国民年金保険料は免除を受けるとどんなデメリットがあるの?
具体的な免除の申請方法や追納申請のやり方は?
国民年金保険料は所得に応じて、免除もしくは一部免除の申請を行うことができます。
保険料の納付対象は20歳以上となっており、国民年金への加入は法律により、義務付けられています。
逆に、保険料が支払えないからといって、免除申請もせずに未納のままでいるのはおすすめしません。
なぜなら、老齢基金年金や障害年金、遺族年金などを受け取れない可能性が出てくるからです。
この記事では国民年金保険料の免除を受ける際のメリットやデメリットに関して、分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただく事で、国民年金保険料の免除申請のやり方や、追納申請のやり方など正しく理解する事ができるでしょう。
国民年金保険料を免除した場合の主な2つのデメリット
- 将来受け取れる年金額が減る
- iDeCoや国民年金基金に加入できなくなる
国民年金保険料を免除した場合の一番のデメリットは、本来納付するべき国民年金保険料を全額納付した場合に比べて、将来受け取れる年金が減るという事です。
基本的に国民年金は、国と国民で半分ずつ支払いを行っている状態であり、国が負担している保険料は税金で補われています。
そのため、たとえ全額免除を受けたとしても、半分は国が支払っているため、何も受給できない訳ではありません。
将来受け取れる年金額が減る
国民年金保険料の免除は、所得状況に応じて4つの段階に分けられています。
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
所得が高ければ免除されることはありませんが、逆に所得が低ければ、全額免除される可能性が高くなる訳です。
免除を受けた割合に応じて、将来受け取れる年金額も減ってしまいます。
iDeCoや国民年金基金に加入できなくなる
国民年金保険料の免除もしくは、納付猶予を受けた場合、iDeCoや国民年金基金に加入する事はできません。
理由としては、どちらも
「国民年金の受給だけでは、老後生活が不安だ…。」
というニーズに応えるために作られた制度だからです。
優先順位は国民年金が高いため、資金に余力がある人は追納申請を行い、まずは国民年金の支払いを行いましょう。
国民年金保険料を免除した場合の主な2つのメリット
- 保険料の負担が(軽くなる)なくなる
- 老齢基礎年金の受給資格期間に加えられる
国民年金保険料の免除を受ける際の一番のメリットは、保険料の負担が軽くなる事です。
とはいえ、免除申請すれば誰しもが全額免除になる訳ではなく、所得状況によって判断されます。
また、免除を受けたとしても、免除期間は老齢基金年金の受給資格の期間に数えられます。
保険料の負担が(軽くなる)なくなる
国民年金保険料の免除を受けた場合、保険料の負担が軽くなるもしくは、支払いをなくすことができます。
特に支払い自体が難しい経済状況にある方や、学生身分で支払いが難しい方などは、積極的に免除や納付猶予の制度を活用した方が良いでしょう。
仮に免除を受けたとしても、その後10年以内であれば追納申請を行うことで、過去を遡って保険料を納めることができます。
老齢基礎年金の受給資格期間に加えられる
老齢基金年金とは、国民年金保険料の納付期間と免除期間が、合わせて10年以上ある人が受け取れる年金制度です。
実際の受給は65歳からとなっており、20歳から60歳までの間で全額を納めた人は、65歳から満額受け取れる訳です。
ちなみに、国民年金保険料の免除期間は、受給資格期間に換算されますが、未納期間は対象外なので支払いが難しい人は免除申請を必ず行いましょう。
国民年金保険料が全額免除になる条件
免除の割合 | 適応所得の金額範囲 |
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3免除 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
国民年金保険料の免除に関しては、適応所得の金額の範囲内に入っていれば、免除申請を行うことで該当する保険料の免除を受ける事ができます。
全額免除を希望する場合は、年間の所得額の合計が
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
の計算式で算出した金額の範囲内に、収まっている事が条件となります。
例えば一人暮らしの方で、国民年金保険料の全額免除を受ける際には、年間の所得額が57万円以下でなければなりません。
また、全額免除の場合は、扶養家族の数によって計算結果が異なりますので、実際に計算される際には注意してください。
国民年金保険料の免除・納付猶予に関する主な7つの制度
- 保険料免除制度
- 納付猶予制度
- 特例免除(失業者向け)
- 法定免除(生活保護・障害年金の受給者向け)
- 産前産後期間の免除制度
- 学生納付特例制度(学生向け)
- 臨時特例免除(コロナ関連)
国民年金保険料の免除申請の種類としては、主に7に分類されます。
学生向けや失業者向けなど、申請希望者の状況によって適応される制度が異なるため、実際に申請する際には注意してください。
また、どの制度が適応されるか分からない方は、お近くの市役所へ行って、直接窓口で聞いてみると良いでしょう。
保険料免除制度
対象者 | 所得が少ない本人・世帯主・配偶者 |
適応条件 | 前年所得が一定額以下の場合 |
詳細情報 | 日本年金機構|国民年金保険料の免除制度 |
収入の減少や失業した際に、前年度の所得額を参考に適応される制度です。
保険料を納めるのが難しい場合は、未納のままにせずに必ず保険料免除制度の活用を、検討してください。
申請自体は最寄りの市役所で簡単にできますので、条件を確認し必要書類を提出しましょう。
納付猶予制度
対象者 | 20歳から50歳未満の方(本人・配偶者) |
適応条件 | 前年所得が一定額以下の場合 |
詳細情報 | 日本年金機構|国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 |
納付猶予制度(のうふゆうよせいど)は免除制度とは異なり、学生やそれ以外の20歳から50歳未満の人といった、将来的に追納が期待できる人を対象とした制度です。
注意点としては、保険料の納付が猶予されている期間の年金額は、計算されないという事です。
そのため、納付猶予制度を活用した人は、必ず猶予期間が過ぎた後に追納申請を行うように心がけてください。
特例免除(失業者向け)
対象者 | 失業者 |
適応条件 | 失業した事実があること |
特例免除とは、本来であれば前年度の所得額に応じて免除が適応されるところを、本人の所得を除外して審査を行うものです。
前提条件としては、申請を行う年度もしくは前年度に、失業している事実がある人が対象となります。
ただし、配偶者や世帯主に一定の所得がある場合は、認められない場合があります。
法定免除(生活保護・障害年金の受給者向け)
対象者 | 国民年金第1号被保険者 |
適応条件 | ・障害年金の1級または2級を受給している ・生活保護法の生活扶助を受けている ・国立ハンセン病療養所などで療養している |
詳細情報 | 国民年金基金|国民年金保険料の法定免除制度 |
すでに経済的に生活が厳しく、生活保護受給などを行っている人は、法定免除を申請する事で国民年金保険料を免除する事ができます。
その他、障害基礎年金や障害年金の2級以上を受けている人も、法定免除の対象となります。
産前産後期間の免除制度
対象者 | 妊婦 |
適応条件 | 妊娠85日(4か月)以上 |
詳細情報 | 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度 |
産前産後期間の免除制度は、申請することで出産月の翌々月までの4カ月の保険料が、免除される制度です。
早産、死産、流産及び人工妊娠中絶された方も含まれており、妊娠85日以上経過している事が適応条件となります。
学生納付特例制度(学生向け)
対象者 | 学生 |
適応条件 | 一定の所得基準以下であること |
詳細情報 | 国民年金基金|国民年金保険料の学生納付特例制度 |
学生納付特例制度とは、学生の保険料の納付期間が猶予される制度です。
ここでいう”学生”とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校及び各種学校など、海外の学校へ通っている人も含まれます。
基本的にほとんどの学生が対象となるため、保険料の支払いが負担になっている人は、申請を検討してみてください。
臨時特例免除(コロナ関連)
対象者 | コロナウィルス感染症の影響により収入が減少した人 |
適応条件 | 前年所得が一定額以下の場合 |
詳細情報 | 日本年金機構|新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について |
臨時特例免除とは、コロナウィルス感染症により経済的な打撃を受けた事で、大きく収入が減少した人が対象となる免除制度です。
制度の名前に”臨時”とあるように、対象期間が定められているので、各自どのような適応を受けるかを確認する必要があります。
詳しくは最寄りの市役所の、国民年金窓口に問い合わせてみてください。
国民年金保険料の免除申請のやり方・方法
国民年金保険料の免除申請を行う際には、必要書類を持参し、最寄りの市役所(国民年金担当窓口)にて申請する事ができます。
インターネットからの申請にはまだ対応していませんが、郵送で申請を行うことも可能です。
また、免除申請では申請時点から2年1ヵ月前までの期間を遡って、免除にすることもできます。
ただし、1枚の申請書で免除できる期間は、その年の7月から翌年6月までの1年度分です。
そのため、過去の期間を免除にするためには、別途書類が必要となります。
国民年金保険料を免除した人の追納申請のやり方・メリット
国民年金保険料の免除もしくは、納付猶予を受けた人は追納申請を検討してみましょう。
追納申請は過去10年以内であれば、後からでも免除期間を納付済みにする事ができます。
免除等を受けた人でお金に余裕がある方は、できるだけ保険料の追納を行うようにしてください。
国民年金保険料を追納申請する主な2つのメリット
- 老齢基礎年金の年金額を増やす事ができる
- 社会保険料控除により、所得税・住民税が軽減される
国民年金保険料を追納申請する一番のメリットは、将来受け取れる年金受給額が多くなる事です。
受給額は支払った保険料を参考にして決められるため、免除期間が長いと将来受け取れる金額が少なくなってしまいます。
しかし、追納申請を行い後払いをする事で、免除期間をなくす事が可能です。
また、追納して支払った保険料は、社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されるメリットもあります。
国民年金保険料の追納申請のやり方【簡単3ステップ】
- 年金事務所で申し込みを行う
- 納付書を受け取る
- コンビニや銀行、郵便局などで支払う(口座振替、クレジットカード非対応)
国民年金保険料の追納申請のやり方は、至って簡単です。
最寄りの年金事務所で申請を行うと、厚生労働大臣の承認を受けた上で、納付書が渡されます。
その後、渡された納付書を持って、最寄りのコンビニで現金支払いするだけです。
詳しくは、「国民年金機構|国民年金保険料の追納制度」でご確認頂けます。
国民年金保険料の免除に関するよくあるQ&A
国民年金保険料の免除に関する多くの質問や疑問の中から、特に多かった内容だけに絞って、分かりやすく回答をまとめてみました。
免除申請を検討している方は、参考にしてみてください。
また、取り上げていない内容で疑問に感じている事がある人は、最寄りの市役所にある国民年金窓口で、直接質問してみることをおすすめします。
自身の年収は国民年金保険料の支払額に影響しますか?
結論からいうと、国民年金保険料に年収は関係ありません。
国民年金保険料の支払額は、毎年度見直しが行われます。
令和3年度(令和3年4月~令和4年3月まで)は、月額16,610円となっており、年度間の支払額の合計は199,320円です。(※参照:日本年金基金)
年間約20万円の保険料となりますが、支払いが難しい場合は、免除申請を行うことをおすすめします。
免除の適応を受けるには、年収ではなく所得で算出される一定額の基準を、満たしていなければなりません。
現在、学生であり国民年金保険料を支払うのが難しいです
学生の場合は、学生納付特例制度を活用する事で、国民年金保険料を納付猶予する事ができます。
申請自体も簡単ですので、まずは最寄りの市役所の国民年金窓口で、相談してみてください。
コロナショックで失業し、国民年金保険料を支払うのがキツイです
コロナの影響で失業した人や、収入が大きく減少した人には、臨時特例免除(もしくは特例免除)を活用することをおすすめします。
失業した事実があれば特例免除を受ける事ができますので、支払いが難しいからといって未納のままにして放置せずに、必ず免除申請を行ってください。
国民年金保険料を全額免除した場合、将来いくらもらえるの?
国民年金保険料を全額免除した場合、満額納付した人の半額しか受給することができません。
保険料の半分は徴収した消費税から国が納めてくれているため、もう半分の保険料を全額免除にすると、単純に受給額は半額になります。
将来、受給する年金額を少しでも増やしたい方は、満額支払いを継続して20歳から60歳まで、続ける事です。
親と同居している場合、国民年金保険料の支払いはどうなりますか?
親と同居しているからといって、支払う国民年金保険料の金額は変わりません。
ただし、免除申請を行う際には、扶養家族の有無が影響してきますので、一度条件を確認した後に申請を行うことをおすすめします。
また、世帯主であれば節税効果を狙って、子供の国民年金保険料を代わりに支払う事で、節税メリットが受けれます。
まとめ
国民年金保険料の免除を受けるメリットや、デメリットに関して解説してきました。
免除を受けるデメリットとしては、主に2つ挙げられました。
- 将来受け取れる年金額が減る
- iDeCoや国民年金基金に加入できなくなる
国民年金保険料は、公的年金とも呼ばれている制度であり、国民には加入が義務付けられています。
民間企業が提供している個人年金とは違い営利目的ではないため、保険料の支払いを故意に免除申請して、支払わないのは大変損しているといえます。
そのため、お金に余裕がある人は追納申請してでも、できるだけ支払っておいた方が、後々受け取るメリットが大きいです。
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