相続放棄した空き家でも管理責任がある?知っておきたい空き家の相続放棄

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少子高齢化に伴い空き家の数は年々増加しており、親が空き家を残し亡くなったため相続を放棄する人も増えています。

空き家などの相続財産は相続人全員が相続放棄した場合は管理義務が残りますので、相続を放棄する予定の方は注意が必要です。

そもそも相続放棄は被相続人(亡くなった方)の相続財産全てを放棄するため、他に相続財産がある際には慎重に検討する必要があります。

相続人になった時、相続にはどのような選択肢があるのでしょうか?
相続を放棄しても管理義務がある時には一体どうしたら良いのでしょうか?

本記事では相続と相続放棄の概要、空き家の相続放棄の現状、管理義務が残った場合の対処法3つを解説していきます。

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相続放棄とは?相続の選択肢は3つ

相続放棄とは被相続人(相続財産を残して亡くなった方)が亡くなった時に相続財産の全てを放棄することです。

相続には単純承認・限定承認・相続放棄という3つの選択肢があります。

相続人が「被相続人が亡くなったことを知った日」に相続開始となり、限定承認・相続放棄を希望する方は3ヶ月以内に家庭裁判所に必要書類を添えて申し立てます。

限定承認は相続財産のうち、債務や借金がどのくらいあるかわからない時に利用される方法で、相続人はプラスの財産(預貯金・自動車・家財道具などの動産)の範囲内でマイナスの財産(債務・借金・ローンなど)を引き継ぎます。

相続放棄は、被相続人のプラス・マイナス全ての相続財産を放棄することになりますので、慎重に検討を行いましょう。

限定承認・相続放棄の申し立てを行わなかった時には、自動的に相続を承認した(単純承認)とみなされます。

空き家の数は年々増加。相続放棄を行うケースとは

総務省・統計局が公表している「平成30年住宅・土地統計調査」によると、空き家の数は年々増加し総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と過去最高を記録しています。

空き家の増加に伴い政府は2015年(平成27年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。

同法によって空き家活用や財政上・税制上の措置に関する施策を実施、自治体の判断によって倒壊といった危険性・不衛生・地域の景観を損ねる空き家は「特別空家等」と指定されることになりました。特別空家等は助言・勧告・命令を経て処分されてしまう事例があります。

「住んでいた親が亡くなり空き家になった」「遠方に住んでおり家の管理ができない」などのケースで、不動産の価値が低く売却しても仲介手数料・登記費用などで赤字になってしまう時に「相続放棄」を検討する方が増えています。

また被相続人が住んでいた家にローンが残っており、売却価格の相場をローン残債が上回る「オーバーローン」の状態は資産価値がマイナスとなります。

被相続人に借金・債務などがあり、空き家の価額を足しても総額がマイナスとなってしまう際にも相続放棄を行う方が多いです。

空き家を相続放棄するケースは以下の4つが想定されます。

  • 相続財産はほぼ空き家のみで、空き家の価値が低い
  • 空き家にローンが残っておりオーバーローン
  • 被相続人に借金・債務があり空き家と合わせても相続財産の総額がマイナス
  • 何らかの事情で被相続人の相続財産を受け継ぎたくない

相続放棄を行った空き家はどうなるのでしょうか?

相続放棄しても空き家の管理義務は残ることがある

相続を放棄した空き家は他の相続人が相続することになります。
相続放棄をした相続人は「始めから相続人ではなかった」とみなされますので、他の相続人の順位・割合などが変更になる可能性があります。

相続の順位被相続人との関係
常に相続人となる配偶者
第1順位子供子供が亡くなっている時は孫
第2順位第1順位の人がいないとき相続人となる父母父母が亡くなっている時は祖父母
第3順位第1順位・第2順位の人がいないとき相続人となる兄弟姉妹兄弟姉妹が亡くなっている時は甥・姪

問えば被相続人に子供がおり、子供が相続放棄をした場合父母が相続を行います。相続放棄の手続きを行った際には代襲相続人(代わりに相続する人)である孫も相続の権利を失います。

相続した人が管理の義務を負いますが、「1人しかいない相続人が相続放棄した」「全員が相続を放棄した」などのケースでは相続放棄の手続きを行っても空き家の管理をしなければなりません。

民法940条には管理について以下の規定があります。

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

相続を放棄してもなお空き家の管理をしなければならないのでしょうか?

相続放棄した空き家の管理、どうすれば良い?3つの対処法

相続を放棄しても管理義務がある空き家の対処法は以下の3つです。

1.相続財産管理人を選任する

相続人全員が相続放棄を行った時には、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立て、管理人に相続財産を託すことで自身が管理を行わずに済みます。

相続財産管理人は、被相続人の債権者・利害関係者に債務を支払うなどの清算を行い清算後残った財産は国庫に帰属させます。

管理人は誰でも就任できますが、弁護士・司法書士などの専門家が選ばれることもあります。
なお相続財産の価額によっては、申立人が相続財産管理人への報酬を含む管理に必要な費用(予納金)を支払う事があります。

相続財産管理人制度は、相続財産全般を管理するため管理人にとって負担が大きくなる傾向があります。

また予納金が多くなり申立人に負担が大きいケースが問題視されていることから、2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」が創設されます。

2.相続土地国庫帰属制度の利用

相続土地国庫帰属制度とは、2021年度に成立・交付された「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」を基にした、相続・遺贈で取得した土地を国庫に帰属させる制度です。2023年4月に施行予定です。

制度を利用するためには、法務大臣(法務局)が定めた一定の要件を満たす必要があり、申請者が負担金を納付する必要があります。
要らない土地を国庫に帰属させることで、土地の管理義務を負わずに有効活用ができる可能性があります。

3.空き家バンクの活用

国土交通省・地方自治体の事業である「空き家バンク」は空き家を提供したい方と利用したい方をマッチングさせる制度です。

空き家バンクに登録することで、移住希望者や活用を考える方向けに主にインターネットで空き家の物件情報を公開できます。

まとめ

空き家を相続放棄しても、相続人が自身のみの場合や相続人全員が相続放棄したケースでは管理義務が残ります。

相続財産管理人制度、2023年4月にスタートする相続土地国庫帰属制度、さらには空き家バンクの活用で管理義務がある空き家に対処していきましょう。

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