相続放棄の手続きを考えているのだけど、生前からでもできるのか気になる…。
できない場合は、相続放棄の代替え案などが詳しく知りたいなぁ…。
結論からいうと相続放棄の手続きは、生前の段階では行うことができません。
実際に手続きができるのは、相続が開始されたのを知った日からとなります。
とはいえ、全く打つ手がないという訳ではなく、相続放棄に代わる代替え案を使うことは可能です。
この記事では相続放棄の手続きのやり方や期限、生前に行える代替え案等に関して、初心者の方にも分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、相続放棄の手続きに関して正しく理解することができるでしょう。
相続放棄の手続きを生前に行いたいと考えている人は、本記事でご紹介している代替え案を、是非とも参考にしてみてください。
相続放棄の手続きが生前にできない理由
相続放棄の手続きを行うためには、管轄の家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。
しかし、家庭裁判所では生前からの相続放棄を受け付けていないため、事前に相続放棄の手続きを行うことは不可能です。
仮に「相続を放棄します」といった契約書や念書を生前に作成したとしても、法的な効力のある書類にはなりません。
相続に関する悩みは事前に、弁護士や税理士、FP等の専門家に一度相談するのが得策です。
事務所によっては、初回は無料で相談に乗ってくれるところもあります。
相続放棄したい人にありがちな2つの理由
相続放棄の手続きを生前から検討されている方には、主に共通する理由が2つ挙げられます。
- 親族に借金がある
- 家族間が不仲、絶縁状態である
大概の場合が被相続人の借金問題ですが、中には家族間が不仲であり普段からコミュニケーションを取っていない、などの理由も挙げられます。
実家と絶縁状態になっていたりすると、接触するのが面倒に感じてしまい、相続放棄の手続きを生前から検討する人が多いです。
生前に作成した相続放棄の念書は無効となる
相続放棄を生前から検討されている方の中には、独自に契約書や念書を作成する人もいます。
実際には生前に作成された念書等には、法的効力は一切ありませんが、心理的な効果が生じるケースがあります。
例えば相続がはじまってから作成した念書を根拠に、一切の相続を放棄してもらうといった、相手にプレッシャーを与える効果が期待できます。
「相続放棄に関する念書があることだし、約束通り相続を放棄してほしい」と言われれば、反論するのは難しいかも知れません。
相続放棄の手続きは生前に行っても法的効力は持ちませんが、相続分の放棄(もしくは譲渡)といった意思表示にはなります。
相続放棄の代わりに生前にできる5つの手段【裏ワザ】
相続放棄の手続きは生前には行うことができませんが、その代わりの代替え案として、主に5つの方法をご紹介します。
- 債務整理を行う
- 生命保険への加入
- 遺言書の作成
- 生前贈与の活用
- 遺留分の放棄
ただし、どの方法も相続放棄と全く同じ効果を持つ手段ではありません。
あくまでも生前に行っておけば、何も行わないよりも良いと思える代替え案です。
相続放棄を行う理由を自身でしっかりと紐解いて、どの代替え案を採用した方が得策であるか考えることが大切です。
債務整理を行う
相続というと被相続人の遺産が受け取れるため、メリットしかないように思えますが、相続では借金も同じように受け渡しされます。
そのため、生前の段階で借金があるようであれば、債務整理を行い借金問題を解消しておくのも一つの手です。
“債務整理”とは、借金を減額させたり、支払いに猶予を持たせる方法です。
また、債務整理には主に3つの種類があります。
- 自己破産:裁判手続きにより、債務者の財産を債権者に分配する
- 個人再生:債務の一部を免除した上で、残りを分割で支払う
- 任意整理:弁護士が債務者の有利になる条件になるように交渉してくれる
債務整理といってもどの方法を選択するかによって、メリット・デメリットが異なりますので、必ず最初に弁護士に相談しましょう。
債務整理は、一人で判断できるものではありませんので、専門家である弁護士に相談するのが得策です。
相談自体は無料で行ってくれます。
生命保険への加入
死亡保険金は、相続放棄を行った人でも受け取ることができます。
仮に被保険者が借金を持っていたとして、借金の相続を避けるために相続放棄を行なったとしても、生命保険金は受け取りが可能です。
なぜなら、生命保険金は個人の財産であり、”相続財産”には該当しないからです。
また、生命保険へ加入しておくことで、葬儀代などの費用に当てることもできます。
生命保険金は、相続争いを避けるための一つの手段としても活用できますので、前向きに検討してみることをおすすめします。
また、保険関連に関しては専門家であるFPに、お気軽にご相談ください。
遺言書の作成
相続分割においては、遺言書を事前に作成しておくことで、誰にどのくらいの遺産を分割するのかを予め定めておくことができます。
逆に特定の相続人に対して、「遺産を相続しない」といった遺言書の作成も可能なので、死後の相続争いを効果的に避けることも可能です。
相続争いは決して他人事ではありませんので、遺産や借金のあるなしに関わらず、一度検討してみてください。
生前贈与の活用
“生前贈与”とは、その名の通り生前のうちに遺族に対して、遺産を無償で渡す行為を指します。
相続税の節税効果を目的に活用されることが多く、生前贈与を行うと相続税の負担を減らすことができます。
ただし、生前贈与を行う際には、贈与税が課せられるため注意が必要です。
例えば財産の額がとても多く、相続税の税率が非常に高くなりそうな場合、節税対策として生前贈与を検討する必要があります。
また、相続放棄を検討している人に対しても、生前贈与を行うことで先に遺産を贈与することもできます。
遺留分の放棄
“遺留分”とは、法定相続人が最低限必ずもらえる財産です。
仮に遺言書に何も財産を渡さない内容が書かれていたとしても、遺留分は別として受け取ることができます。
相続人の中には、「相続財産を受け取りたくない」「今後一切関わりたくない」などと思っている人もいるはずです。
そのような人は、遺留分をあらかじめ放棄することで、相続に関わらないと意思表示できる訳です。
遺留分を放棄したとしても、「債務を引き継がないでよい」という訳ではありませんので、その点だけ注意しましょう。
相続放棄の手続きはいつからできる?期限はいつまで?
相続放棄の手続きは、実際に被相続人が亡くなってからしか行うことができません。
期限としては、相続を知った日から3ヶ月以内となっており、必要書類を準備した上で管轄の家庭裁判所へ申し立てを行います。
万が一、期限以内に相続放棄の手続きが行われなかった場合、自動的に”単純承認”の扱いになります。
単純承認とは、借金や他の財産も全て引き継ぐ、一般的な相続形式のことです。
相続開始後には、相続放棄、単純承認、限定承認の3つの形式から、選択することができるようになっています。
相続を放棄するための手続きのやり方・流れ
実際に相続放棄の手続きを行う際には、主に4つのステップに分けられます。
- 相続財産の状況を把握する
- 相続放棄申述書を作成する
- 必要書類を管轄の家庭裁判所に提出する
- 相続放棄申述受理通知書が裁判所から郵送される
被相続人が亡くなった時点で、最初に相続財産の状況を把握し、相続放棄する場合は必要書類の準備を行いましょう。
手続きに関しては別段難しいものではありませんので、一度相続人同士で話し合った上で決めるのが得策です。
相続に関する問題は相続人同士だけではなく、専門家(弁護士や税理士、FP等)も交えて、一度話し合った方がスムーズに解決しやすいです。
相続財産の状況を把握する
被相続人が亡くなった後に、すぐに相続放棄の手続きを行うのではなく、一度相続財産の状況を把握することが大切です。
相続財産がマイナスではなくプラスだった場合は、相続放棄しない方が良いかも知れません。
また、一度相続放棄の申請を行ってしまうと、原則取り消すことはできませんので、しっかりと考えた上で判断するようにしましょう。
その他、相続財産の状況が把握できないようであれば、”限定承認”を選択するのも検討に値します。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続することを指します。
限定承認を選択する際にも、相続放棄と同じように必要書類を準備して、家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。
相続放棄申述書を作成する
“相続放棄申述書”とは、その名の通り相続放棄に必要な申請書類のことです。
書類自体は裁判所の公式サイトから、ダウンロードできるようになっています。
記入する内容は、氏名・住所・相続放棄に関する理由等だけとなっており、比較的簡単なものです。
ただし、20歳以下の人は記入する書類が異なりますので、確認した上で作成するようにしてください。
必要書類を管轄の家庭裁判所に提出する
相続放棄申述書などの必要な書類が準備できたら、管轄の家庭裁判所に提出します。
具体的な必要書類には、住民票や戸籍附票、相続放棄をする人の戸籍謄本などが含まれます。
被相続人との続柄によって必要となる書類が異なります。
分からない場合は準備する前に、家庭裁判所に聞いてみるのも一つの手です。
相続放棄申述受理通知書が裁判所から郵送される
家庭裁判所に必要書類の提出が完了したら、後日裁判所から”相続放棄申述受理通知書”が、送付されてきます。
その後、届いて1週間前後で相続放棄に関する手続きは、全て完了となります。
相続放棄の手続きが完了すると、後で取り消し等はできませんので、よく考えてから行うようにしてください。
まとめ
相続放棄の手続きは、生前には行うことはできません。
そのため、相続放棄に代わる代替え案として、主に5つの方法をご紹介しました。
- 債務整理を行う
- 生命保険への加入
- 遺言書の作成
- 生前贈与の活用
- 遺留分の放棄
相続放棄同等の効果はありませんが、それぞれ相続前に行える効果的な手段なので、目的に合わせて活用を検討してみてください。
また、相続人同士での判断が難しい場合は、一度弁護士や税理士、FP等の専門家に相談してみることをおすすめします。
相続に関しては家族間で問題になりやすいので、できるだけ生前に遺言書を準備したり、残される遺族と話し合っておくことが大切です。
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