円安になると日本株はどうなるの?
円安は企業や投資家にどのような影響を及ぼすの?
為替相場は、需要と供給のバランスによって成り立っています。
そもそも円高・円安とは、円の価値が外貨と比較して高いか低いかを指し示したものです。
円高だと円の価値が外貨と比較して高く、円安だと安くなっている状態になります。
円の価値が低くなると当然、その分日本株も安くなりますので、投資家から見ればバーゲンセール状態です。
特に日本株の約7割は外国人投資家が保有しているため、円安になると海外の投資家がこぞって日本株を買い漁る可能性も考えられます。
本記事では円安になると日本株はどうなるのかや、企業や投資家への影響等に関して分かりやすく解説しています。
為替と株は密接に関係しており、一概に将来どうなるかを判断するのは専門家でも難しいです。
円安になると日本株はどうなる
円安になると企業によっては業績に影響が出てしまい、株価が下がる(もしくは上がる)現象が起こります。
とはいえ、株価を動かす要因は何も為替レートだけではなく、金利や政治、天候、国際情勢とさまざまです。
その他、会社自体に関する要因として、業績や事件・事故、人気等によっても株価は左右されます。
またリーマンショックやコロナ等の世界経済に大打撃を与えるような事件が起きてしまうと、円安・円高に限らず日本株式市場にも大きな影響が出てきます。
日本株に影響を与えるのは、何も為替レートだけではないんですね。
輸出企業は円安だと業績が伸びる
トヨタ自動車は11日、2022年3月期決算を発表する。
この間の世界販売は、過去2番目に高い水準だった。
想定より円安が進んだことで輸出の採算が良くなり、業績が押し上げられそうだ。
過去最高の純利益となり、国内のメーカーとして初めて営業利益が「3兆円を超える」(アナリスト)との見方もある。
出典:朝日新聞|2022年5月11日
日本の基幹産業の一つである自動車製造業では、国内で製造されている自動車の過半数以上が、海外へ輸出されています。
円安であれば当然、諸外国は日本製の自動車を安く購入できるため、海外の販売所では自動車の売上が伸びやすくなるでしょう。
本来、円安は輸出大国である日本にとっては、経済的な追い風となりやすいのです。
またトヨタ自動車や日産等の国内の自動車会社は、国内とは別に諸外国にも工場を有しており、現地で製造から販売まで一括して行なっています。
現地で製造から販売まで一括して行う場合は、円安であっても影響はそれほどありません。
輸入企業は円安だと業績が厳しくなる
円安になると海外から入ってくる輸入品は、必然的に高くなります。
そのため輸入企業は、円安により仕入れ値や原価が高くなり、営業利益が目減し業績も悪くなる傾向にあります。
例えば日本の食糧自給率は約4割程しかなく、6割が海外からの輸入品です。
スーパーに並んでいる商品の過半数以上が輸入品だとすると、過度な円安は生活者にも大きな影響を及ぼします。
同じように輸入企業でも、海外からの輸入品でビジネスが成り立っている場合は、仕入れ値が高くなり利益率が下がる訳です。
日本株が買われやすくなる
円安になると相対的に日本株が安くなるため、外国人投資家などから日本株が買われやすくなります。
もちろん日本株といっても銘柄によっては、円安で株価が伸びている企業もあるため、購入の際には選別して行われるでしょう。
ただ株価にはさまざまな要因が絡み合っているため、一概に円安で株価が一時的に下がっているからといって、必ずしも投資家が買うとは限りません。
また一般的には、円安になると買いが強くなり、時間と共に日本株の株価が上がるとされています。
しかし、経済や金利等の状況によっては、円安でも上がらない場合もありますので注意しましょう。
円安は投資家にとってどうなのか
円安は投資家にとってもチャンスであると同時に、場合によってはピンチでもあります。
本人が、どのような資産形成を行なっているかによって円安時の影響が異なるため、できるだけ悪い影響を受けないような対策が必要です。
具体的な対策方法としては、投資を始めてドル建ての海外資産を保有することです。
円安になると円建ての資産の価値が、目減りします。
海外資産を保有している人は資産が増える
既に投資を行なっている方で、米国株等の海外資産を保有している人は円安時になると、資産の価値が上がります。
例えばApple社の株を、1株100ドルで購入したとしましょう。
購入時の為替レートは「1ドル=100円」と仮定します。
購入価格は1万円です。
数ヶ月後「1ドル=130円」の円安になると、保有しているApple株はドル建てですので、1株の価値は130円に上がります。
そのため保有しているApple社株の評価額は、1.3万円になります。
何もしていないのに海外資産を保有しているだけで、為替レートの影響により資産が増えたり減ったりする訳です。
投資の世界では為替による価格変動を、為替リスクと呼びます。
逆に円高になるとドル建てで保有している海外資産の価値は、当然目減りします。
円建て預金のみだと資産が目減する
海外資産と円預金の両方を保有している人は、過度な円安になっても資産全体に及ぼす影響はそれほど大きくはないでしょう。
しかし、円預金のみしか資産として保有していないのであれば、円安時には徐々に資産価値が目減して行きます。
諸外国と比較して貯金している割合が大きい日本人は、円安になっても預金通帳の額面は変わらないため、円の価値自体が目減していることに気づき難いです。
国内で生活している分にはそれ程、円安の影響はないかも知れません。
しかし、海外旅行へ行く人や海外から輸入品を多く取り入れている日本企業にとっては、円安は無視できない状況なのです。
円安は投資を始めるチャンスなのか
円安が投資を始めるチャンスであるかどうかは、正直わかりません。
なぜなら為替相場を予測するのは専門家でも難しく、その後円高に転化するかどうかは分からないからです。
また投資の目的によっても始めるタイミングは、人によって異なります。
短期目的で投資を始めるのであれば、円安が投資チャンスに捉えられるかも知れません。
しかし、長期目的であれば円安・円高に関係なく、今日からでも始めるべきでしょう。
投資を始める際には、その目的を明確にすることが大切です。
資産運用の基本は「安く買って、高く売る」
資産運用の基本は、ビジネスと同じく「安く買って、高く売る」のが基本です。
株式投資では、株価が安い時に買って、高い時に売ることで売却益を取得できます。
投資用語で売却益を得ることを、キャピタルゲイン(Capital Gain)。
資産を保有することで、定期的に得られる利益はインカムゲイン(Income Gain)と呼びます。
多くの人が資産形成で、”つみたてNISA”や”iDeCo”等を利用し積立投資を行うのは、最終的に購入した価格よりも高い価格で売却したいからです。
投資の目的は人によってさまざまですが「安く買って、高く売る」のは、どの投資手法でも大体同じです。
「当てる」のではなく「備える」投資を行う
投資と聞くと人によっては、将来価格を予測して当てないと儲からないと考えている方もいます。
投資は価格を「当てる」ものではなく、将来に対して「備える」ものなので、当てなければいけないと考えている人は投機になりがちです。
投機とは、いわばギャンブルですので投資とは全く異なります。
投資はあくまでも5年10年といった長いスパンで考えて取り組むものであり、決して短い期間で将来価格を当てて、利益を出すものではありません。
「円安だから投資を始めよう」ではなく、まずは「なぜ投資をいま始めるのか」その目的に関して、十分考えた上で判断するようにしましょう。
円安時の日本株に関するよくあるQ&A
円安時の日本株に関する多くの質問や悩み等の中で、特に多かった内容だけに絞って、それぞれ分かりやすく回答をまとめました。
投資はあくまでも自己責任で行いましょう。
Q.円安の際に儲かる銘柄はありますか?
具体的な銘柄名は控えますが、円安時には輸出産業を営んでいる企業に恩恵があることが多いです。
具体的には自動車や電機、精密機器、機械などの輸出企業にとっては、収益拡大要因となるでしょう。
例えば100ドルで自動車を販売していたとしましょう。
「1ドル=100円」から「1ドル=130円」の円安になると、これまで100ドル(10,000円)で販売していた自動車が、100ドル(13,000円)で売れる訳です。
円換算すると通常よりも3,000円高く売れますので、売上高が上がると共に業績にもプラスの影響が出てきます。
Q.円安になると貿易赤字は拡大しますか?
円安になると輸出産業にはプラスに影響しますが、単純に円安だから貿易黒字になるとは限りません。
実際に2022年5月の段階では「1ドル=130円」を推移しており、完全に円安状態です。
過度な円安により輸入している資源価格も上昇しているため、採算が合わず2022年3月の貿易収支は4,123億円の赤字でした。
Q.円安で日本株よりも米国株へ投資する人が増えますか?
昔と比較して今はインターネットで気軽に米国株をはじめとした、海外への投資が行えるようになりました。
その結果、若い世代を中心に米国株投資を始める人が、最近は多くなってきています。
円安に対する具体的な対策方法としては「海外資産を保有すること」なので、若い世代に限らず円預金しか保有していない人は、一度検討すべきでしょう。
Q.円安だと日本株や不動産等の外国人投資家の買いが進みますか?
円安になると外国人投資家が日本株を購入しやすくなりますが、全ての銘柄が購入対象という訳ではありません。
例えば将来的に株価が伸びるような、日本のゲーム会社やアニメ制作会社、コンテンツ会社などが購入されていく傾向にあります。
特に日本のゲームやアニメ等は、世界的にも有名であり企業のM&Aを狙って、日本株を購入する動きが見られます。
また日本株だけではなく、日本の不動産を狙って円安時に購入する投資家も多いです。
まとめ
円安になると日本株は一時的に株価が下がり、外国人投資家から買われやすくなります。
円安で買いが強くなると、その後株価が上がる傾向にあるため、短期トレードで利益獲得を狙う投資家も意外に多いです。
しかし、最近は円安になっても投資家による買いが強まらず、株価が上がらない傾向にあります。
円安だから日本株が上がる、というのは必ずしも起きることではありません。
そのためくれぐれも投機性の高い投資は、やらないようにしましょう。
まだ投資を始めていない方は、まずは”つみたてNISA”を活用したインデックス投資から、始めてみてはいかがでしょうか。
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