海外移住すると年金はどうなる?
海外移住する前にした方がいい手続きは?
海外移住を検討されている方は、日本で必要な手続きを済ませてから渡航するのが無難です。
そのまま放置していると知らない間に滞納扱いとなり、将来の年金受給やビザの取得などに悪い影響がでかねません。
また渡航先の国にも社会保障制度が設けてあり、人によっては二重払いなども考えられます。
そのため、これから海外移住を行われる方は、十分な公的年金に関する知識を身につけた上で、ご自身の状況にあった選択を行う必要があるでしょう。
この記事では海外移住を行う際に、必要な公的年金の知識や具体的な手続き等に関して、初心者の方にも分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、海外移住に伴う公的年金の悩みに関して、スッキリ解消できるはずです。
海外移住される方は、必要な年金の手続きを済ませてから渡航しましょう。
海外移住すると公的年金はどうなる
海外移住を行うにあたり、日本の住民票を抜くかどうかによって、ご自身の公的年金の扱いが異なります。
仮に日本の住民票はそのままにして海外移住した場合、公的年金は強制加入ですので継続して保険料を支払う必要があります。
支払った期間は、そのまま将来の受給額にプラスに影響しますので、預金口座からの引き落とし設定にするか、ご家族に代行して支払ってもらいましょう。
対して、日本の住民票を抜いてから海外移住する場合、公的年金の保険料の支払い義務はなくなり、任意加入が認められるようになります。
任意なので文字通り、必要ないと考えている方は無理に支払うことはありません。
海外移住したとしても、条件を満たしていれば公的年金の受給は可能です。
加入期間が10年未満の方は任意加入を検討する
公的年金を将来受給するためには、最低でも10年以上の保険料納付済等期間が必要になります。
保険料納付済等期間とは、国民年金保険料を支払った期間をさし、厚生年金や共済組合の支払いや、第3号被験者の期間等も含まれます。
条件が満たされていないと将来年金が受給できないため、海外移住する前にご自身の年金の加入記録を確認しておきましょう。
年金の加入記録に関しては、日本年金機構が運営するサービス「ねんきんネット」で、簡単に確認可能です。
マイナンバーカードを既にお持ちの方は、簡単にログインできます。利用登録が済んでいない方は、この機会に行なっておくとよいでしょう。
これから海外移住を行われる方で、保険料納付済等期間が10年未満かつ住民票を抜く場合は、任意加入を検討すべきです。
保険料納付済等期間には、保険料を免除されていた期間も含まれます。
海外口座に年金の入金を行う際はUSDで行われる
必要な手続きを行えば、年金を海外の銀行口座で受け取れます。
海外の銀行口座への振り込み手続きの詳しい概要に関しては、日本年金機構の公式サイトに記載せれていますので、一度確認してみてください。
ご自身での手続きが難しい場合は、行政書士に依頼して代理申請してもらうことも可能です。
その場合は別途、代理申請費用が発生しますのでその点を考慮した上で、判断するようにしましょう。
また日本の年金を海外の銀行口座に振り込む場合は、基本的にUSD(アメリカ・ドル)に換算して入金されます。
ただし、海外の銀行口座に年金を振り込む場合は、円為替取扱手数料(リフティングチャージ)が発生します。
海外の銀行口座で受け取りたい方は、年金の支払日の前々月末日までに申請しましょう。
日本と海外の二重払いに関する注意事項【社会保障協定】
海外で働く場合、移住先の国の社会保障制度に加入しなければいけません。
日本で加入しているのに海外でも加入してしまうと、保険料の二重払いになってしまうため、対策として日本は諸外国と社会保障協定を結んでいます。
社会保障協定の目的は、保険料の二重払いを防ぐと共に、両国の加入期間を通算して将来の年金受給額に反映させる狙いがあります。
協定相手国としては、以下の通りです。
ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル
スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィリンランド、スウェーデン
社会保障協定を適応させるためには、手続きが必要になります。
ご自身の状況を踏まえた上で、手続きが必要な方は早めに済ませておくのが無難でしょう。
会社員の方は勤めている会社の担当者に相談し、個人事業主の方は最寄りの行政機関(市役所など)に相談するのがおすすめです。
また過去に社会保障協定に該当する国で働いていた経験がある方も、遡って申請が可能です。
保険料の二重払いは、申請すれば防げますので忘れないようにしましょう。
海外移住するとiDeCo(イデコ)の掛金追加ができなくなる
iDeCo(個人型確定拠出年金)に既に加入されている方で、日本の住民票を抜いて海外移住される場合は、iDeCoへの掛金追加ができなくなります。
既にiDeCoで運用されている掛金は、海外移住したとしてもそのまま継続運用できます。
海外移住者がiDeCoを続ける方法としては、海外転勤で日本企業に勤めている状態で、厚生年金保険に継続加入している場合のみです。
その他の場合は、iDeCoへの継続的な掛金追加ができません。
ただし、数年後に日本へ戻る予定がある方は、必要手続きを行うことで掛金追加の再開ができますので、この点も踏まえた上で検討すべきです。
海外移住する方の大半は、iDeCoの継続的な掛金追加は難しいでしょう。
海外移住の際に住民票を抜くメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・住民税の支払い義務がなくなる ・国民年金の支払い義務がなくなる ・国民健康保険の支払い義務がなくなる ・免税店で消費税の免税が受けられる | ・確定拠出年金の加入資格が喪失する ・日本の証券会社や銀行等の取引が停止する ・日本の社会保障制度が対象外になる |
海外移住を行う際に住民票を抜くかどうか悩まれている場合は、メリットやデメリットを十分把握した上で判断すべきでしょう。
住民票を抜いている間は、住民税や国民年金、国民健康保険等の支払い義務がなくなりますが、希望者に関しては任意加入が可能です。
また免税店などではパスポートを提示すれば、消費税が免税されます。
対して住民票を抜くデメリットとしては、iDeCo等の確定拠出年金が停止してしまう他、証券会社や銀行等の取引も行えなくなります。
加えて、海外移住してしまうと日本の社会保障制度が対象外となり、これまでのように利用できません。
国民年金と国民健康保険は、海外移住を行なっても任意加入が可能です。
海外移住する際の年金等に関するよくあるQ&A
海外移住する際の年金などに関する多くの質問や悩み等の中から、特に多かった内容だけに絞って、分かりやすく回答をまとめてみました。
海外移住を検討されている方は、日本での必要な手続きを済ませた上で渡航しましょう。
Q.住民票を抜いた場合、国庫負担分の半額は支払われますか?
住民票を抜いて海外移住した場合は、本人が任意加入していない限り、国庫負担分の半額が支払われることはありません。
支払い免除扱いであれば国庫負担分の半額は自動的に支払われますが、住民票を抜いた場合は免除に該当しません。
ただし、カラ期間(合算対象期間)には含まれますので、公的年金の資格を数える期間には含まれます。
Q.過去に年金の滞納があると、ビザ申請に影響がありますか?
直近2年間の間に税金や年金等の滞納歴があると、ビザの申請に影響します。
特に永住ビザの申請を行なわれる方は、マイナス材料として判断されますので注意が必要です。
申請する前にご自身で直近2年間の見直しを行い、滞納していた場合は追納するなどして対処しましょう。
Q.海外で年金だけで生活するのは可能ですか?
結論からいって、年金だけで海外生活を行うのは難しいでしょう。
東南アジアで現地の人たちと同じような生活環境で暮らすのであれば、日本から受け取る年金だけで生活するのは可能です。
ただこれまで日本で生活してきた人が、いきなり現地の人たちの生活レベルまで落とすのは難しく、とてもではありませんが年金だけでは不十分です。
年金の受給額も年々減少傾向にあるため、年金の他にも収入源を確保しておく必要があります。
Q.なぜ日本で海外移住が流行っているのでしょうか?
海外移住の目的は人によって様々ですが、理由としてよく挙げられているのは労働環境の違いや、子供の教育環境の違いです。
日本の労働環境はお世辞にも海外と比較して良いとはいえず、未だに長時間労働やパワハラ等が当たり前のように行なわれています。
対して海外では働きやすい環境が整っており、根本的に仕事よりもプライベートを重要視しています。
ヨーロッパ諸国では時期により毎年ロングバケーションが設けてあり、1ヶ月間の長期休暇などは日本の会社員からしたら考えられません。
また子供の教育環境に関しても海外では英語はもとより、その他にもさまざまな言語を習得できる環境が多いです。
日本の教育環境で育った子供たちは、大人になってから本気で語学学習に取り組む人が多いですが、海外で育った人と比べるとその差は歴然です。
Q.海外移住するよりも、日本の田舎に移住した方が生活費は安いですか?
生活費だけで考えると海外移住するよりも、日本の地方へ移住した方が安く済みます。
地方移住を行う場合、最近は空き家バンクなどのサービスもある他、地方移住者に対して補助金や支援金等も出されています。
上手く既存の制度を活用すれば、地方移住は費用をそれほど掛けずに行えます。
対して海外移住の場合ですと、最初から最後まで全てご自身で判断し手続き等を行う必要がある他、初期費用もそれなりに掛かるでしょう。
当然、地方移住とは異なり補助金や支援金等の制度はありません。
海外移住を検討されている方の中には、お金とビザの問題に直面し、途中で諦めてしまう人も意外に多いです。
まとめ
海外移住を検討されている方は、年金に関してどうするかしっかりと検討した上で、日本で必要な手続きを済ませてから渡航するようにしましょう。
住民票を抜くかどうかによっても年金の扱いが異なりますので、その点も十分考慮した上で判断すべきです。
また海外でも年金の受け取りは可能ですので、仮に海外の銀行口座で受給される際には、早めに必要な手続きを行なっておきましょう。
ご自身での手続きや判断が難しい場合は、FPや行政書士等の専門家に一度、相談してみることをおすすめします。
海外からの手続きは面倒なので、行政書士等に代行してもらうのも一つの手段です。
コメント