副業する際には開業届を出した方がいいの?
開業届を出すメリットやデメリットは?
副業が事業に該当する場合、税務署に開業届を提出する必要があります。
そもそも開業届は、個人事業主として活動する際に税務署に提出するものであり、小遣い程度(雑所得)を稼いでいるだけ人は提出の必要がありません。
副業であれど事業として継続していく場合は、開業届を税務署に提出しておいた方が、税金をはじめとしたさまざまなメリットが受けられます。
開業届の提出に本業か副業は関係がないため、その必要性と提出した際のメリットとデメリットをしっかりと把握した上で判断しましょう。
本記事では副業を行う際に開業届を出さないとどうなうのかや、提出した際のメリットとデメリットに関して分かりやすく解説しています。
最後まで読んで頂くことで、副業を行う上での開業届の必要性を把握できるはずです。
開業届を提出するメリットは、意外に多いです。
副業を行う会社員が開業届を出さないとどうなる?
開業届は提出が義務化されてはいますが、仮に提出しなかったとしても罰則はありません。
通常、税務署から提出するようにといった通知等もないため、提出せずにそのまま事業を続けることも可能です。
ただし、副業といえど事業として継続的に取り組んでいく場合、開業届を提出しておいた方が何かとメリットが多いのも確かです。
開業届を提出しなかった場合、主に次のようなデメリットが発生します。
- 青色申告が使えない
- 税金が高くなる
- 損益通算ができない
開業届を提出しないと青色申告制度が使えないため、副業である程度稼げている方は税金面で大きく損してしまう可能性があります。
白色申告と青色申告のどちらで申告した方が税金面で得であるか、計算した上で判断しましょう。
開業届はいくらから出す必要があるのか?
副業を行なっている会社員の方で、年間の所得が20万円を超えている場合は、確定申告が必要になります。
確定申告には白色申告と青色申告の2つのタイプがありますが、事業を継続する予定があるのであれば、節税効果が大きい青色申告を選択すべきでしょう。
青色申告を利用するには開業届が必要となるため、開業届を出すタイミングとしては年間の所得が20万円を超えてからとなります。
ちなみに個人事業主(またはフリーランス)の場合は、年間の所得が48万円を超えたタイミングが、開業届を出す目安となります。
副業の場合は、年間所得が20万円を超えた時点で開業届を出すか判断しましょう。
副業を行う会社員が開業届を提出すると会社にバレるのか?
副業を行なっている会社員が税務署に開業届を提出したとしても、会社に副業を行なっている事実がバレることはありません。
副業がバレる原因となりやすいのは、住民税です。
会社員や公務員の場合は、住民税をまとめて会社や行政が管理して納付しています。
住民税は、受け取っている給料の額面によって税額が決定されるため、副業で収入が上がるとその分納めるべき住民税も多くなる訳です。
給料額面の管理は会社の経理担当者が行なっており、突然納める住民税の金額が上がってしまうと、不審に思われてしまいます。
副業が会社にバレてしまうと最悪の場合、停職や減給等の懲戒処分になりかねません。
万が一、会社で副業が禁止されている場合は、副業にかかる住民税を別に納める手続きを行う必要があります。
住民税の手続きに関しては、最寄りの市区町村の役所で簡単に行えます。
会社員で副業を行なっている方は、住民税に関して注意しましょう。
開業届の提出方法とかかる費用や期限
項目 | 内容 |
対象者 | 新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方 |
概要 | 新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。 |
提出期限 | 事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください。 なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。 |
費用 | 無料 |
提出先 | 納税地を所轄する税務署長 |
受付時間 | 8時30分から17時までです。 ただし、税務署の閉庁日(土・日曜日・祝日等)は、受付を行っておりませんが、送付又は税務署の時間外収受箱に投函することにより、提出することができます。 |
その他 | 本人確認証書類の提示 |
開業届を提出する際には、最寄りの税務署へ行くようにしてください。
手続きに関しては10分程度で完了しますので、それほど時間はかかりません。
開業届の手続きにかかる費用も特にありませんので、当日は本人確認できるような運転免許証やマイナンバーカード等を持参していきましょう。
また開業届を提出する際に「所得税の青色申告承認申請書」も一緒に出しておきましょう。
所得税の青色申告承認申請書は、青色申告を行う際に必要な書類となります。
青色申告を行う際には、開業届と所得税の青色申告承認申請書の2つの書類提出が必要ですので、利用する方は忘れずに提出しておきましょう。
尚、所得税の青色申告承認申請書に関しても、申請に費用はかからず、10分程度で簡単に手続きが行えます。
青色申告を活用する人にとっては、非常に大切な提出書類です。
副業を行う会社員が開業届を提出するメリット
副業を行う会社員が開業届を提出するメリットとしては、主に6つ挙げられます。
- 経費の範囲が広がり節税できる
- 青色申告特別控除(最大65万円)が受けれる
- 損益通算が可能になる
- 赤字分を3年間繰り越せる
- 屋号付き銀行口座が開設可能になる
- 事業者向けの補助金や助成金が受けられる
開業届を提出するメリットはとても多いため、副業を事業として続けていく意思がある人は、できる限り提出しておいた方が得策でしょう。
事業者を対象とした補助金や助成金が受けれるのは、大きなメリットですね。
経費の範囲が広がり節税できる
開業届を提出すると青色申告が利用できるようになるため、仮に家族で事業を営んでいた場合は、家族に対する給与を青色事業専従者給与として経費扱いにできます。
その他、青色申告であれば取得価格が30万円未満の減価償却資産は、一括経費として計上可能です。
白色申告の場合は、10万円未満までしか一括して経費計上できません。
経費にできる項目が多くなるということは、それだけ節税効果としても期待できます。
青色申告特別控除(最大65万円)が受けれる
“開業届”と”所得税の青色申告承認申請書を提出”し、青色申告の承認を受けた上で特定の条件を満たすと、最大で65万円の控除が利用できます。
特定の条件とは、複式簿記で作成した決算書を原則2月16日から3月15日までの期間に、税務署へ提出することを指します。
提出期限に関しては、諸事情により変動する可能性もあるため、各自で書類作成をする前に国税庁の公式サイト等で確認するようにしましょう。
損益通算が可能になる
損益通算とは、副業で発生した事業所得に赤字が発生した場合、総所得金額から損失分を控除することを指します。
損益通算ができる所得の分類としては、不動産所得や事業所得、譲渡所得、山林所得の4つが挙げられ、雑所得は含まれていません。
開業届を提出して事業所得して扱うことで、赤字が出た際には節税効果が期待できる訳です。
赤字分を3年間繰り越せる
万が一、事業所得に赤字が出て損益通算でも赤字(損失)が取り消せない場合は、最大3年間は赤字分を繰り越せます。
翌年に繰り越した赤字分は、その年の所得から控除できますので節税効果が期待できるでしょう。
仮に開業届を提出せずに雑所得で計上している場合は、損益通算が行えず、赤字分を翌年以降に繰り越すこともできません。
屋号付き銀行口座が開設可能になる
屋号とは、個人事業名を意味しており、法人でいうところの社名に該当します。
屋号の設定は、開業届を提出する際に自由に決められます。
屋号自体は必ず定めなければならないというものではないため、中には何も屋号なしで活動されている方も意外に多いです。
屋号を設定すると銀行口座を作る際に、屋号付きの口座が開設可能になります。
屋号付きの口座にすることで、顧客の信用を得やすくなるといったメリットが得られます。
事業者向けの補助金や助成金が受けられる
補助金や助成金の多くは、個人事業主や法人を対象とした制度が一般的です。
例えば2020年に実施された持続化給付金制度では、個人事業主に対して最大で100万円の給付が行われました。
開業届を提出していなければ個人事業主としては認められないため、当然提出していなかった人は受け取れませんでした。
個人事業主を対象とした補助金や助成金制度は意外に多いので、資金的な援助を積極的に受けいたい方は、事前に開業届を提出しておきましょう。
副業を行う会社員が開業届を提出するデメリット
副業を行う会社員が開業届を提出するデメリットとしては、主に2つです。
- 失業保険が利用できない
- 青色申告だと手間がかかる
開業届は提出するメリットが圧倒的に多いですが、デメリットが全くない訳ではありませんので、詳細を把握した上で判断しましょう。
最大のデメリットは、失業保険が利用できない点です。
失業保険が利用できない
失業保険(失業手当)とは、離職した人が次の職に就くまでの繋ぎとして支給される手当です。
失業保険を利用するためには、離職してから過去2年の間に雇用保険の被保険者期間が、通算して12ヶ月以上ある必要があります。
ただし、特定理由離職者等に関しては、離職してから過去1年の間に被保険者期間が6ヶ月以上でも受け取りができます。
支給額に関しては受給者の年齢によって異なりますが、開業届を提出している個人事業主は失業保険の利用自体ができません。
失業保険は、あくまでも離職者に対する制度であるため、副業であっても開業届を提出している以上は、離職者ではないとみなされるからです。
青色申告だと手間がかかる
開業届を提出してから青色申告を利用される方は、会計処理が面倒になる点を考慮しておくべきでしょう。
簡便な方法である単式簿記の白色申告とは異なり、青色申告では複式簿記での申請が求められます。
会計処理を厳密に行う必要がある複式簿記では、最低限の簿記に関する知識が必要不可欠です。
幸い、現在は便利なクラウド会計ソフトがありますので、簿記が苦手な方は既存のサービスを利用してできるだけ手間を省くように努めましょう。
副業の開業届に関するよくあるQ&A
副業の開業届に関する多くの質問や悩み等の中から、特に多かった内容だけに絞って、それぞれ分かりやすく回答をまとめました。
開業届に関する質問は直接、最寄りの税務署で尋ねることもできます。
Q.開業届の提出のタイミングは?
原則、事業開始してから1ヶ月以内に提出しなければいけませんが、副業であれば年間の所得が20万円を超えてからでも問題ありません。
開業届を提出しなかったとしても罰則がある訳ではないため、必要性を考えた上で判断しましょう。
Q.開業届は出さない方がいいですか?
開業届は出した方が、得られるメリットが多いです。
ただし、失業保険が利用できなくなるという大きなデメリットもあります。
会社員で副業を行なわれている方は、メリットだけではなく十分デメリットも考慮した上で判断しましょう。
Q.開業届は開業日をさかのぼって提出できますか?
開業届に記載する開業日は、さかのぼって日付を決められます。
原則、事業開始から1ヶ月以内に開業届を提出しなければいけないと、所得税法に定められてはいますが、税務署側は開業日がたとえ1ヶ月前であっても受理しています。
受理している背景としては、開業届を出さない人も一定数いるためだとされており、開業届自体がかなりゆるい扱いになっているからです。
また開業届の提出日に関しては、過去をさかのぼることはできませんので注意しましょう。
Q.青色申告者だと扶養から外されますか?
青色申告を行ったからといって、扶養から外れる訳ではありません。
配偶者控除や扶養控除は、あくまでも本人の所得で判断されるため、青色申告者であったとしても定められた所得の範囲内であれば問題ありません。
Q.廃業した場合も届出が必要ですか?
個人事業主として開業届を提出したはよかったものの、事業がうまくいかずに辞める場合は、廃業届を提出しなければいけません。
廃業届の提出手順としては、開業届とほぼ同じで税務署で簡単に行えます。
注意点としては、廃業届を提出せずに放置しないことです。
廃業届を出さずに放置していると、無駄な税金を支払わなければいけない可能性が出てきます。
その他、税務署側からは事業が継続しているとみなされるため、確定申告の書類等が送付されるでしょう。
確定申告をせずに無視していると、無申告扱いとなり最悪の場合、ペナルティ(罰金)が課せられます。
まとめ
副業を行なっている会社員が開業届を出さなかったとしても、罰則等はありません。
とはいえ、開業届を提出するメリットはかなり多いので、デメリットも考慮した上で出すか出さないか判断しましょう。
メリット | デメリット |
・経費の範囲が広がり節税できる ・青色申告特別控除(最大65万円)が受けれる ・損益通算が可能になる ・赤字分を3年間繰り越せる ・屋号付き銀行口座が開設可能になる ・事業者向けの補助金や助成金が受けられる | ・失業保険が利用できない ・青色申告だと手間がかかる |
副業を今後も事業として続けていく意思が少しでもある方は、事前に開業届を提出しておいた方が、後々便利な点がとても多いです。
ただし、失業保険が利用できないというデメリットもありますので、ご自身の状況に合わせて活用してください。
これから副業を始める方は、行政の手続きや税金の仕組み等に関しても、十分理解しておきましょう。
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