円安が最近は話題になっているけど、実際に私たちの生活にどんな影響があるの?
個人における円安のメリット・デメリットは?
本来、緩やかな円安は日本経済にとっては、好景気といもいえる良い状態を意味していました。
しかし現在は、全くそのような状況ではありません。
日本人の給料は過去20年間上がっておらず、むしろ会社によっては賃金が減っているところも珍しくありません。
そのような中で、円安により物価が上昇している訳ですから、個人の生活はますます困窮していく一方です。
本記事では、円安が及ぼす個人や会社への影響や円安に対する個人できる対策方法に関して、初心者にも分かりやすく解説しています。
円安が及ぼす影響を正しく理解した上で、対策を講じて家計を守りましょう。
円安と円高の違いと意味
円安・円高とは、円の価値が他の通貨と比較してどのような状態であるかを意味します。
- 円安 = 他の通貨と比較して円の価値が安くなっている状態
- 円高 = 他の通貨と比較して円の価値が高くなっている状態
例えば価格1ドルのA商品を、今月は100円で購入できたとしましょう。
しかし、同じく翌月も購入しようとしたら110円必要だといわれました。
この場合、商品価格は同じ1ドルですが円の価値が目減したことで、先月と比較して10円余分に支払わなければいけません。
「1ドル=100円」から「1ドル=110円」になった訳ですから、円の価値は先月と比較して下がった(円安になった)といえます。
逆に「1ドル=100円」で購入できたA商品が、翌月は「1ドル=90円」で購入できた場合、円の価値が上がった(円高になった)ことになります。
円安・円高は、円の数値ではなく価値を見て判断する点に注意しましょう。
個人(消費者)や企業に対する円安の影響
円安が個人や企業に与える影響としては、以下のような項目が挙げられます。
メリット | デメリット | |
個人 | ・海外資産の価値が上がる | ・輸入品が高くなる ・ガソリンや原油等の高騰 |
企業 | ・輸出産業の業績が伸びやすくなる ・海外からの観光客が増える | ・輸入費用が高くなる ・輸入産業の業績が落ちやすくなる |
個人でみると円安が長引けば生活費の高騰に繋がるため、あまり良くありません。
円安のメリット
個人 | 企業 |
・海外資産の価値が上がる | ・輸出産業の業績が伸びやすくなる ・海外からの観光客が増える |
個人でみると円安のメリットは、それほどないといえます。
日本は長い間、経済成長が停滞しており日本人の賃金は、約20年間上がっていない状態です。
好景気で会社員の賃金が上がっている状態で、円安が進み商品やサービスの値段も上がるのであれば問題ありません。
しかし、景気が悪い状態で円安の影響でインフレとなり、商品やサービスの値段が上がってしまうと、個人にとってはかなり厳しい状況になります。
ただ個人であっても海外へ投資をおこなっている人は、円安になることで保有資産の価値が上がるため、円安のメリットを感じられるはずです。
また企業側としては、円安になることで海外からの旅行客が増えますので、サービス業は業績が伸びる傾向にあります。
また輸出産業に関しても、円安により購入量が増える要因になるため、業績がプラスに影響する可能性が高いです。
円安のデメリット
個人 | 企業 |
・輸入品が高くなる ・ガソリンや原油等の高騰 | ・輸入費用が高くなる ・輸入産業の業績が落ちやすくなる |
個人に与える円安のデメリットとしては、主に輸入品が高くなることが挙げられます。
例えばパン屋さんでは、パンの精製に小麦が利用されますが、日本では小麦の約8割が輸入品なので円安になると小麦の価格が上がります。
原価が上がれば当然パン1個当たりの販売価格も上がるため、毎朝パンを食べるのが習慣の方は、1ヶ月の食費も上がることになるでしょう。
また企業側の視点でみた場合、円安の影響により輸入費用が高くなるため、輸入産業を営んでいるケースだと業績が落ちる可能性があります。
個人(消費者)や企業に対する円高の影響
円高が与える個人や企業への影響としては、以下のような項目が挙げられます。
メリット | デメリット | |
個人 | ・輸入品が安く買える ・海外旅行の費用が安くなる | ・海外資産の価値が下がる |
企業 | ・経済活性化に繋がり、 業績が伸びる要因になる ・海外の優秀な人材が日本へくる | ・輸出産業の業績が落ちやすくなる |
円高は個人でみると生活費の削減に繋がったり、海外旅行が行きやすくなったりとメリットの方が大きいです。
円高のメリット
個人 | 企業 |
・輸入品が安く買える ・海外旅行の費用が安くなる | ・経済活性化に繋がり、 業績が伸びる要因になる ・海外の優秀な人材が日本へくる |
個人に対する円高のメリットは、輸入品や海外旅行の費用等が下がるなどが挙げられます。
特に年数回ほど海外へ旅行されている方からすると、円高はかなり嬉しい状況です。
輸入品に関しても円高になると、原油や小麦などの原材料が安くなるため、国内の物価が下がる要因になるでしょう。
また企業側としては、円高により経済活動が活発化することで商品やサービスが売れていくため、企業によっては業績アップに繋がります。
その他、円高になると海外から優秀な人材が、日本へ流れ込んでくる要因にもなります。
円高のデメリット
個人 | 企業 |
・海外資産の価値が下がる | ・輸出産業の業績が落ちやすくなる |
円高の個人に対するデメリットとしては、海外資産を保有している方は価値が目減することが挙げられます。
特に最近は米国株投資を始める人が多いですが、円高になるとドル建てで持っている資産の価値は、当然目減します。
とはいえ個人レベルでみると円高は、それほど大きなデメリットは挙げられません。
対して企業側からすると円高は、輸出産業の業績に大きく影響を与えますので、輸出産業国である日本にとってはあまり良くない状況です。
個人にとって「円安がやばい」といわれる理由
テレビやSNS等はじめ各メディアでは「円安がやばい」というフレーズが、とても目立ちます。
これは個人からすれば労働賃金が上昇していないにもかかわらず、物価の価格が上昇し生活を圧迫しているからに他なりません。
個人や企業によっては過度な円安により、潤っているところもあるかも知れませんが、大体の場合はあまり良くない状況だといえるでしょう。
特に日本人は、諸外国と比較して貯金が好きな傾向にあるため、円だけを保有している人が多く外貨建ての資産を保有している割合は少ないです。
円だけを保有している場合、預金通帳の金額自体は変わらないものの、その価値に関しては時間と共に目減しているといえます。
円安により物価が上昇している状態をみて、本来であればインフレを抑制するために日銀(日本銀行)が金利を上げる訳です。
しかしながら、現在日本はコロナの影響により経済自体が不景気なため、仮に金利を上げてしまうと不景気に更に追い打ちをかける結果となります。
その上、ウクライナ戦争も相まって更に一部輸入品の価格が高騰しており、個人・企業ともに状況は良くありません。
結果的に今の状況は「悪い円安」と呼ばれています。
為替の価格変動に与える要因は様々ですので、素人が予測するのはかなり難しいでしょう。
個人でできる円安対策おすすめ3選【初心者向け】
円安に対して個人できる対策方法としては、外貨建てで資産を保有することです。
中でも初心者でも始めやすいのが、以下の3つの項目になります。
- つみたてNISA
- iDeCo(イデコ)
- 外貨積立
円安以前に資産運用を始めている方は、資産価値はそれほど目減していないです。
つみたてNISA
つみたてNISAとは、少額から積立投資ができる非課税制度です。
国が提供している非課税制度の一つであり、年間40万円まで金融庁が定めた特定の金融商品を購入できるようになっています。
例えば投資信託を毎年40万円購入した場合、保有している間に得た分配金や値上がり後に売却して得た売却益に関して20年の間、課税されません。
本来であれば20%の源泉分離課税が課せられますが、つみたてNISA制度を利用すれば非課税で20年間、運用できます。
iDeCo(イデコ)
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国が提供している年金制度の一つであり、従来の公的年金にプラスして利用できる私的年金制度です。
従来の年金制度とは異なり、加入は任意な上に掛金に関しても自由に本人の意思で決定できます。
毎月の掛金となる拠出限度額に関しては、自営業者や会社員等で異なるため、事前に確認した上で利用するようにしましょう。
またiDeCoの具体的なメリットとしては、以下の通りです。
- 掛金が全額所得控除される
- 運用益が非課税で再投資される
- 受給時に所得控除が受けられる
注意点としては、つみたてNISAとは異なり一度始めてしまうと、原則60歳までは積み立てた掛金を引き出すことができません。
外貨積立
外貨積立とは、円ではなくドルやユーロ等で積立を行うことを指します。
最近はネットバンクを中心に自動積立サービスも提供されているため、一度設定しておくと後はほったらかしでも毎月積立が可能です。
外貨積立のメリットとしては、以下の通りです。
- 為替差益が得られる
- 円よりも高い金利が得られる
米ドルの外貨定期預金等を利用すると、年利1.2%ほどの金利が得られるケースもあります。
日本では預金金利が年利0.001%程とかなり低いため、外貨預金を利用するのも一つの手です。
また注意点としては、通貨を交換する際には為替手数料が毎回発生しますので、その点を踏まえた上で利用する必要があります。
円安や円高に関するよくあるQ&A
円安や円高に関する多くの質問や悩み等の中から、特に多かった内容だけに絞って、分かりやすく回答をまとめてみました。
行き過ぎた円安は個人にとっては深刻な問題ですので、しっかりと対策しておきましょう。
Q.インフレと円安の関係性とは?
インフレと円安は相関関係にあるため、インフレが円安を招く場合もあれば、逆に円安がインフレを招く場合もあります。
例えばインフレになるとモノやサービスの値段が上がり、お金の価値が下がります。
お金の価値が下がると通貨レートも必然的に下がるため、円安を招く要因になるでしょう。
逆に円安になると円の価値が下がり、輸入品等を購入する際にこれまで以上に円が必要となるため、国内のモノやサービスの値段が上がり、インフレを招くのです。
Q.円安はいつまで続くのでしょうか?
2022年5月7日、時点において1ドル130.57円の状況です。
現状、日本経済はコロナ渦やウクライナ戦争などの煽りを受けて経済が不安定な状態ですので、日銀も下手に金融政策が行えません。
自国での対策が打てない以上は、アメリカの動きを見守るしかないため、今後も円安が進む可能性が高いと予測する専門家が多いです。
Q.円安と円高はどっちがいいのでしょうか?
個人からみた場合、円高の方がメリットは大きいでしょう。
理想的には円安かつ経済が好景気な状況が一番良いのですが、現在は経済が不景気な上の円安となっているため、状況はあまり良くありません。
Q.「悪い円安」と呼ばれているのはなぜですか?
本来、円安は輸出産業国である日本とっては、良いこととされてきました。
しかし、現在は労働者の賃金が上がらないまま過度な円安を迎えているため、物価が急激に上昇し個人の生活を圧迫している状態です。
このような状況を各メディアでは「悪い円安」と呼ばれています。
Q.円安がやばいため定期積立を辞めようか悩んでいます…
円での定期預金を行っているのであれば、外貨積立に乗り換えるなどの検討は行っても良いでしょう。
今はつみたてNISAや、iDeCo等の便利な非課税制度も多数あるため、総合的に考えて判断することをおすすめします。
個人での判断が難しい場合は、お気軽にFPへご相談ください。
まとめ
「悪い円安」と呼ばれる現在において、個人でできる対策としては外貨建ての資産を保有することが挙げられました。
今後も円安が進む可能性が高い中で、徐々に国内で提供されているモノやサービスの値段が、上がっていくと予測されます。
為替相場は、プロの投資家や専門家でも予測が難しいため、個人でできる範囲で最低限の対策を行っておきましょう。
毎月の収支を今一度見直しできる限り節約に励み、毎月少額から投資を行っていきましょう。
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