遺言書の撤回方法や文例とは?遺言書が複数見つかった時の対処法も解説

相続・事業承継
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遺言を書いた方の気持ちが変わり、遺言書を「撤回したい」「内容を変更したい」というケースは少なくありません。

民法にも遺言者はいつでも遺言を撤回できる旨が記されており、自筆証書遺言・公正証書遺言といった遺言の方式に従い撤回が可能です。

しかし遺言書を撤回することによって、遺言者や相続人に以下のような疑問が湧いてくることがあります。

そもそもどうやって遺言書を探す?
遺言書を撤回したい時、どのような文言で書けばよい?
遺言者が亡くなった後遺言書が複数見つかった時はどうしたら良い?

本記事では遺言者の撤回方法や文例、遺言書が複数見つかった時の対処法や遺言書の探し方を解説していきます。

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遺言書はいつでも撤回できる。しかし…

民法では遺言書はいつでも撤回できると記載されています。

民法1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

「遺言の方式に従って」という点がポイントで、遺言書には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言がありそれぞれ撤回方法が異なります。

1.自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自書し押印する方式で、財産目録のみはPC作成が可能です。ただ財産目録のページ全てに署名し、押印する必要があります。
自筆証書遺言は自宅など自身で保管もしくは法務局の保管制度を利用します。

自宅や銀行の金庫など自身で保管している際は、遺言書を破棄することで撤回が可能です。

民法1024条
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。 

法務局に保管している時は遺言者本人が撤回書を作成し、撤回書を提出、遺言書が返却されます。撤回には手数料がかかりませんが、再び保管してもらう時には再び保管申請を行い1通につき3900円の手数料を支払います。

2.公正証書遺言の場合

公正証書遺言は公証役場で証人2人以上立ち会いの元、遺言者本人が口述した内容を公証人が公正証書として作成する方式です。

遺言者が口述できない場合手話通訳も可能で、手間と費用がかかりますが公証人が作成し公証役場に保管されるため最も確実な方法と言えるでしょう。

公正証書遺言は原本が公証役場に保管されており、遺言者の手元にあるのは謄本となります。よって直接破棄することが出来ず、新たに遺言書を作り直すことで撤回できます。

民法1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

遺言書は基本的に「日付が最新のもの」が有効とされています。
新たな遺言書は自筆証書遺言・秘密証書遺言でも構いませんが、自筆証書遺言・秘密証書遺言を紛失してしまった場合には前の遺言書(公正証書遺言)が有効とされてしまいます。

自筆証書遺言・秘密証書遺言を法務局に保管する、公正証書遺言を作り直すことで確実に遺言を撤回できます。

3.秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言とは遺言内容を知られたくない時に利用する方式です。

遺言者が、遺言の内容を記載した書面(PC作成可能)に署名・押印をし、封筒に入れて押印、公証人と証人2名立ち合いの元で自身の遺言書であることと氏名・住所を口述します。
公証人が封紙に日付と遺言者の申述を記載した後、封紙に遺言者・証人2名が署名押印を行い作成します。

秘密証書遺言は封印されていますので、公正証書遺言と同様に新たな遺言書を作成することで撤回します。

遺言書撤回の文例・文言とは

自身で破棄ができない公正証書遺言・秘密証書遺言を自筆証書遺言で撤回するためには、どのように文章を書けばよいのでしょうか?

全て撤回したい時には、以下の文例で新たな遺言書に撤回の旨を記載します。

遺言者はこの遺言を以って、○○法務局公証人・山田太郎が令和●年▲月▲日作成の◎号の公正証書遺言を全部撤回する

一部を撤回したい時には、撤回したい文章を明確に特定できる書き方をしなければなりません。

誰でもわかるよう修正する必要がありますので、書き方が難しくリスクが高い方法です。
新たな遺言書を作成した方が時間とコストをおさえながら正確に撤回できる可能性が高くなります。

遺言書の変更

遺言書を変更する場合、自筆証書遺言では変更箇所を示し変更した旨を記載して押印を行います。

民法968条(自筆証書遺言)
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

変更も一部撤回と同様にリスクの高い方法となりますので、新たに遺言書を作成することが推奨されています。

遺言書が複数見つかった時の対処法

遺言は遺言を書いた時ではなく「遺言者が亡くなった時」から効力が生じます。(民法985条)

そのため遺言者が生きているうちは遺言書を書いた後に気持ちが変わり、書き直す、新たに作成することは自由であり古い遺言書を回収する義務はありません。
身近な人が亡くなった後に遺言書が複数見つかった時、どうすれば良いのでしょうか?

基本的に遺言書は日付が最新のものが有効となりますので、最新のものを採用します。
日付が書かれていない遺言書はどの方式でも有効性が無いと判断される可能性が高いです。

遺言書の探し方

亡くなった方から生前遺言書について聞いておらず、「遺言書があるかどうかわからない」というケース、「遺言書が複数あったけどまだあるかもしれない」という場合にはどうしたら良いのでしょうか?

自筆証書遺言で法務局に保管されている場合、遺言書保管事実証明書を請求する事で保管の有無が確認できます。

全国の遺言書保管所(法務局又は地方法務局)のどこでも請求が可能ですが、遺言者は自身の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地に保管できますのでいずれかの場所に保管されている可能性があります。

遺言者自身が保管していると想定される時には、自宅や職場など身近な場所、信託銀行、銀行の貸し金庫などに保管されている可能性があります。
取引のあった銀行に尋ねる又は遺品を整理するなどの方法で探してみましょう。

公正証書遺言は1989年以降に作成された場合、日本公証人連合会がデータベース化しています。相続人など利害関係者が公証役場で「遺言検索システム」で調べる事が出来ます。

まとめ

遺言書を撤回する・書き直すケースは数多いため、探し方や複数見つかった時に相続人が戸惑ってしまう事例があります。

遺言書は、自筆・秘密証書遺言の場合は自宅や銀行の貸し金庫など身近な場所を探す又は法務局に遺言書保管事実証明書を請求することで有無が分かります。

公正証書遺言は公証役場の「遺言検索システム」で調べる事が可能です。
遺言書が複数見つかった場合には最新の日付のものが有効となります。

この記事を参考に遺言書の撤回や探し方、複数見つかった時に対処法について知り今後に活かしていきましょう。

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