賃貸物件の退去時のトラブル、相談先はどこ?相談事例と解決方法

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「賃貸物件の退去費用が高く納得いかない」「敷金から鍵交換費用が差し引かれていた」などの退去トラブルは数多く、消費生活センターには年間1万件以上の退去トラブルの相談があります。

賃貸物件の借主は退去時に「原状回復」を行う事とされています。
原状回復は借主が故意・過失、管理者としての注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗に対しての復旧を指し、通常の使用や経年変化による修理費用は負担する義務はありません。

原状回復として高額な費用を請求された、借主が負担すべきではない費用の請求書が届いた時には消費生活センターや全国宅地建物取引業協会連合会、自治体の窓口などの相談先があります。

本記事では退去トラブルの実態と国土交通省のガイドライン、トラブル事例と相談先をお伝えしていきます。

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賃貸住宅の退去トラブルの相談件数は年間1万件以上

独立行政法人国民生活センターには借主が賃貸住宅を退去する際に、ハウスクリーニングやクロス張替えといった「原状回復」のための費用として敷金が返金されない、敷金を上回る金額を請求されたというトラブルが数多く相談されています。

年度相談件数
201812,500
201911,799
202012,061
20218,759(前年度の同期 8,071)

上記のデータは国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、消費生活センターへの消費生活に関する苦情相談情報を収集するシステム「PIO-NET」によるものです。

2018年度から1万件を超えた状態が続いており、2021年度は年度途中のため8759件ですが、前年の同じ時期には8071件と増加しています。

退去トラブルを防ぐために、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を1998年に取りまとめ、定期的に見直し・改訂を行っています。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、契約・退去の際に賃貸住宅を貸す貸主・借りる借主の双方があらかじめ理解しておくべき一般的なルールを示したものです。

法的拘束力はありませんが、管理会社や不動産会社と話し合いをするにあたって指針の1つとなりますので内容を把握しておきましょう。

原状回復のトラブルを防ぐためには、①借主は入居時に物件確認を徹底する、②貸主は原状回復に関する契約条件(特約を含む)を開示する、③②に加え物件・設備の使用上の注意・留意事項を周知することが重要と記載されています。

玄関や廊下、台所・浴室などの物件状況確認リストがダウンロード可能で、借主と貸主が共にチェックを行いあわせて写真を撮ることでトラブル防止に繋がります。

入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト

https://www.mlit.go.jp/common/000991397.doc

(クリックすると国土交通省のホームページからWordファイルがダウンロードされます)

しかし「入居時には引っ越しで手一杯で退去時のことを考える余裕が無かった」「ガイドラインの存在を知らなかった」という方も多いのではないでしょうか。

「原状回復」とは何を指すのか、借主はどこまで負担すべきなのかを見ていきましょう。

賃貸物件の原状回復とは?

一般的な契約書では建物の価値の減少の理由を以下の3点に区分しています。

  1. 建物・設備等の経年による自然な劣化・損耗等(経年変化)
    借主が通常の住まい、使い方をしていても発生すると考えられるもの
  2. 借主の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
    借主の住まい、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられ、明らかに通常の使用による結果とはいえないもの
  3. 借主の故意・過失、善管注意義務違反※、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等

※善管注意義務違反とは、借主が善良な管理者として注意する義務を怠り違反した結果、住宅に損耗などが生じたケースを指します。

国土交通省のガイドラインに記されている原状回復の定義は以下の通りです。

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

3.賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等については借主が負担すべき費用、次の入居者を確保する目的で行う設備交換・リフォームなどは、1.経年変化、2.通常使用であり、貸主が負担すべきと考えます。

トラブル事例では、住宅の損耗が1.2.3.のうちどれに該当するのかで借主と貸主で意見が別れる事が多くなっています。

退去時のトラブル事例2つ

具体的な退去トラブルの事例を見ていきましょう。

1.不注意で床に傷をつけてしまったAさん

Aさんは賃貸マンションの入居中に炊飯器を床に落としてしまい、凹みの跡が付いてしまいました。

退去時には10万円の張替えの費用負担を要求され、弁護士に相談したところ「不注意による傷は借主負担となりますが、10万円は高い。経過年数を考慮した1面分の張替え費用数万円で交渉してみては」の回答が返ってきました。

2.退去時に鍵交換費用を請求されたBさん

引っ越しを終えたBさんが敷金の明細を見ると、修繕費用の他に「鍵交換費用」として1万5千円が引かれていました。

「これはおかしい」とBさんが役所の無料法律相談で弁護士に相談すると、「借主が鍵を紛失して取り替える時は借主負担だが、物件管理のための交換費用なので貸主負担」との回答があり、管理会社と交渉した結果お金を返してもらえました。

基本的にはガイドラインの「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用=借主負担」「経年変化や通常の損耗は貸主負担」を踏まえ、自身で判断ができない時には下記の相談先に相談しましょう。

退去時のトラブル、主な相談先5つ

主な相談先は下記の5つとなります。

相談先相談方法
消費生活センター・国民生活センター電話番号:188各地の消費生活センターに直接窓口で相談する事も可能。所在地・受付時間を下記サイトで確認 https://www.kokusen.go.jp/map/index.html インターネット相談が可能なエリアもある(ホームページで要確認)
全国宅地建物取引業協会連合会不動産に関する各種無料相談を専門の相談員が受け付け相談日時はエリアによって異なるため、事前に電話確認が必要 https://www.zentaku.or.jp/about/free_consultation/ 
法テラスサポートダイヤルもしくは全国の事務所で直接相談が可能。メールでも受け付けサポートダイヤル:0570-078374メール問い合わせ:https://www.houterasu.or.jp/cgi-bin/formmail/formmail.cgi?d=toiawase全国の法テラス法律事務所一覧https://www.houterasu.or.jp/chihoujimusho/index.html 
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会Webフォーム・FAX・郵便にて受付https://www.jpm.jp/consultation/ 
地方自治体の相談窓口・自治体の弁護士・司法書士による無料法律相談 を利用する自治体によって相談方法・時間などが異なるため自治体のホームページで確認する ・地方自治体の中には、不動産に関する相談窓口を設け対応可能な団体に案内するところもある

最初は無料で相談できる地方自治体の法律相談がおすすめです。

まとめ

国土交通省の定めるガイドラインや退去トラブルの相談事例・相談先などを解説しました。

退去トラブルのポイントは「原状回復に該当するか否か」となります。
高額な退去費用を請求された際には借主が負担するべき原状回復費用の範囲を理解し、管理会社と話し合いを行いましょう。

自身で判断ができない時には役所の無料法律相談などを上手に活用し、トラブル解決に役立てましょう。

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