2024年から相続登記が義務化。相続登記を簡易化できる新制度も

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2021年4月に、所有者不明土地問題の解決を目的とした法改正と新法創設が成立しました。

よって2023年から相続した不要な土地を国庫に帰属できる相続土地国庫帰属制度と土地利用に関する改正民法の新制度が開始となり、2024年から相続登記が義務化となります。

将来相続の予定がある方、相続した土地をまだ登記されていない方にとっては身近な問題となります。

相続登記が義務化されると一体どうなるのでしょうか?

法改正と新法創設により一体何が変わるのでしょうか?

本記事では、相続登記の義務化について、相続土地国庫帰属法創設と民法一部改正により一体何が変わるのか、現在の相続登記の手順と簡易化される相続登記の申請制度の比較を解説していきます。

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相続登記の義務化は2024年から。他の制度改正も

これまで相続登記は任意で行われていましたが、不動産登記法の一部改正が2021年4月に成立・公布され、2024年から相続登記・住所変更登記が義務化されることになりました。 

2024年から制度が開始予定ですので、3年間の猶予期間があります。

改正後の不動産登記法第76条は「不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける。」となり、同法164条で「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10 万円以下の過料に処することとする。」と規定されます。

法務省では相続登記を義務化すると共に、登記制度を簡易化する新たな制度を設ける予定です。

相続登記義務化の背景には、登記が行われてないことによって共有関係にある土地の利用や管理に支障をきたす、土地の荒廃により近隣の住民に損害があった時に対応できないなどの問題点がありました。

高齢化の影響により被相続人(財産を遺して亡くなる方)・相続の件数は年々増加しており、相続時の未登記も増加すると予測される中、今回の法改正が成立となりました。

相続登記の義務化の他には民法の一部改正、相続土地国庫帰属法の創設が決定しています。

相続土地国庫帰属制度と民法一部改正とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続・遺贈により得た土地を法務大臣の承認を受け、所有権を国庫に帰属できる制度で2023年に開始予定です。

相続人にとっては不要な土地を管理せずに済むというメリットがあります。

ただし対象となる土地は法務大臣(法務局)が設けた要件を審査し、承認された際に受け付けられます。

制度を利用する際には「土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する」という規定により負担金を納める義務が生じます。

負担金額は土地の面積や周辺環境など状況に応じて政令で規定される予定です。

民法の一部改正による管理制度の創設

所有者不明の土地に関する民法の見直しには、ライフラインの設備の設置・使用権に関する規律の整備、越境した竹木の枝の切取りに関する改正などがあります。

財産の管理に関する制度も改正があり「所有者不明土地・建物管理制度」「管理不全土地・建物管理制度」が創設されることになりました。

現行の制度で所有者が不明である土地は、利害関係者(被害を受けている近隣住民など)が「不在者財産管理人制度」を利用し土地を含む不在者の財産全ての管理を申し立て、家庭裁判所が選任した「不在者財産管理人」が管理を行います。

ただしこの制度では土地だけではなく財産全般の管理を行うため財産管理が非効率となり、場合によっては、申立人が財産管理に必要な費用(予納金)を支払わなければならないというデメリットがありました。

改正後の民法では、特定の土地・建物のみをする所有者不明土地・建物管理制度を創設し、管理人に適している者(弁護士、司法書士、土地家屋調査士等)を事案に応じて選任、管理業務を行います。

加えて所有者が適切な管理を行わず、荒廃・老朽化した結果危険を生じさせる管理不全の土地・建物に管理人による管理を命ずる管理不全土地・建物管理制度が創設されます。

管理不全土地・建物の管理についての利害関係がある人が家庭裁判所に申し立てを行い、管理の必要性が認められる場合に管理命令が発令・管理人が選任されます。

現在の相続登記の手順と新しい「申告登記制度」を比較

相続登記の義務化に伴い、手続きを簡易化する「申告登記制度」が創設されます。

申告登記制度の創設によって、従来の相続人にとって煩雑な手続きである相続登記の手間を省き相続登記を促進させるという狙いがあります。

現在の相続登記の手順と、新制度にはどのような違いがあるのでしょうか?まずは現行の相続登記の手順を見ていきましょう。

  • 必要書類を集める
  • 法務局に申請
  • 登記完了

1.必要書類を集める

相続登記の必要書類は遺言書、遺産分割協議など相続の証書や被相続人との関係によって異なります。

例えば遺言書によって相続を行う場合には主に以下の書類が必要となります。


• 申請書
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
• 遺言書
• 検認済証明書※
• 遺言書情報証明書(法務局で保管されている場合)
• 被相続人が亡くなったことが確認できる戸籍謄本または住民票(本籍・筆頭者記載)
• 申告者全員の住民票または戸籍の附票

※検認は自宅など身近な場所に保管されていたケースで必要となり、法務局・公証役場に保管されている場合に手続きは不要です。

不動産の価額に応じた登録免許税を納める義務がありますが、相続した土地で一定の条件を満たす場合には免除されます。

2.法務局に申請

不動産の所在地にある法務局で手続きを行います。申請方法は、オンライン・郵送・窓口へ持参という3つの中から申請者が選択可能です。

法務局へ持参する場合には、開局時間である平日の午前8時30分から午後5時15分の間に窓口へ行きます。

オンライン申請は平日の午前8時30分~午後9時まで可能で、初めて利用する方は「登記・供託オンライン申請システム」に申請者情報を登録、申請用総合ソフトのインストールを行い手順に沿って申請情報を作成、添付情報を添付し手続きを行います。

登録免許税はインターネットバンキング・ATMで支払い可能です。

オンラインで書類を添付できない場合、郵送又は法務局に持参する事になりますので注意しましょう。

郵送により申請する場合は、申請書や必要書類を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便で送付します。

3.登記完了

法務局に承認を登記が完了です。証明書を取得する際には以下の手数料がかかります。

書類請求方法手数料額
登記完了証オンライン申請の場合は電子公文書として交付無料
登記事項証明書書面請求オンライン請求・送付600円500円
登記識別情報に関する証明書面請求/オンライン請求・交付300円

「相続人申告登記」により簡易化

上記のように相続登記には手間や費用がかかりますが、不動産登記法改正により「相続人申告登記制度」が創設され、手続きが簡素化される予定です。

相続人登記申告制度では、相続人自身が不動産を受け継ぐことを申請義務の期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされます。

申し出を受けた登記官は、審査を行い、相続人の氏名・住所などを職権で登記情報に記録します。

相続人が複数いる場合には代表の相続人が単独で申し出ることが可能で、添付書類は相続人が被相続人(名義人)の相続人であることが分かる戸籍謄本のみとされています。

手続きの簡素化によって相続人の負担が減り、未登記の不動産が減る事が期待されています。

まとめ

2024年から相続登記が義務化され、同時に「相続人申告登記制度」がスタートする予定です。

他には相続土地国庫帰属制度・所有者不明土地・建物管理制度・管理不全土地・建物管理制度などの新制度も2023年から開始予定です。

この記事を参考に法改正による変更点や新制度について知り、実際の場面に活かしていきましょう。


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