公務員は副業として農業収入を得ても問題になりませんか?
公務員が農業を行う場合、具体的な始め方などに関して知りたいです。
大前提として公務員の副業は、法律により禁止されています。
これは国家公務員(国家公務員法第103条、104条)、地方公務員(地方公務員法第38条)に限らず、全ての公務員に言えることです。
ただし、地方公務員の農業収入に関しては、事前に申請を行えば認めてもらえるケースが多いため、実家が専業農家という人には大変大きなメリットです。
実際に公務員をやりながら兼業農業を営む人は多いため、直接行っている人に尋ねてみるのも一つの手段でしょう。
この記事では、公務員が副業として農業に営む際の注意点や禁止事項などに関して、初心者の方にも分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、公務員として農業収入を安全に確保できる糸口が掴めるはずです。
一次産業が抱えている労働力不足を補うため、市が地方公務員に対して、積極的に農業バイトに参加するように促しているところもあります。
公務員の農業バイトは副業にならないのか
公務員は、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念の義務」の3つの観点から法律により副業が禁止されています。
ただし、農業や株式投資、不動産投資、家業の手伝い、社会貢献活動など一部の副業であれば、事前の申請を行うことで認可されます。
農業バイトも含まれているため、当然事前の申請さえ済ませていれば、公務員であっても農業収入を得ることが可能です。
公務員の農業バイトは申請すれば認可されるケースが多いですが、農業関連であれば何でもOKという訳ではありません。
公務員の副業は原則禁止だが農業の手伝いは申請が通りやすい
公務員の副業に関しては、過去に隠れて取り組んでいたことがバレてしまい、懲戒処分になった職員も珍しくありません。
例外的に公認されている農業(兼業農家)であったとしても、事前の申請がなく収入を得ていた場合は、罰せられる可能性があります。
実際に実家の農業の手伝いをしていた公務員が申請を忘れていたため、その後懲戒処分になった事例もあがっています。
本来、副業が禁止されている背景には、信用失墜行為の禁止や守秘義務、職務専念の義務などが公務員法に定められているため、「嘘をついて隠れて行っている」というのは完全にアウトです。
逆にいえばこれらの法律に抵触しない範囲であれば、たとえ公務員であったとしても、特に問題なく副業が行える訳です。
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市が地方公務員の副業を後押ししているところもある
特に地方公務員の副業としての農業バイトは、地方貢献や地域振興との関係性が根強く、許可が降りやすい特徴があります。
実際に地方だと市役所職員の大半が兼業農家であり、「休日は農家の手伝いをしている」という人もかなり多いです。
特に一次産業である農業は、少子高齢化問題により収穫の人手不足が深刻化しているため、品種限定で副業基準を新たに設けて、市が全面的に協力しているところもあります。
ただし、公務員が副業として認められる農業は、あくまでも小規模農家である上に主目的が営利でない場合に限られます。
逆に農業であっても大規模に経営されていたり、客観的に営利を主目的とすると判断された場合は、認可が降りません。
公務員の副業としての農業活動の裏側には、あくまでも「地方貢献や地域振興のために仕方なく」という建前がある訳です。
地域貢献型の仕事が割と認可されるケースが多いのは、そのためだといえます。地域の消防団への入隊なども良い例でしょう。
公務員の農業バイトにおける収入目安
農業収入の目安に関しては、農業バイトの場合は時給800〜1,000円の求人情報が大半を占めます。
農業バイトとなると求人がどうしても地方に限られるため、時給に関してはそれほど高い報酬が望めません。
ただし、兼業農業として実家の手伝いを行っている方の場合は、次の担い手として農地を譲り受ける可能性が高いため、人によっては公務員の年収に近い報酬が見込めるでしょう。
日本農家の現状と地方公務員との関係性
\ 農家は3つのタイプに分けられる /
出典:農林業センサス|農林水産省
- 専業農家:経営耕地面積が10アール以上又は、農産物販売金額が15万円以上
- 販売農家:経営耕地面積が30アール以上又は、農産物販売金額が50万円以上
- 兼業農家:世帯員のなかに兼業従事者が1人以上いる農家
農林水産省の調べ(2010年の資料)によると、日本農家の全体の約76%を、専業農家が占めています。
兼業農家の場合は、世帯員の中に兼業従事者が一人以上いる農家を指します。逆に専業農家は、兼業従事者が一人もいない状態の農家です。
細かい条件に関しては、専業農家と販売農家だけに定められており、兼業農家に関しては定められていません。
日本農家の担い手不足は、年々深刻化しており1999年から2019年にかけて、販売農家数が54%減少しています。ちなみに農家の平均年齢は、現在67.7歳です。
農家の担い手が不足すると、放置される農地も多くなるため、日本の美しい田舎の風景を保てなくなる可能性が出てきます。
そのため日本政府側も、以前にも増して農林水産業に力を入れおり、若い世代が新規就農しやすい土壌を整備している状況です。
地方公務員の間でも市として一次産業の衰退は見過ごせないため、農業の担い手不足を解消すべく、「関係人口」を増やす取り組みを積極的に行っています。
具体的には、補助労働力の確保や産地間連携推進事業、アグリワーケーション(旅行と農作業のコラボ)などが挙げられるでしょう。
地方公務員と農業(一次産業)は、切っても切り離せない関係性があります。既に地方公務員として働いている人であれば、その関係の重要性に関して十分理解されているはずです。
半農半X(公務員×農業)という働き方における成功事例
農業を副業として成功させた公務員の一人として、過去さまざまなメディアに取り上げられている、岡山県久米南町のKさん。
夫婦ともに公務員ということもあり、お互いに空いた時間を活用して農業を行われています。
公務員という仕事の傍ら、田んぼや野菜の栽培管理を行われており、コメや野菜、花などの年間売り上げが500万円に達しているそうです。
「公務員だからこそ、もっと気軽に農業に関われる人を増やしたい」という思いから、様々なメディアでご自身の農業に対する熱い思いを語られています。
20代〜30代の若い公務員が、副業として農業に挑戦するのは、少しハードルが高いかも知れません。
しかし、すでに成功している人が存在しているというのは、後続の大きな励みになるはずです。
公務員の方で副業として農業を検討されている方は、すでに取り組まれている人のところに、現地視察に行くのもおすすめです。
公務員の副業(農業)がバレて懲戒処分になった失敗事例
7月末、十勝管内の20代消防士が許可なく農作業アルバイトの副業をしたとして懲戒処分(戒告)を受けた。
出典:十勝毎日新聞
公務員の副業としての農業は、あくまでも申請が行われている前提で許容されていることであり、無許可で農業バイトなどを行っていると上記のように懲戒処分になります。
特に警察官や消防士などになると市民の目もより厳しくなるため、隠れて副業などを行うのはかなりリスクが高いです。
バレないだろうと思ってやっていても、地方のコミュニティは意外に狭いため、すぐに上司や同僚の耳に入ってしまいます。
一度、懲戒処分になると最悪の場合、悪い噂がたってしまいその地域に住めなくなる可能性も考えられます。
「うっかり申請し忘れていました。」では許されませんので、必ず事前に申請した上で、農業に取り組むようにしましょう。
農業は他の副業と比較して申請が通りやすいため、面倒に思わずにこれから取り組む人も、すでに取り組んでいる人も含めて必ず行っておくべきです。
公務員の副業(兼業農業)の始め方
実家が専業農家であれば農業の手伝いもしくは、農業バイトとして副業に着手しやすいです。
その場合は、事前申請さえ済ませれば他の問題は、それほど面倒には感じないでしょう。
しかし、公務員が新規で一から農業を始める場合は、かなりハードルが高くなります。
あくまでも公務員が副業として農業を行うのは、実家が専業農家でその手伝いをするか、他の農家さんへの手伝い(農業バイト)をするかの二択になります。
公務員の副業は、あくまでも「本業に支障が出ない範囲で」という条件がありますので、新規就農などになると確実に本業に影響が出てきます。
公務員の新規就農が難しい理由
公務員の新規就農が難しい理由としては、主に2つ挙げられます挙げられます。
- 新しい土地を取得するのが難しい(農地法の問題)
- 新規就農だと副業申請が通らない可能性が高い
農地法第3条により、耕作目的で農地を他人から借りたり、譲り受けたりするには、農業委員会の許可が必要になります。
農地取得には許可要件が定められていますので、要件を満たさない限り農業が始められません。
仮に無許可で農地確保した場合、農地法第3条第1項違反により3年以下の懲役又は、300万円以下の罰金を課せられます。
その上、公務員としての副業申請に関しても、実家の農業の手伝いや農業バイトとは異なり、新規就農は事業と見なされるため、よっぽどのことがない限り申請が通りません。
公務員の副業(農業)における確定申告のやり方
公務員は年末調整を行うため、基本的には確定申告の必要はありません。しかし、次のような条件に該当する場合は、確定申告が必要になります。
- 給与以外の所得が20万円を超えた
- 給与による収入が2,000万円を超えた
給与以外の年間所得が20万円を超えた場合は、確定申告が必要です。これは農業バイトに限らず投資や、不動産などで得られた所得も例外なく含まれます。
その他、各種控除(医療費控除、住宅ローン控除、寄附金控除、繰越控除など)の申請を行う際にも、確定申告が必要です。
具体的な確定申告のやり方に関しては、国税庁のe-Taxから手順通りに入力して、インターネット経由で送信するだけです。
詳細に関しては、国税庁サイトに明記されていますので、確定申告がはじめての方は参考にしてみてください。
公務員の副業(農業)に関するよくあるQ&A
公務員の副業(農業)に関する多くの質問や悩み等の中から、特に多かった内容だけに絞って、それぞれ質問形式でわかりやすくまとめました。
地方公務員であれば意外に農業バイトを行っている人が多いため、やろうかと悩んでいる方は直接身近な先輩や同僚に尋ねてみた方が、リアルな意見が聞けるはずです。
Q.公務員の副業はどこまでOKなのでしょうか?
公務員が申請すれば認可される副業としては、次のような項目が挙げられます。
- 株式投資やFX・仮想通貨・不動産投資などの投資行為
- 講演・執筆活動での謝礼金
- 農業(実家を手伝うなど)
- ボランティアやNPO活動
地方自治体によっては、例外的に認められている副業などもありますので、詳しいことあなたの上司や同僚に直接聞いた方が早いかも知れません。
公務員の副業は原則法律により禁止されていますので、まずはしっかりと情報収集を行なった上で、取り組むようにしましょう。
Q.都会の公務員が副業として農業に取り組むのは難しいですか?
実家がもともと専業農家だったり、農地を持っていたりといったケースを除き、都市部で公務員として働いている場合、休日返上で地方で農業バイトするという選択肢が一番現実的です。
事前の副業申請はもちろん必要であるため、上司と話し合った上で本当に実現できそうか、本業に支障が出ないかなど考慮した上で判断すべきでしょう。
また、農業バイト求人の探し方に関しては、JAサイトや市区町村の役場、農業専用求人サイトまたはアプリなどを活用するのがおすすめです。
Q.公務員の副業としての農業はどれくらい稼げますか?
兼業農家として働くのであれば、収入は青天井と言っても過言ではありません。
ただし、農業バイトとして他の農家さん宅に雇われて働く場合は、時給があらかじめ決められているため、他のアルバイトと同じく低賃金になりやすいです。
より副業として農業で稼ぎたいのであれば、実家の専業農家を手伝いながら、農業収入を得つつ将来的にはあなた自身が収支管理まで行うのが理想でしょう。
若いうちに農業の経験を積んでおけば、公務員を早期退職した後に農業で食べていけるかも知れません。また実際にそういった事例は、数多く存在します。
まとめ
公務員の副業としての農業は、事前に申請を行えば問題なく副業として農業収入が得られる、と解説しました。
ただし、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念の義務」の3つの義務に触発する場合は、申請自体が降りないケースもあるため注意が必要です。
地方公務員だと実家の農家の手伝いと称して、農業バイトを行っている人も多いため、事前申請さえ忘れなければ意外に誰でもできる可能性があります。
これからやってみようかと検討されている方は、まずは身近な上司やすでにやっている同僚に相談した上で、判断するのが賢明です。
公務員の場合、許可なく隠れて副業に取り組んだ方は、懲戒処分になる可能性がありますので、くれぐれも注意してください。
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