離婚時の年金分割制度とは?方法や手続き・必要書類を解説

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離婚にあたって「結婚中は第3号被保険者だったけど、年金はどうなるの?」「年金分割の手続きについて知りたい」というかたは多いでしょう。

年金分割制度は、結婚中の厚生年金を今まで納めた保険料に応じてそれぞれのものとして分割できる制度です。

分割方法には合意分割制度と3号分割制度があり、3号分割制度は合意を得ることなく分割が可能です。

本記事では年金分割制度の概要、分割方法、手続きに必要となる書類や手順について解説していきます。

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離婚時の年金分割制度

年金分割制度は、婚姻期間中の厚生年金を分割してそれぞれの年金にすることができるものです。婚姻届を提出する法律婚だけではなく事実婚の関係でも分割が可能です。ただし、事実婚のかたは国民年金の第3号被保険者である場合に限られます。

年金分割の手続きをすることで、標準報酬(厚生年金の支給額の計算の基となる報酬額)の記録が分割され年金額を二人で分割できるようになります。

年金分割請求の期限は離婚(関係解消)の翌日から2年以内です。早めに分割の手続きを行いましょう。離婚前・離婚後どちらでも手続きは可能です。

厚生年金の分割とは

厚生年金は勤務先の企業・団体などが毎月の給料・賞与から被保険者負担分の保険料を天引きし事業主負担分の保険料を加えたものを、日本年金機構に納めています。

厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に保険料率をかけて計算します。事業主と被保険者が半分ずつ負担します。
厚生年金保険料率は2022年12月現在18.3%です。

標準報酬月額は1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までのうち自身の月給に該当するものです。

日本年金機構 「保険料額表 2020年9月からの厚生年金保険料額表(2021年度版)」より

例えば月給が28万円(18等級)の場合、自己負担額は25,620円です。

賞与額は、税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたものです。1度の支給につき、150万円が上限となります。

今まで納めた保険料に応じた厚生年金を2人で分割します。
具体的な金額は日本年金機構から送られてくるねんきん定期便やねんきんネットで確認しておきましょう。

年金分割の方法とは

分割の方法には、夫婦の一方が国民年金の第3号被保険者である際の「3号分割制度」と「合意分割制度」があります。

  • 合意分割制度
  • 3号分割制度

合意分割制度

離婚(または事実婚関係を解消)し、一定の条件を満たしたときには当事者の請求で厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を分割する方法を「合意分割」と呼びます。
要件は以下の3点です。

  1. 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  2. 当事者の合意または裁判手続きにより按分割合を定めたこと(合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます)
  3. 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと
    日本年金機構「離婚時の年金分割」より

合意分割を請求し、結婚中に3号分割の対象となる期間が含まれる際には合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
分割の割合は2人の合意もしくは裁判により決定した割合となります。

3号分割制度

3号分割制度とは、婚姻中に国民年金の第3号被保険者であったかたが請求し厚生年金保険料納付記録を2分の1ずつ分割できるものです。
分割される記録は、2008年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の記録に限られています。

婚姻姻期間中に2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間がある、請求期限を過ぎていないことが要件となります。

3号分割制度は2人が合意する必要はありません。

年金分割の手続き

年金分割の手続きの手順・必要書類についてお伝えしていきます。

  • 情報通知書の請求
  • 「年金分割のための情報通知書」を受け取る
  • 2人で話し合う
  • 年金分割の請求手続き
  • 「標準報酬改定通知書」が送付される

1.情報通知書の請求

年金事務所または年金相談センターに「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」 を請求します。分割の割合が決まっていても請求手続きを行わないと年金を分割できません。
基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類(年金手帳・マイナンバーカードなど)と婚姻期間等を明らかにすることができる書類(戸籍謄本(全部事項証明書)もしくは戸籍抄本(個人事項証明書))を添えて請求の手続きを行います。
事実婚の場合は戸籍謄本・戸籍抄本の代わりに住民票など事実婚であることを明らかにできる書類を提出します。

2.「年金分割のための情報通知書」を受け取る

情報通知書が日本年金機構から送付されます。2人一緒に請求した場合は、それぞれに交付され、1人で請求したかたは離婚しているときはそれぞれに交付され離婚していないときには請求した人のみに交付されます。

3.2人で話し合う

合意分割の場合は話し合いで「年金分割の請求をすること」と「分割する場合の按分割合」を決定します。

話し合いがまとまらないときには家庭裁判所に調停(又は審判)を申し立てます。

4.年金分割の請求手続き

合意分割の場合は離婚後に請求が可能となります。「標準報酬改定請求書」に、下記書類を添え年金事務所に提出します。

1.基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
2.婚姻期間等を明らかにすることができる書類
3.請求日前1カ月以内に交付された2人の生存を証明できる書類
戸籍謄本(全部事項証明書)、戸籍抄本(個人事項証明書)住民票
4.年金分割の割合を明らかにすることができる書類(以下の書類のいずれか1つ)
●公正証書の謄本または抄録謄本
●公証人の認証を受けた私署証書
●年金分割することおよび按分割合について合意している旨を記入し署名した書類

3号分割も離婚後に請求が可能です。
「標準報酬改定請求書」に、上記1~3の書類を年金事務所に提出します。
事実婚など離婚の届け出をしていないが事実上離婚状態にあることを理由に3号分割を請求する場合には、関係の解消を明らかにできる書類(住民票等)と双方が事情を認めている旨の申立書も提出する必要があります。

3号分割のみ請求する場合は、合意は不要で第3号被保険者であった人からの手続きによって年金分割が認められます。

5.「標準報酬改定通知書」が送付される

日本年金機構が定められた按分割合に基づき、厚生年金の標準報酬を改定し改定後の標準報酬を通知します。

まとめ

年金分割制度の概要と手続きについて解説してきました。

年金分割制度には合意分割と3号分割の2つの方法があります。
上記の要件を確認し自身の方法とあわせて、手続きの手順・必要書類を確認しておきましょう。

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