2023年4月から雇用保険料が1.55%に引き上げへ。なぜ?会社員の負担はいくらになる?

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2023年4月から雇用保険料が引き上げになり、労働者・雇用主ともに負担が増える見込みです。

雇用保険料を払うことで、労働者は離職時に一定の要件を満たすことで失業手当が支給されます。次の就職先が決まっていない状況で失業してしまったときの経済的負担を軽減できる制度ですが、なぜ引き上げに至ったのでしょうか?
労働者の負担は年間どれくらい増えるのでしょうか?

本記事では雇用保険料の引き上げ率や引き上げとなった理由、改正後の保険料シミュレーション、失業手当について解説していきます。

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雇用保険料率の引き上げとは?

2022年12月に、厚生労働省は労働政策審議会の部会で雇用保険料の議論を進め、保険料率を0.2%引き上げる方向で最終調整に入ったことが分かりました。

雇用保険料率は2022年10月~2023年3月末まで以下の率に設定されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000921550.pdf

厚生労働省「令和4年度雇用保険料率のご案内」より

雇用保険料率は労働者と事業主が一定の割合で負担します。
労働者が負担するのは「失業等給付に係る雇用保険料率」のみです。
事業主は失業等給付に係る雇用保険料率に加え雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)に関しても一定の保険料率が課され保険料を納めることになります。

今回引き上げられるのは「失業等給付に係る雇用保険料率」で、労働者・事業主ともに負担が増すことになります。

引き上げ後の保険料率は、労働者の料率は0.5%から0.6%、事業主は0.85%から0.95%に上がることが予想されています。
なぜ雇用保険料が引き上げになるのでしょうか?

助成金の給付で財政がひっ迫、コロナ禍の緩和措置が元に戻る

雇用保険料率は2022年の雇用保険法改正により、2022年度に限り労使の負担を踏まえた「激変緩和措置」がとられている状態です。原則の保険料率は失業等給付分の保険料率は0.8%ですが、2022年4月~9月は0.2%、2022年10月~2023年3月は0.6%に緩和されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001025513.pdf

厚生労働省第179回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会「雇用保険の財政運営等について」より

雇用調整助成金の特例措置により給付がふくらみ、財源がひっ迫していることから今回の激変緩和措置が撤廃されることになりました。

新型コロナ感染症の影響が長引く中で、失業手当が増加したことも原因の1つとされています。
2015年には雇用保険の積立金残高は過去最高の64,260億円でしたが、2020年から急激に減少し今回の緩和措置撤廃という流れになります。
「2022年度2次補正後の失業等給付関係の収支状況」を見ると、収入が激減し支出が増大していることが分かります。

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001025513.pdf

厚生労働省第179回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会「雇用保険の財政運営等について」より

会社員・公務員など雇用保険に加入して働く人にとってどのくらい負担が増えるのでしょうか?

改正後の雇用保険料はいくら?シミュレーション

改正後の雇用保険料率は以下の通りと言われています。

 労働者事業主
一般の事業
失業等給付に係る雇用保険料率
0.6%
(改正前:0.5%)
0.95%
(改正前:0.85%)

雇用保険は「給与または賞与×雇用保険料率」で計算します。
例えば年収300万円の場合は、300万円×0.6%=18,000円です。(改正前は15,000円)
年間3,000円、月250円の負担が増えることになります。(一般事業の場合)

年収別の雇用保険料の負担額は以下の通りです。

年収改正後改正前
年収180万円月900円年10,800円月750円年9,000円
年収300万円月1,500円年18,000円月1,250円年15,000円
年収480万円月2,400円年28,800円月2,000円年24,000円
年収600万円月3,000円年36,000円月2,500円年30,000円

雇用保険料の端数は基本的に「50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げ」ですが、「1円未満はすべて切り捨て」など慣習的に端数処理をしている企業もあります。

雇用保険の負担は労働者にとっては年間数千円ですが、事業主にとっては従業員全員の雇用保険料が値上がりし負担が増します。

よって、雇用保険の要件である①1週間の所定労働時間が20時間以上、②31日以上の雇用見込みがあるという2点を満たさないように週の労働時間20時間未満の短時間労働者が増える可能性があります。

厚生労働省では社会保険の適用拡大を段階的に行っています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html

上記に加え2022年10月からは従業員数101人以上、2024年10月からは従業員数51人以上の事業所が対象となります。

雇用保険料とあわせて、アルバイト・パートなどで働くかたはチェックしておきましょう。

雇用保険の失業給付とは

今回引き上げになる雇用保険の失業給付(基本手当)は、雇用保険の被保険者が、定年・倒産・契約期間の満了などにより離職した際に、失業中の生活を保障し再就職を支援するものとして支給されます。

基本手当の給付日数は、離職者の年齢・被保険者であった期間・離職の理由などによって決まり、90日~360日の間となっています。

特に倒産・解雇などで再就職の準備が厳しい状況で離職したかたは「特定受給資格者」として一般の離職者より給付日数が長くなる可能性があります。

期間の定めのある労働契約が更新されなかった、妊娠・出産・育児により離職したなど正当な理由で自己都合により離職した人は「特定理由離職者」として特定受給資格者と同様に給付日数が延びることがあります。

基本手当だけではなく、就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付・育児休業給付も一定の要件を満たす際に受給できます。

失業手当はいざという時に再就職に向けて金銭的な支援を受けられる制度です。
給与から天引きされていると「引き上げ・引き下げに気づかなかった」「そもそも制度をよく知らなかった」というかたは多いでしょう。

自身が失業手当を受け取る時のためにも、雇用保険料や社会保険料に関して知っておきましょう。

雇用保険料引き上げの原因は給付金などによる積立金の減少

今回の雇用保険料引き上げは、雇用調整助成金の特例措置により給付がふくらんだことと失業手当の増加により積立金が減少したことです。

もともと2022年の激変緩和措置として緩和されていた雇用保険料が元の料率に戻るため「引き上げで生活が切迫される」というケースは少ないと想定されます。

この記事で雇用保険や社会保険適用拡大について知り、今後に活かしていきましょう。

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