相続で遺言書が無い時はどうする?法定相続分や遺産分割協議を解説

お金のはなし
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亡くなられた方(被相続人)が遺言書を残していなかった場合、遺産はどうやって分けたら良いのでしょうか?

基本的には遺産分割協議で相続人全員が話し合い、分割方法や割合を決める事になりますが、「誰が相続人となり、どの位分けるものなのか」を参考にしたい方は多いでしょう。

民法には「法定相続分」という相続人の範囲と相続割合の目安が定められています。必ずしも法定相続分通りに遺産を分ける必要はありませんが、遺産分割協議で相続人の意見がまとまらない場合には法定相続分で分割するケースもあります。

この記事では相続の流れ、遺言書が無い時の遺産分割方法、遺産分割協議のルールなどをお伝えしていきます。
相続についてお困りの方だけではなく、FP・相続診断士など相続分野の勉強をしている方もぜひご覧ください。

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相続の流れとは~死亡届の提出から遺産分割協議、相続税の納付まで~

相続は財産を遺した方(被相続人)が亡くなった時に開始となり、主なスケジュールは以下の通りとなります。

死亡届の提出7日以内亡くなった事を知った日から7日以内に以下のいずれかの場所を管轄する役所に提出します。被相続人が亡くなった場所被相続人の本籍地届出人の所在地
遺言書の有無を確認できる限り早めに確認しましょう。自宅など被相続人に身近な場所だけではなく、法務局や公証役場に保管されているケースがあります。
遺産の調査・価額を評価被相続人が取引のあった銀行や証券会社・保険会社・不動産会社などに尋ね全ての遺産を調査します。財産ごとに評価額を決定します。
相続放棄 ・限定承認の手続き3ヶ月以内相続放棄・限定承認を行う場合には相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。限定承認は被相続人の財産の範囲内で債務を引き継ぐ方法で、相続人全員が共同で申し立てを行うことで成立します。
準確定申告4ヶ月以内被相続人が亡くなった年の1月1日~亡くなった日までの所得税の確定申告を行います。相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税を行う必要があります。
遺産分割協議相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配について全員が合意するまで協議を行います。話がまとまった後は遺産分割協議書を作成し、全員が合意できない場合には裁判所で調停を行います。
遺産の分配遺産を分配します。預貯金は払戻し等の手続きを金融機関で行い、不動産は法務局で所有権移転の登記手続きを行います。いずれも所定の書類が必要となります。
相続税の計算・申告・納付10ヶ月以内相続開始の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告、納付を行います。基本的には金銭により納付を行いますが、支払いが困難な場合には延納により期限を延長し、延納が厳しい時は現物による納付(物納)が可能となります。


期限がある手続きは死亡届の提出が7日以内相続放棄・限定承認が3ヶ月以内準確定申告が4ヵ月以内相続税の申告・納付が10ヶ月以内となります。

限定承認・相続放棄は原則取り消しができませんので、遺産のすべてを調べ価額を把握してから行ったほうが良いでしょう。

遺産分割協議も遺産を把握してから行うとスムーズに進めることができます。

遺言書が無い時の相続とは?遺産分割協議と法定相続分

相続において遺言書が無い場合には基本的には遺産分割協議を行い、相続人全員が合意する割合や方法で遺産を分配します。

民法上の基準である「法定相続分」を法定相続人で分配するケースもあります。

協議で全員の合意が得られない時には家庭裁判所に遺産分割調停として申し立てを行い、調停委員と共に調停の場で話し合います。

それでも意見がまとまらない時には裁判官が審判をする流れとなります。

相続人の範囲と法定相続分とは

相続人の範囲としては、被相続人の配偶者は常に相続人となり、第1順位は子供(子供が亡くなっている時は孫)となります。
第2順位は父母、父母が亡くなっている時には祖父母であり、第3順位は被相続人の兄弟姉妹となります。兄弟姉妹が亡くなっている時には甥・姪が相続人にあたります。
相続を放棄した人、内縁関係の人は相続人に含まれません。

法定相続分は相続人の構成によって異なり、以下の通りになります。

相続人の構成配偶者子供(孫)父母(祖父母)
配偶者と子供1/2(1/4)1/2(1/4) 
配偶者と父母2/3(1/3) 1/3(1/6)
配偶者のみ全部(1/2)  
子供のみ 全部(1/2) 
父母のみ  全部(1/2)

※()内は遺留分

法定相続分は相続人の遺産分割で全員の合意が得られない場合の分割方法であり、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はありません

ただし以下に述べる「遺留分」という最低限の取り分を侵害しないように注意しましょう。

遺留分とは?

遺留分とは一定の相続人のために法律上取得することが保障されている遺産の割合をいいます。
「被相続人の遺族として最低限の取り分」とも言えるでしょう。

遺留分を受け取る事が出来る親族は配偶者、子供や孫、父母や祖父母で兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺留分が侵害されたことに相続人が不服を感じた場合、相続開始から1年以内に「遺留分侵害額の請求調停」として遺産を受け取った方に請求の調停を申し立てることが出来ます。

一方で遺留分を受け取らないことに相続人全員が合意し、裁判所に申し立てた場合には遺留分を放棄する事が出来ます。

遺産分割協議後は遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が終わった後は、遺産分割協議書を作成する必要があります。
たとえ円満に相続人全員が協議に合意した場合でも、後のトラブルを防ぐために遺産分割協議書を作成しておいたほうが良いでしょう。

遺産分割協議書に決まったフォーマットはありませんが、遺産の目録と誰がどの財産をどのように引き継ぐかを分かりやすく記し、相続人は署名と押印を行います。

遺産分割協議のルール

遺産分割協議にはルールがあり、相続人全員が出席する、判断能力が乏しい相続人や未成年者がいる場合は後見人を立てる必要があります。

認知症の方、障害があり判断能力が不十分な方や未成年者は、家庭裁判所に申し立て後見人と共に遺産分割協議に参加します。

なお後見人が有利となり、相続人が不利益を被る可能性のある申し立ては「利益相反行為」に該当するため、別の代理人を選ぶ必要があります。

例えば相続人の中に被相続人の子供Aさんと孫Bさん(未成年者)がいる場合には、お互いの利益が衝突する可能性がありますので、AさんはBさんの後見人になることはできず、弁護士などの特別代理人を選ぶ手続きを行います。

まとめ

相続の流れや遺言書が無い時の遺産分割方法、法定相続分などについて解説してきました。
法定相続分は遺産分割協議で話し合いがまとまらない時の「目安」であり、相続人全員が合意している場合には、割合や相続人が異なっていても相続が可能です。

ただし最低限の取り分である「遺留分」を侵害しないよう注意しましょう。
遺産分割協議では相続人全員が話し合う、未成年者や判断が難しい方には後見人を立てるなどのルールを守り、協議後は遺産分割協議書を作成しましょう。

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