教育訓練給付金とは、定められた講座を受講または修了した際に、受講費用の一部が受け取れる給付金です。
教育訓練給付金を受け取るには、講座開始前までに手続きをしたり、対象講座を受講したりといった給付要件を満たさなければなりません。
そこで今回は、教育訓練給付金を受給するための条件や上限額、注意点を解説します。
対象講座を受講するまでの流れもまとめているので、受講を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
教育訓練給付金を受給するための条件
教育訓練給付金を受給するには、以下の2つのポイントを満たしている必要があります。
- 自身が給付要件を満たしているか
- 受講する講座が教育訓練給付制度の対象であるか
それぞれ詳しく解説します。
給付要件を満たしている
教育訓練給付金を受給するための条件は、雇用保険の加入状況や給付回数によって異なります。
初めて | 2回目以降 | |
在職中 | ・雇用保険加入期間が1年以上※ | ・前回の受講開始から雇用保険加入期間が3年以上 |
離職中 | ・離職日の翌日から1年以内・雇用保険加入期間が1年以上※ | ・離職日の翌日から1年以内 ・前回の受講開始から雇用保険加入期間が3年以上 |
雇用保険加入期間は、転職した場合でも合算できますが、離職期間が1年を超えると合算できなくなってしまうので注意しましょう。
なお、自身が給付対象となるかハローワークで調べられます。
給付対象外だと教育訓練給付金を受け取れないので、あらかじめ確認しておきましょう。
厚生労働大臣指定の教育訓練を受講・修了している
教育訓練給付金の対象者であっても、すべての資格や講座が教育訓練給付金の対象になるわけではありません。
教育訓練給付金が受け取れる資格や講座は、「一般教育訓練給付金」「特定一般給付金」「専門実践教育訓練給付金」の3種類があり、教育訓練給付金の種類によって受給上限額や受講までの流れが異なります。
教育訓練給付金の対象となる講座は、下表のとおりです。
分野 | 一般教育訓練給付金 | 特定一般教育訓練給付金 | 専門実践教育訓練給付金 |
輸送・運転 | 大型自動車第一種・第二種免許 中型自動車第一種・第二種免許 フォークリフト運転 | ||
情報 | Microsoft Office Specialist2010,2013,2016 CAD利用技術者認定 ITSSレベル1の資格 (Oracle認定資格・LPICなど) | ITSSレベル2の資格 (Oracle認定資格・LPICなど) | ITSSレベル3の資格 (シスコ技術者認定など) 第四次産業革命スキル習得講座 |
専門的サービス | 中小企業診断士司書・司書補 | 社会保険労務士 税理士 ファイナンシャルプランニング技能検定 | キャリアコンサルタント |
事務 | 実用英語技能検定 TOEIC 簿記検定試験 | ||
医療・社会福祉 ・保険衛生 | 同行援護従事者研修 | 介護職員初任者研修 登録販売者試験 | 看護師 介護福祉士 保育士 |
営業・販売 | インテリアコーディネーター | 宅地建物取引士資格試験 | 調理師 |
製造 | 製菓衛生師 | ||
技術・農業 | 土木施工管理技士 管工事施工管理技士 | 自動車整備士 電気主任技術者試験 | 測量士補 |
その他 | 修士・博士、科目等履修 | 職業実践専門課程 |
厚生労働省の教育訓練講座検索システムを活用すると、対象講座14,000のなかから地域や学習方法、資格名で検索できます。
なお、検索システムに表示されている対象講座が最新情報ではない可能性があるため、講座受講前に施設へ直接連絡し、講座内容を再度確認するようにしましょう。
教育訓練給付金が受給できる上限金額
教育訓練給付金が受給できる上限金額や受給タイミングは、下表のように教育訓練給付金の種類によって異なります。
一般教育訓練給付金 | 特定一般教育訓練給付金 | 専門実践教育訓練給付金 | |
受講中 | ー | ー | 6か月ごとに受講費用の50% (年間上限40万円) |
修了後 | 受講費用の20% (上限10万円) | 受講費用の40% (上限20万円) | 受講費用の20% (年間上限16万円)※ |
なお、4,000円未満は支給されないため、注意しましょう。
教育訓練給付金の注意点
教育訓練給付金の受給を検討している方は、以下の注意点を押さえておきましょう。
- 公務員・自営業は利用できない
- 講座修了から1ヶ月以内に支給申請をしなければならない
- 一度利用すると3年間利用できない
それぞれ詳しく紹介します。
公務員・自営業は利用できない
前述のとおり、教育訓練給付金を受給するためには、雇用保険に一定期間加入している必要があります。
そのため、雇用保険の適用対象外である公務員・自営業の方は、教育訓練給付金制度を利用できません。
講座修了から1ヶ月以内に支給申請をしなければならない
教育訓練給付金を受け取る際は、原則として講座修了から1ヶ月以内に申請しなければなりません。
ただし、2年間の時効期限内であれば申請可能です。
もし支給申請を済ませていない場合は、可能な限り早くハローワークで申請しましょう。
一度利用すると3年間利用できない
教育訓練給付金制度を2回目以降利用するには、新たに3年間の雇用保険加入期間が必要になります。
継続的に資格を取得したり講座を受講したりすることは可能ですが、毎年教育訓練給付金を受け取れるわけではないため、計画的に利用しましょう。
教育訓練給付金対象の講座を受講するまでの流れ
ここからは、それぞれの手続きを解説します。
教育訓練給付金対象の講座を受講するまでの流れは、一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金、専門実践教育給付金で異なります。
1.訓練前キャリアコンサルティングを受ける
受講したい講座が決まったら、訓練前キャリアコンサルティングを受けましょう。
特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受け取る際は、訓練前キャリアコンサルティングが必須になります。
訓練前キャリアコンサルティングは事前予約が必要となるため、希望の講座が決まったら早めに行動することが大切です。
キャリアコンサルティングの日程が決まったら、自分の強みや経験から今後のキャリアプランなどをジョブ・カードに記入しておきましょう。
2.受給資格を確認する
完成したジョブ・カードと必要書類を添えて管轄のハローワークへ提出し、受給資格を確認します。
講座開始日の1ヶ月前までに受給資格確認をしなければならないので注意しましょう。
なお、一般教育訓練給付金の対象講座を受講する場合は受給資格確認は必要ありません。
受給資格確認が済んだら、実際に講座を受講しましょう。
なお、教育訓練給付金は受講修了後に支給申請を行うため、受講費用を一時的に自己負担する必要があります。
3.支給申請する
講座が修了したら、管轄のハローワークで必要書類を提出し、支給申請を行います。
専門実践教育訓練給付金の対象講座の場合は、受講期間中も6ヶ月ごとに支給申請しなければならないため、忘れないようにしましょう。
原則として、講座修了から1ヶ月以内に支給申請する必要があるので忘れずに申請しましょう。
教育訓練給付金のよくある質問
ここからは、教育訓練給付金に関するよくある質問に回答していきます。
会社にばれる?
教育訓練給付金を受給しても、会社にばれることは基本的にありません。
ただし、雇用保険被保険者証が手元にない場合は注意が必要です。
原則として本人が保管する雇用保険被保険者証ですが、紛失を防止するために会社が保管しているケースがあります。
教育訓練給付金の支給申請には被保険者番号が必要になるため、被保険者証の返却依頼をすることが会社にばれるリスクを高めてしまうのです。
また、専門実践教育訓練給付金の追加給付を申請する場合は、勤務先からの証明が必要になります。
失業保険との併用できる?
失業保険(雇用保険の基本手当)と教育訓練給付金は、同時に受け取れます。
ただし、それぞれの要件を満たしていなければ併用できません。
失業保険の受給要件や手続きは、こちらの記事で解説しているので、参考にしてください。
年齢制限はある?
教育訓練給付金には年齢制限はありません。
なお、失業状態の方が専門実践教育訓練を受講した際に受け取れる「教育訓練支援給付金」は、45歳未満でなければ受け取れないので注意しましょう。
まとめ
教育訓練給付金制度では、対象の講座を受講または修了した際に、受講費用の一部が受け取れます。
ただし、教育訓練給付金を受け取るには、給付要件を満たしている必要があるため、自身が教育訓練給付金の対象となるかを事前に確認しておきましょう。
また、講座開始前の手続きは、教育訓練給付金の種類によって異なります。
受講したい講座がある場合は、まずはハローワーク窓口で相談してみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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