オーバーローンとは「債務超過」の状態を指し、不動産ではローン残債が不動産の価額を上回る状態です。
オーバーローンの不動産は、売却しても売却代金でローンを完済できない、資産価値がマイナスであるなどの不都合が生じます。
オーバーローン状態の住宅に住み続ける場合には問題ありませんが、売却したい又は売却予定の方は注意が必要です。
本記事ではオーバーローン状態の不動産のデメリットやリスク、ローン残債と売却価格の相場を知る方法、離婚・転勤・住み替え・相続と4つのケース別対処法を解説していきます。
不動産のオーバーローンはローン残債が不動産の価額を上回ること
不動産のオーバーローンとは、ローン残債が不動産の価額(売却価格)を上回ることを指します。資産としての不動産の価値はマイナスの状態です。
オーバーローンの不動産には、売却してもローンを完済できないというリスクがありますので売却の際には、自己資金を充てる、住み替えローンを利用するなどの対処が必要となります。売却後にもローン返済が続くため、返済シミュレーションを行った上で売却に踏み切りましょう。
転勤や離婚など「売却後の返済が厳しいがどうしても売却しなければならない」というケースでは、「任意売却」という選択肢があります。
金融機関はローンを組む際に「抵当権」という不動産を担保にする権利を設定しますが、抵当権を行使されると不動産は競売にかけられ、居住者は住む場所を失い相場より低い価格(7割程度)で不動産が売却されてしまいます。
「競売」という状況を回避する方法の1つが任意売却で、金融機関に売却の可否や売却価格に承諾を得て抵当権を外してもらうことが可能です。任意売却では通常のケースと同様の価格帯で不動産が売却できます。
ただ任意売却は新規のローンが組めない、クレジットカードを作成できないなどの事態に陥ってしまうためメリットとデメリットを考慮し慎重に判断しましょう。
ローンの残債と売却価格の相場を知る方法
ローンの残債は、金融機関から送られてくる残高証明書をチェックする、もしくは金融機関の窓口で確認できます。
売却価格の相場はまず複数の不動産会社に査定を依頼した後、数社に絞り訪問査定を依頼することでおおよその価格を把握できます。
不動産会社によって査定額にばらつきが生じることがありますので、最初は一括査定サイトなどを利用し複数の会社に査定を申し込みましょう。
訪問査定はレスポンスが早い、不動産の知識があるなど信用できる不動産会社に依頼しましょう。
ローン残債と査定額(売却価格の相場)を比較し、ローン残債が上回る際にはオーバーローン、ローン残債が下回る時はアンダーローンとなります。
アンダーローンの物件は資産価値がプラスであり売却代金でローンを完済できるため、売却後の経済的な心配が少なくなります。
離婚・相続・住み替え…ケース別オーバーローンの対処法
離婚・転勤・相続・住み替え4つのケース別でオーバーローンの不動産への対処法を解説していきます。
- 離婚
- 転勤
- 住み替え
- 相続
1.離婚
離婚時の財産分与では「婚姻中に協力して形成した財産」が対象となります。例えば夫が働き妻は家事をしている場合、妻は家事をすることで資産の形成に協力したとみなされ財産分与を請求できます。
基本的には公平(2分の1)に分与しますが、例えば7:3など一定の割合で双方が納得している、慰謝料が上乗せになっている、どちらかが離婚後に十分な生活費を得られないケースでは片方が多めに財産をもらうことがあります。
婚姻中に購入した家がオーバーローンになってしまった際にはどうしたら良いのでしょうか?
離婚にあたってはどちらかが家に住み続ける・売却するという選択肢がありますが、後にトラブルが起こる可能性が低くなる方法は売却です。
例えば離婚後夫がローン返済を負担し妻が家に住み続ける場合、夫がローンを滞納すると妻は最終的に家が競売にかけられ追い出されてしまうといったトラブルが起こる事例があります。
ただ離婚後には世帯収入が減るケースが殆どですので、オーバーローンの場合にはどちらかが住み続けることで経済的な負担が軽減できます。
そしてトラブルも回避するためには家の名義人でローンを契約した人が住み続け、ローン返済を負担するという方法が無難と言えるでしょう。
しかし財産分与では必ずしも上記の方法を選択できるとは限りません。約束した内容を公証役場で「離婚給付等契約公正証書」に記載し、約束を破った時に強制執行認諾により財産を差し押さえる条項を加えるとトラブルを回避できる可能性が高くなります。
2.転勤
家を購入したものの転勤で引っ越さなくてはならず、住宅がオーバーローンであるケースでは賃貸・売却を検討しましょう。
一般的に住宅ローンを組んだ家を賃貸物件にすることは多くの金融機関が禁止していますが、「転勤で〇年後に戻ってくる」など条件付きの場合はそのままローンを利用できる金融機関も存在します。
金融機関によっては、ローンを不動産担保ローンや投資用ローンの借り換えることを求められますが、殆どの場合住宅ローンより金利が上がりますので注意しましょう。
金融機関の許可を得ずに賃貸物件にすると、ローンの一括返済を求められる事がありますので必ず金融機関に相談してから賃貸を検討する事が重要です。
賃貸の許可がおりた不動産は貸し出すことで賃料収入が得られます。
金銭的に余裕があり、賃貸が不可能の場合にはそのまま空き家として保有し続ける事も選択肢の1つです。ただ所有者には管理義務がありますので、定期的な保守・点検・管理が必要となります。
金銭的に余裕が無いケースでは住み替えローンの利用や任意売却を検討しましょう。
3.住み替え
住み替えで現在住んでいる家がオーバーローンであるものの、十分な自己資金があり「自己資金+売却代金」でローンを完済できる方は売却しても経済的な問題は生じません。
自己資金が足りない方は、①売却を先送りし自己資金を貯める、②住み替えローンを利用する、③売却後にコツコツ返済するという3つの方法があります。
金銭的には売却を見送り自己資金を貯め、自己資金と売却代金でローンが完済できることが望ましいです。
ただ事情があり住み替えをしなければならない時には住み替えローンを検討しましょう。住み替えローンは通常の住宅ローンより審査が厳しく金利が高い傾向がありますが、売却する家と今後購入する家のローンを一本化することができます。
住み替えローンを利用できない状況では、任意売却又は通常の売却により家を売却後にコツコツローンを返済することになります。
新たに住宅を購入した際には二重ローンとなり家計の負担が重くなってしまうことがありますので、金融機関と返済シミュレーションを行い判断しましょう。
4.相続
被相続人(亡くなった方)の残した不動産がオーバーローンのケースでは、「不動産以外でどのくらいプラスの相続財産があるか」がポイントとなります。
相続財産が不動産のみでオーバーローンの際には相続放棄を検討しましょう。
相続放棄とは相続開始(被相続人が亡くなった日又は亡くなった事を知った日)から3ヶ月以内に被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てる事で被相続人の全ての相続財産を放棄できます。
相続放棄は全ての相続財産を放棄するため、不動産以外でプラスの相続財産がある場合には相続したほうが良いケースもあります。
相続財産の合計額がプラスであり、相続の手続きの手間や費用を考慮してもなお恩恵が大きい場合には相続したほうが良いという結論になります。
不動産は遺産分割の際には時価で評価しますが、相続税では土地は路線価(時価の約8割)又は倍率方式、建物は固定資産税評価額(時価の約7割)で評価され相続税の対象となる価額を圧縮できます。
なお他にも被相続人に債務があり、いくら債務があるか分からない時には「限定承認」というプラスの相続財産の範囲内でマイナスの相続財産を引き継ぐ手続きを行う事ができます。
まとめ
オーバーローンの不動産の注意点やリスク、4つのケース別の対処法を解説してきました。
特に離婚の場面ではオーバーローンの不動産があることで、財産分与の話し合いが長引き双方に負担となってしまう事例があります。
トラブルが起こりそうな場合は弁護士や共通の知人など代理人を通すといった方法で対処しましょう。
この記事を参考にオーバーローンの不動産と対処法を知り、実際の場面で活かしていきましょう。
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