失業保険とは、雇用保険に加入している方が失業状態になったときにもらえる給付金です。
失業保険を受け取るには要件があり、受給できる期間や金額は人によって異なります。
失業中の不安を軽減させるためにも、失業保険の給付要件と受給金額などのポイントを押さえておくことが重要です。
そこで今回は失業保険の受給要件や給付日数、給付額を解説します。
受け取るまでの流れもまとめているので、受給を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
失業保険とは?
失業保険とは、雇用保険に加入している方が失業状態となった場合に受け取れる給付金で、基本手当とも呼ばれます。
失業状態は、働く意思と能力があるにも関わらず、職に就いていない状態を指します。
まずは、失業保険の受給要件や給付日数、給付額を詳しく見ていきましょう。
受給要件
失業保険は原則、離職前の2年間に雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上ある方が受け取れます。
ただし、倒産や解雇など自己都合以外の場合は、離職前の1年間に加入期間が6ヶ月以上あれば受給できます。
雇用保険の加入状況は、会社もしくはハローワーク(公共職業安定所)で確認しましょう。
給付日数
失業保険の給付日数は、離職に至った理由や雇用保険の加入期間、年齢に応じて異なります。
自己都合や定年退職の場合は、以下の通りです。
加入期間 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
倒産や解雇など会社都合による場合の給付日数は、以下の通りです。
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上 60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
なお、令和4年4月から施行となった「雇用保険法等の一部を改正する法律」により、雇止めによる離職者の給付日数が延長される場合があります。
自身が基本手当の給付日数延長の対象となるかは、ハローワークで確認しましょう。
給付額
失業保険の給付額は、離職前の6ヶ月間における賃金日額の45~80%とされています。
具体的には以下の流れで受給総額を計算します。
- 賃金日額=退職6ヶ月前の賃金総額÷180日
- 基本手当日額=賃金日額×給付率(45~80%)
- 受給総額=基本手当日額×所定給付日数
給付率は賃金日額と年齢に応じてハローワークが算出します。
なお、基本手当日額は以下のように上限額と下限額が定められています。
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
29歳以下 | 6,835円 | 2,125円 |
30~44歳 | 7,595円 | |
45~59歳 | 8,355円 | |
60~64歳 | 7,177円 |
38歳で離職した場合、基本手当日額が8,000円であっても、上限額の7,595円として計算します。
失業保険のもらい方
失業保険を受給するには、ハローワークで手続きをする必要があります。
ここでは、失業保険を受給するまでの流れを紹介します。
1.必要書類を準備する
失業保険の申請は、以下の書類が必要です。
- 雇用保険被保険者離職票
- マイナンバーがわかる書類(マイナンバーカードなど)
- 身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 証明写真(縦3cm×横2.4cm)×2枚
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
基本的に雇用保険被保険者離職票は、会社から受け取ります。
会社によって退職者全員に発行する場合や希望者のみに発行する場合など、対応方法はさまざまです。
自身の会社がどのような方法で発行してくれるかは、事前に確認しておきましょう。
2.ハローワークに行く
必要書類を持参して、現住所を管轄するハローワークに行き、以下の手続きを進めます。
- 必要書類の提出
- 求職の申し込み
- 雇用保険受給者初回説明会への参加申し込み
3.雇用保険受給者初回説明会に参加する
雇用保険受給者初回説明会には、申込時に渡される「雇用保険受給資格者証のしおり」と筆記用具を持参します。
説明会に参加すると雇用保険被保険者証と失業認定申告書をもらえます。
失業保険をもらう際に必要な書類となるので、紛失しないように注意しましょう。
4.失業の認定を受ける
指定された日にハローワークに行き、失業認定申告書に求職活動の状況などを記入し、雇用保険被保険者証とあわせて提出します。
認定の対象となる求職活動の範囲は以下の通りです。
- 求人への応募(求人サイトでの応募も含む)
- ハローワークが実施する職業相談や職業紹介を受ける
- ハローワークの講習やセミナーを受講する
なお、ハローワークやインターネットで求人を閲覧するだけでは、求職活動と見なされません。
失業保険をスムーズに受け取るために、どのような活動が該当するかを事前に把握しておきましょう。
5.失業保険を受け取る
失業保険は、失業の認定を受けた日から5営業日後に振り込まれます。
その後は基本的に再就職先が決まるまでは、認定と受給を繰り返しながら求職活動を進めることになります。
ただし、所定の給付日数を超えると、転職先が決まらなくても受給できないので注意しましょう。
失業保険を受け取る際の注意点
失業保険の受給を検討している方は、以下の注意点を押さえておきましょう。
- すぐに就職できない状態のときは受け取れない
- 受給中のアルバイトには注意が必要
- 失業保険の受給中でも社会保険料を負担しなければならない
それぞれ詳しく紹介します。
すぐに就職できない状態のときは受け取れない
失業保険の対象となる失業者とは「就職する意志と能力があるにも関わらず、再就職先が見つからずに求職活動をしている人」を指します。
そのため、以下のようにすぐに働けない状態である場合は失業保険を受け取れません。
- 病気やケガを理由にすぐに就職できない
- 妊娠や出産、育児のためにすぐに働けない
- 結婚などを機に家事に専念したいため、すぐに就職できない
ただし、以下のような正当な理由により働けない状態が30日以上続いた場合は、失業保険の受給期間を延長できます。
- 病気やケガ
- 妊娠や出産
- 親族の介護 など
ハローワークで申請することで受給期間延長が適用されるので、該当する方はハローワークで確認してみましょう。
受給中のアルバイトには注意が必要
失業保険受給中のアルバイトや副業は禁止されていません。
ただし、31日以上の雇用が見込まれる職場での労働時間が週20時間以上を超えるケースなど、就職状態に該当する場合は受給資格を失ってしまいます。
仮に就職状態と判断されなくても、働いた日数や収入額に応じて給付額が減少することも考えられるでしょう。
なお、アルバイトや副業の申告を怠ると不正受給と見なされ、支給停止や返還といった罰則の対象となる可能性があります。
失業保険以外の収入がある場合は、噓偽りなく失業認定申告書に記載したうえで、必ずハローワークに提出しましょう。
失業保険の受給中でも社会保険料を負担しなければならない
基本的に失業保険の受給中でも、社会保険料は負担しなければなりません。
失業中の健康保険には、以下の3つの選択肢があります。
- 任意継続保険を使う
- 国民健康保険に加入する
- 配偶者の扶養となる
配偶者が加入している健康保険の被扶養者になると、健康保険料の負担がなくなります。
ただし、失業保険の受給額によっては扶養に入れない可能性があるので、加入している健康保険の扶養条件を確認する必要があります。
国民健康保険では、軽減措置の適用が受けられる自治体があるため、保険料の納付が難しい場合は窓口やホームページで確認してみましょう。
また、国民年金にも保険料免除制度や納付猶予制度が設けられています。
この制度を利用すると保険料の負担が軽くなりますが、免除されていた期間に応じて受給年金は減額されます。
将来もらえる年金額を減らしたくない場合は、10年以内に追納することも視野に入れておきましょう。
転職先が早く決まると再就職手当がもらえる
失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、転職先が決まると再就職手当がもらえる可能性があります。
再就職手当の受給金額は「支給残日数×給付率×基本手当日額」で算出し、支給残日数によって異なります。
- 支給残日数が3分の2以上:70%
- 支給残日数が3分の1以上:60%
このように早く再就職すると給付率が高まり、より多くの手当をもらえます。
支給要件はいくつかあるため、詳しくは再就職手当のご案内もしくはハローワークで確認しましょう。
失業保険を受給したい場合はハローワークに相談しよう
失業保険は、雇用保険の加入者が失業状態となった際にもらえる給付金です。
給付日数や金額は人によって異なるため、詳しくはハローワークに相談してみましょう。
なお、失業保険の受給中はアルバイトの申告や社会保険料の負担など、押さえておきたい注意点もあります。
失業保険がもらえる要件や離職中の社会保険制度にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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