介護保険の要介護・要支援認定を受けている人が、介護を目的としたリフォーム費用の一部が補助されることをご存じでしょうか。
ただ、全ての工事が対象となるわけではないため、自身のリフォームが給付対象となるのかを確認しておかなければなりません。
また、事前申請を忘れたり、必要書類の準備が不十分であったりすると給付が受けられない可能性があるので注意が必要です。
そこで今回は、介護保険でリフォームをする際の補助金額と申請の流れを詳しく紹介します。
介護リフォーム費用を抑えるコツも紹介するので、これから介護の予定がある方も、ぜひ参考にしてください。
介護保険のリフォーム(住宅改修)費給付とは
介護保険のリフォーム費給付は、要介護者が住居に必要な設備を取り付けたり、危険箇所を取り除いたりするための給付制度です。
リフォーム費給付を利用するには、一定要件を満たしたうえで、自治体に事前申請しなければなりません。
ここでは、介護保険のリフォーム費給付について詳しく紹介します。
利用条件
介護保険のリフォーム費給付は、以下の利用条件を全て満たさなければなりません。
- 要介護・要支援認定を受けている
- 介護保険の被保険者証と住所が同一である
- 被保険者が居住している住居である
リフォーム費給付は、要介護・要支援認定を受けている人が利用する住居であることが前提です。
別居や入院している要介護者と同居予定の場合は、自治体に「同居前にリフォーム工事をしたい」と相談してみるとよいでしょう。
支給限度額
リフォーム費給付の支給額は、要介護や要支援の認定区分に関わらず18万円が上限となります。
リフォーム費用の9割が償還される仕組みとなっているので、改修費が20万円に到達したときに満額支給が受けられます。
なお、要介護認定区分が3段階上昇したり、転居したりするとリフォーム費給付を再利用することが可能です。
支給対象となるリフォームの種類
介護保険のリフォーム費給付は、全ての工事が対象となるわけではなく、以下の改修工事を行った際に適用されます。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床や通路の材料変更
- 扉の取り替え
- 便器の取り替え
なお、これらのリフォーム工事に必要とされる改修工事も給付対象となるので、申請漏れがないように注意しましょう。
具体的には、便器を取り替えるための給排水工事や床工事などが挙げられます。
改修内容が給付対象となるか不安な方は、事前に自治体に問い合わせておきましょう。
介護リフォーム費用の負担を抑えるコツ
限度額が20万円となっている介護保険のリフォーム費給付では、全ての改修費用を賄えない場合があります。
介護リフォームの負担を抑えるためにも、以下で紹介する工夫を取り入れてみましょう。
自治体の補助金を利用する
介護リフォームに関する独自の補助金制度を用意している自治体があります。
ただし、介護保険と年齢制限が異なったり、所得制限が設けられていたりするケースがあるので、事前に受給要件を確認しておくことが大切です。
なかには浴槽や洗面台の取り替えなど、介護保険では適用外となっている工事も支給対象としている自治体もあります。
自治体の補助金を調べる際は「〇〇(自治体名) リフォーム費給付」などで検索してみましょう。
税額控除を受ける
要介護者や高齢者の住居にバリアフリー工事を施すと、所得税の税額控除が受けられます。
ただし、2024年12月31日までに居住したり、改修後の住宅床面積が50平方メートル以上であったりなどの適用要件を満たさなければ適用対象外となってしまうので注意が必要です。
所得税額から直接差し引かれる税額控除は、ふるさと納税や医療費控除といった所得控除より大きな節税効果が見込めます。
税額控除が満額受けられない場合は、所得が多い年に適用を受けられるように調整するのも手段の一つです。
税額控除の適用を受ける際は、国税庁ホームページで適用対象であるのかを確認したうえで手続きを進めましょう。
介護リフォームの給付申請の流れ
介護リフォームの給付申請は、以下のステップで進めます。
- ケアマネージャーに相談する
- 改修工事内容の決定・見積書を受け取る
- 自治体へ申請書類を提出する(事前)
- 自治体からの審査を受ける
- 改修工事の施工・業者に費用を支払う
- 自治体にリフォーム費用の請求申請をする(事後)
- リフォーム費用が給付される
介護保険のリフォーム費給付は、やむを得ない事情がない限り事後申請が認められません。
介護リフォームを計画する際は、自治体への申請や審査にかかる時間を考慮しておくことが大切です。
給付申請前に慌てることがないよう、以下の必要書類を準備しておきましょう。
事前申請 | 事後申請 |
・支給申請書 ・改修工事の見積書 ・住宅改修が必要な理由書 ・住宅改修前後の状態がわかる書類 (図面や写真など) | ・改修工事の領収書 ・改修工事費の内訳書 ・住宅所有者の承諾書 ・住宅改修後の状態がわかる書類 (図面や写真など) |
なお、リフォーム前後の状況を確認できる図面や写真が求められるケースがあるので、工事を進める前に改修箇所を撮影し、必要書類として保管しておきましょう。
介護リフォームをする際の注意点
介護保険のリフォーム費給付には、以下の注意点があります。
リフォーム後に後悔することがないよう、必ず確認しておきましょう。
事前申請できているか
前述した通り、介護保険のリフォーム費給付は事前申請が必要です。
やむを得ない理由がある場合は、例外として事後申請が認められるケースもありますが、基本的には給付対象外となります。
事前申請ができない理由がある場合は工事を進めるのではなく、まずは自治体に相談しておきましょう。
不要な設備となっていないか
リフォーム費給付は限度額が決められているため、不要な設備を取り付けると、介護に欠かせない設備を導入できなくなってしまいます。
具体的には、スロープの幅が狭くて車椅子が通れなかったり、手すりが通行の妨げになったりすることが考えられます。
取り付けた設備が介護の妨げになる場合は、撤去費用がかかってしまうので、本当に必要な工事なのかを十分に検討したうえで介護リフォームを進めましょう。
また、介護リフォームは要介護者のためだけでなく、介護する人の負担を小さくするための配慮も大切です。
たとえば、床材を滑りにくさだけでなく、掃除が簡単にできる素材を選ぶと介護への負担を軽減できるでしょう。
まとめ
介護保険の要介護・要支援認定を受けた際は、リフォーム費給付の補助金を活用しましょう。
ただし、事前申請をしなかったり、必要書類の準備を忘れたりすると給付対象外となってしまうので注意が必要です。
介護リフォームの負担が大きいと感じる方は、自治体独自の補助金や税額控除を活用しながら、少しでも負担を減らせる工夫を取り入れてみましょう。
介護が始まると十分な備えができない場合があるので、時間的な余裕があるときに適切な準備を始めておくことが大切です。
申請方法や費用面に不安がある場合は、行政書士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるのがおすすめです。
お悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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