高額療養費制度とは?申請方法や注意点を紹介

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高額な医療費を支払うときに、医療費負担を軽減するための制度があることをご存じでしょうか。

高額療養費制度は、1ヶ月に支払う医療費が高額にならないよう、自己負担上限額を超える費用が払い戻される制度です。

ただし、高額療養費制度を活用するには、制度内容を理解したうえで2年以内に申請しなければなりません。

高額療養費制度の申請方法や注意点も合わせて紹介するので、医療費に負担を感じている方や、これから高額な医療費が必要となる方は、ぜひ参考にしてください。

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高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、1ヶ月に支払う医療費に上限を設けて、家計負担を軽減するための制度です。

制度利用時に申請が必要であることが一般的ですが、加入している健康保険によっては申請が不要なケースもあります。

高額療養費制度は、複数の医療機関で支払った医療費であっても、同じ月であれば合算できます

また以下の要件を満たした場合は、家族の医療費を合算することも可能です(世帯合算)。

  • 同じ健康保険に加入している
  • 自己負担額2万1,000円以上(69歳以下の場合)

なお、1〜末日が対象期間であるため、たとえ1週間の入院であっても月をまたいだ医療費は対象にならないので注意しましょう。

所得や年齢によって自己負担上限額が異なる

自己負担上限額は、以下のように所得や年齢によって異なります。

〈69歳以下の場合〉

適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円〜252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円57,600円
住民税非課税者35,400円

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」

〈70歳以上の場合〉

70歳以上の場合は、外来だけの上限額も設けられています。

適用区分ひと月の上限額
外来(個人)外来・入院(世帯)
現役並み年収約1,160万円〜252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般年収156万~約370万円18,000円
(年14万4,000円)
57,600円
住民税非課税等Ⅱ 住民税非課税世帯8,000円24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」

なお、自己負担上限額が上表と異なる健康保険や、独自の医療費助成制度がある自治体もあります。

医療費の負担をさらに抑えるためにも、健康保険や自治体のホームページや窓口で確認してみましょう。加入している健康保険は、保険証で確認できます。

1年間に3回以上の支給を受けると自己上限額が少なくなる

高額療養費を過去12ヶ月以内に3回以上利用した場合、4回目以降から自己負担がさらに軽減されます(多数回該当)。

ただし、転職したり扶養から外れたりした場合など、途中で健康保険が変わると多数該当の適用対象外となるケースがあるので注意が必要です。

〈69歳以下の場合〉

適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)多数回該当
年収約1,160万円〜252,600円+(医療費-842,000)×1%140,100円
年収約770~約1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%93,000円
年収約370~約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%44,400円
~年収約370万円57,600円44,400円
住民税非課税者35,400円24,600円

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」

〈70歳以上の場合〉

適用区分ひと月の上限額
外来・入院(世帯)
多数回該当
現役並み年収約1,160万円〜252,600円+(医療費-842,000)×1%140,100円
年収約770~約1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%93,000円
年収約370~約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%44,400円
一般年収156万~約370万円57,600円44,400円
住民税非課税等Ⅱ 住民税非課税世帯24,600円適用なし
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」

70歳以上は外来による上限額が設けられています。また、適用区分が「住民税非課税等」の場合は、多数回該当の適用が受けられないので注意しましょう。

高額療養費制度の注意点

高額療養費制度には、適用対象外となる費用や申請期限があります。ここからは、高額療養費制度を利用する際の注意点を詳しく紹介します。

受給まで3ヶ月以上かかる

医療機関が健康保険へ提出する診療報酬の請求書(レセプト)の確定までに一定期間がかかるため、払い戻しまで3ヶ月以上かかります。

ただし、医療機関窓口で「限度額適用認定証」と保険証を合わせて提示すれば、窓口負担を1ヶ月分の上限額に抑えられます

医療費が高額になることが事前にわかるのであれば、健康保険へ交付申請をしておきましょう。

なお、医療費の支払いが難しい場合に「高額医療費貸付制度」を利用すると、払戻金額の一部を無利子で借りられます。

貸付金額や利用条件は健康保険によって異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

食事代や差額ベッド代、先進医療は対象外になる

以下のような保険適用外となる費用は、高額療養費制度の支給対象外となります。

  • 入院時の食事代(一般的に1食あたり460円)
  • 差額ベッド代(個室等を希望する場合)
  • 先進医療にかかる費用
  • 入院時の日用品代
  • 通院時の交通費

高額療養費を申請する際は、支払った費用から保険適用外の医療費を差し引いて申請しましょう。

診療から2年以上経過すると支給が受けられない

高額療養費制度では、過去に支払った医療費でもさかのぼって申請できます。

ただし、受診月の翌月の初日から2年を経過すると受給できないので注意しましょう。

高額療養費制度の利用方法

高額療養費制度の利用方法には、事前申請と事後申請の2種類があります。

窓口負担を減らしたい場合は事前申請を利用し、予期せぬ医療費がかかった場合は事後申請で医療費の払い戻しを受けましょう。

窓口での負担額を減らしたい場合(事前申請)

医療機関窓口での自己負担を抑えるには、保険証と合わせて「限度額適用認定証」の提示が必要です。

限度額適用認定証が届くまでには1週間程度かかるのが一般的ですが、健康保険によっては1週間以上かかるケースもあります。

計画的な入院など、医療費が高額になることが想定できる場合は、事前に交付申請をしておきましょう。

交付申請は、健康保険が用意している申請書に必要事項を記入後、郵送またはWeb申請することで完了します。

自己負担上限額以上の医療費を支払った場合(事後申請)

医療機関窓口で上限額以上の支払いをした場合は、健康保険に払い戻しの申請を行いましょう。

申請方法や必要書類は、健康保険によって異なるので、不明点がある場合は加入している健康保険に確認しましょう。

一部の医療機関では限度額適用認定証の提示が不要

医療機関窓口での自己負担額を抑えられる限度額適用認定証ですが、オンライン資格確認システムが導入されている医療機関では提示不要となります。

オンライン資格確認システムとは、被保険者の健康保険や適用される自己負担上限額などの情報をオンライン上で確認できるシステムです。

マイナンバーもしくは健康保険証を提示し、本人確認が完了すると被保険者情報が確認できます。

医療機関がシステムを導入しているかは厚生労働省ホームページで確認しましょう。

ただし以下のケースでは、医療機関窓口での限度額適用認定証の提示が必要となるので注意が必要です。

  • 国民健康保険料を滞納している
  • 直近12ヶ月の入院日数が90日以上の住民税非課税世帯の方が、食事療養費の減額を受ける

高額療養費制度と医療費控除は併用できる

高額療養費制度と医療費控除は、どちらも高額な医療費を支払った場合に活用できる制度なので併用できます。

高額療養費制度と医療費制度の対象期間や申請方法等は、以下のように異なります。

高額療養費制度医療費控除
概要自己負担上限額を超える医療費負担が軽減される制度所得税や住民税の負担が軽減される所得控除
対象期間の医療費1ヶ月(1〜末日)1年間(1/1〜12/31)
対象範囲保険適用の医療費や医薬品費治療目的の医療費や医薬品費、交通費
申請先加入先の健康保険税務署または自治体
申請方法健康保険による確定申告または住民税申告

なお、確定申告で医療費控除を受ける場合は、高額療養費制度で払い戻される医療費を除いて申請する必要があるので注意が必要しましょう。

医療費控除の計算方法や対象費用については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて確認してください。

自己負担上限額を超える医療費は高額療養費制度を活用しよう

高額療養費制度を活用すると、自己負担上限額を超える医療費の払い戻しを受けられたり、窓口での支払額を抑えられたりします。

医療費負担を軽減させるためにも、制度内容や申請方法を理解しておくことが大切です。

すでに高額な医療費を支払った方や、これから医療費がかかる見込みがある方は、高額療養費制度を活用しましょう。

高額療養費制度の利用方法にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士

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