いらない相続財産はどうすればよい?フローチャートと5つの対処法

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田舎の土地や築年数の古い実家、借金、含み損のある株式などいらない相続財産がある場合は一体どうしたら良いのでしょうか?

相続放棄は被相続人(亡くなった方)の相続財産全てを放棄するため、他に相続したい財産が無い場合には有効な手段です。一方で預貯金といった相続したい財産がある時は、一度相続してから取り扱いを検討する事になります。

本記事では、相続放棄について、負債がある場合、いらない相続財産がある時の対処法5つを解説していきます。

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いらない相続財産がある場合のフローチャート

いらない相続財産がある時には、以下のフローチャートを参考にしましょう。

他に相続したい財産がある時には相続放棄は有効な手段とは言えません。まずは相続放棄について解説していきます。

相続放棄とは?相続財産に負債がある場合

例えば「土地はいらないけど預貯金は欲しい」といった遺産の中に相続したい財産といらない財産がある場合、欲しい財産だけを相続する事はできません。
相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことで相続が放棄できますが、被相続人(亡くなった人)が残した相続財産全てを放棄しなければなりません。

相続を放棄することで、放棄した人は始めからいなかった者とみなされます。

遺産分割協議には参加せず相続関係の手続きを行わなくても良いため、「遺産をもらいたくない」「他の相続人と折り合いが悪く遺産分割協議に参加したくない。遺産はいらない」という方は相続放棄を行ったほうが良いでしょう。

ただし相続放棄によって他の相続人の順位が繰り上がり本来相続人ではない人が相続人となる、他の相続人の分割割合が変わるなどの影響を及ぼす可能性があります。

また、他の相続人が相続した際には相続した人が財産の管理を行いますが、全員が相続放棄した場合には、相続放棄をした者でも相続財産に管理義務が残ります。

民法940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

いらない財産の代表例として、郊外の土地(農地・山林を含む)や築年数の古い実家、含み損のある株・投資信託などの有価証券などがあります。

有価証券は値上がりする可能性がありますが、相続税の計算時の評価が難しいというデメリットがあります。

不動産は価値が低い場合、相続人同士でトラブルが起こりやすくなるため慎重に話し合いましょう。

相続財産に負債がある場合

借金やローンなど、相続財産に負債がある場合にはどうしたら良いのでしょうか?

まず負債額がどの位あるのか、被相続人が取引のあった金融機関に問い合わせ確認することが重要です。
債務がどの位あるのか分からない時には、「限定承認」という手続きを行い、プラスの相続財産の範囲内でマイナスの相続財産を受け継ぐことが可能です。

調査の結果、負債が多いことが分かった場合には相続放棄を検討しましょう。

相続でいらない財産がある場合の対処法5つ

相続でいらない財産がある場合、以下の5つの対処法があります。

  • 相続放棄
  • 相続後に売却
  • 寄付・譲渡
  • 処分
  • 公的制度の活用

1.相続放棄

上で述べた通り、「相続財産全てを放棄しても良い」という方は相続放棄を検討しましょう。
相続開始から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。

2.相続後に売却

相続財産に価値があり売却が出来る時には相続後に売却し、分割する事例が多いです。
売却で利益が生じた際には譲渡所得税が課されますが、不動産は一定の要件を満たした際に最高3000万円を控除できる特例措置があります。

3.寄付・譲渡

相続後に財産を寄付又は譲渡する方法です。
寄付・譲渡を受け入れてくれる個人や団体を探す必要があり、譲渡した際には譲渡時の時価で売却したとみなされ譲渡所得税が課される可能性がありますので注意しましょう。

国又は地方公共団体など一定の者に贈与した場合には、寄付した財産の価額は相続税の課税価格の計算に算入しないという決まりがあります。

郊外の土地は近隣の住民にとって所有地が広くなるため、無償で引き取ってくれるケースも存在します。

価額の低い不動産の貰い手が現れない時には、国土交通省や地方自治体の事業である空き家・空き地バンクによって引き取り手が見つかることがあります。
空き家バンク・空き地バンクは、空き家(空き地)を売りたい(又は貸したい)人と買いたい(又は借りたい)人を繋げるサービスです。
気になる方は役所に相談し、活用を検討してみましょう。

4.処分

お金をかけて要らない財産を処分します。骨とう品や絵画、貴金属などは不要品買取サービスを利用しましょう。

遺品整理が精神的につらい方は、遺品整理業者に代行を依頼するという方法もあります。

5.公的制度の活用

2023年4月から、相続・遺贈によって取得した土地を国庫に帰属する制度が始まります。

法務局に申請を行い、手数料と10年分の土地管理費相当額(負担金)を支払う事で一定の土地を国庫に帰すことができます。

いらない相続財産がある場合の注意点

要らない相続財産が有る際には以下の点に注意しましょう。

相続人同士のトラブルは弁護士に相談を

遺産分割協議で相続人同士の意見が合わず、「兄弟仲が悪くなった」「意見が合わず遺産分割が出来ない」などトラブルに発展してしまうケースは少なくありません。

特にいらない相続財産がある時は、相続人同士で「押し付け合い」となり口論に発展してしまう事例もあります。

トラブルになりそうな時には第三者、できれば法律の専門家である弁護士に間に入って貰い冷静に話し合いを進めましょう。

遺産分割協議で相続人全員が合意しない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立て解決に向けて話し合う事になります。

相続放棄をする人に遺産を分けたい場合

「遺産はいらない」と言い相続放棄をした方に遺産の一部を分けたい場合には「相続分の譲渡契約」を締結します。

譲渡契約は、自身(又は他の相続人)が相続した財産を相続放棄者と契約し譲渡する方法です。

裁判所に届け出が必要なケースがありますので、事前に確認をしましょう。

いらない財産で有っても手続き費用がかかる

いらない相続財産があっても他に相続したい財産があり、相続を行う際には被相続人から相続人の名義に変更しなければならず場合によっては手数料がかかります。

特に不動産は相続登記を行う必要があり、代行を依頼する場合は司法書士に報酬を支払います。

また、相続財産として相続税の計算に影響を及ぼす点にも注意しましょう。

まとめ

今回は相続放棄について、相続財産に負債がある場合、いらない財産が有る時の対処法5つと注意点を解説してきました。

貴金属や骨とう品などの動産は処分が比較的容易ですが、不動産は手続きが煩雑で売却にも手間や時間がかかります。有価証券は評価が難しい、運用したことの無い方はどうしたら良いか分からないといったデメリットがあります。

それぞれの相続財産の特性に合わせて相続人を決定し、場合によっては相続放棄や相続後の売却・譲渡などを検討しましょう。

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