、法律で定める正当な理由がなければクビになることはありません。
ただし、逆にいえば法的な正当理由があれば、クビになる可能性があるとも取れます。
公務員が実質クビ扱いとなる主な3つのケース
公務員が実質クビ扱いになるケースとしては、3つ挙げられます。
- 懲戒免職:不祥事を起こした際には、公務員でも懲戒免職によりクビになる
- 分限免職:無断欠勤や心身故障の場合には、分限免職により公務員でもクビになる
- 依願退職:上司等に論されて、渋々本人が依願退職する場合も実質クビ扱いになる
民間企業のように上司から呼び出されて、いきなり「即日解雇通告」を言い渡されることはありません。
しかし、公務員の場合は上司から事情説明され「自発的に依願退職してくれ」とお願いされて、事実上クビ扱いになるケースがあります。
能力不足や無断欠勤、勤務態度不良、パワハラ等の正当な理由がある場合、上司から依願退職(もしくは分限免職扱い)をすすめられます。
職場から依願退職をすすめられるということは、事実上のクビ扱いといっても過言ではありません。
不祥事を起こした際には公務員でも懲戒免職によりクビになる
公務員が不祥事を起こした際に以下の3つの条件に該当する場合、懲戒処分の対象になります。
(懲戒の場合)第八十二条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
①この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(中略)に違反した場合
②職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
③国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
出典:e-Gov国家公務員法より
普通に公務員として働いている上では、懲戒免職になる可能性は極めて低いです。
懲戒免職は、懲戒処分の中でも最も重い処分となるため、本人がよっぽどのことをしない限り言い渡されることはありません。
また、万が一懲戒免職処分となった場合、退職金は基本的に支給されません。
無断欠勤や心身故障の場合には分限免職により公務員でもクビになる
分限免職とは、業務遂行に対して著しく支障がある公務員に対し下される免職処分になります。
公務員が分限免職となる理由として、最も多いのは以下の6つです。
- 心身の故障
- 条例に定める事由による
- 刑事事件に関し起訴された
- 職に必要な適格性を欠く
- 職制等の改廃等により過員等を生じた
- 勤務実績が良くない
人間関係等のストレスにより心身に故障をきたし、分限免職(もしくは依願退職)される方は毎年一定数います。
筆者自身も元は航空自衛隊に勤務していましたが、自衛隊は特にメンタル的な理由で辞める人が多いです。
また、懲戒免職とは異なり分限免職の場合は、あくまでも本人の能力不足等が原因になるため、退職金は支給されます。
上司等に論されて渋々本人が依願退職する場合も実質クビ扱いになる
依願退職とは、本人が自発的に職場に退職願を提出して退職することです。
民間企業に勤めている会社員の場合は、自己都合退職にあたります。
ただし、公務員の場合はたとえ依願退職であったとしても、実際には簡単に辞めることはできません。
退職願を提出したとしても任命権者に退職の承認を頂かない限り、正式に依願退職とはならないのです。
多くの場合、公務員が依願退職を申し出た際には、上司や同僚等の引き止めにあうことでしょう。
しかし、過度に職務態度が悪かったり、業務遂行能力的に問題があったりすると、逆に職場の上司から依願退職をすすめられるケースもあります。
また、依願退職の際には、基本的に退職金が受け取れるようになっています。
公務員が過去に実質クビとなった事例をご紹介
公務員が過去に実質的なクビ扱いとなった事例は、意外に多いです。
不祥事に関しては一般会社員に限った話ではなく、公務員でも毎年何かしらの事件がニュースとして取り上げられています。
自分とは関係のない話とは思わずに、是非とも過去事例を反面教師として受け取ってみましょう。
公務員はよっぽどのことがない限り、実質的なクビ扱いとはなりません。
しかし、過度な違法行為を行った際には、一発で懲戒免職を言い渡される可能性が高いため、身の振り方に関しては十分に考えなければいけません。
「能力不足」を理由に大阪市職員が分限免職処分を受けた事例
大阪市の橋下徹市長の主導で2012年に制定された「職員基本条例」に基づいて、職員2人が民間で言う解雇にあたる「分限免職」の処分を受けた。
免職の理由は「能力不足」。不祥事による懲戒処分以外の理由での免職はきわめて異例だが、市の説明によると、その「能力不足」ぶりは相当のものだ。
出典:Jcastニュースより
こちらは実際に大阪市職員が、本人の「能力不足」により分限免職を受けた珍しい事例です。
1年間の指導により該当職員の改善が見られなかったため、最終的に分限免職を下したようです。
免職になった職員の年齢は、30〜40代前半と職場では中堅クラスにあたる年代です。
業務遂行能力が著しく低い場合は、公務員でも年齢に関係なく実質的なクビ扱いになる、良い事例だといえます。
万引きにより懲戒免職を受けた千葉県職員の事例
遠藤一等航海士は、停職から復職した半年後の今年11月25日、館山市内のホームセンターで釣りなどに使われる金具2点(販売価格計1256円)を盗んだとして現行犯逮捕された。
出典:Yahoo!ニュースより
懲戒免職となった千葉県職員は、以前にも万引きにより停職処分を受けていました。
一回目は停職処分で済んだようですが、公務員だったとしても流石に2回目ともなると、懲戒免職は免れないでしょう。
一発で懲戒免職となるケースは稀ですが、公務員が不祥事を起こした際には、懲戒処分の対象となるためくれぐれも注意しましょう。
消防職員が不祥事を起こし懲戒免職となった事例
勤務時間中に同僚の財布からお金を盗んでいたということです。
甲府地区消防本部は、男性職員を懲戒免職処分としました。
懲戒免職処分となったのは、甲府地区消防本部に勤務する20代の男性職員です。
出典:Yahoo!ニュースより
金銭トラブルは、どこの職場でも非常に起こりやすい不祥事の一つですが、公務員に関しても例外ではありません。
懲戒免職となった職員は、以前にも業務中に同僚の財布から金銭を盗む等の不祥事を起こしており、過去に停職職処分を受けていました。
再犯により懲戒免職となった訳ですが、この時職員の上司も「指導不足」として、注意や訓戒の処分を受けています。
この事例から分かることは、職場内の問題は決して本人だけの問題ではないということです。
女性教師が副業を行い懲戒免職となった事例
多摩地域の小学校で保健室に勤務する28歳の女性教師が、風俗店で働いていたことにより、処分されたことが発表された。女性教師は懲戒免職となった。
出典:Yahoo!ニュースより
公務員の副業は、法律により禁止されています。
国家公務員の場合は、「国家公務員法第103条及び104条」、地方公務員の場合は「地方公務員法第38条」にしっかりと明記されています。
副業行為が見つかると懲戒処分の対象となり、内容によっては一発で懲戒免職になる可能性もあるということです。
財政破綻した自治体(夕張市)の事例
夕張市の財政破綻したとき、市が実質的に負担しなければならない負債総額は632億円に上り、この金額は、平成16年度(2004年)の市税収入は9億7000万円で負債総額の割合は65倍で夕張市の解消すべき赤字は、地方債残高を除いた353億円となってた。
出典:夕張市商工会議所より
北海道夕張市は、財政破綻により2007年に「財政再建団体」に指定されたことで、国の管理下になりました。
財政破綻後は市職員の年収が約4割削減されており、当時は多くの職員が退職したことで話題となりました。
課長クラスでも手取りが、約17万円まで削減されたようです。
会社員に例えると会社の経営が悪くなり、給料がカットされ社員が次々に自主退職していく状態です。
本来、自治体が財政破綻することは非常に稀なケースです。
しかし、今後日本は人口減少がますます進むことが予想されており、地方自治体の人口も減り、それにより税収も比例して減少します。
財源が少なくなると夕張市のように、公共サービスの提供や管理ができなくなる上に、職員の給与も当然カットされます。
夕張市の事例から分かることは、公務員であれど個人の理由だけではなく、自治体の理由により退職を余儀なくされる可能性もあるということです。
まとめ
公務員は法律により身分保障はされていますが、実質的なクビ扱いとなる可能性は0ではありません。
会社員のように業務遂行に対する能力が著しく低いと判断されると、分限免職により事実上のクビ扱いとなります。
「公務員 = 一生安泰」という考え方はすでに古く、公務員も他の職業と同じく自身の将来に対して、危機感を持って行動しなければいけません。
また、今回ご紹介した複数の事例を、ご自身でも一度調べてみてください。
公務員という職業の意外な一面が、更に伺えるはずです。
安泰とされてきた公務員という職業ですが、時代は変わりその立場は必ずしも「一生安泰」とはいえなくなってきています。
(自分は大丈夫だ。関係ない)と思っていても、いつ職を失うかは誰にも分かりません。
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