日本に住む20歳以上60歳未満の全ての方が加入する国民年金ですが、失業や収入減少により支払いが難しいという方もいらっしゃるでしょう。
国民年金の保険料は免除・納付猶予制度があり、申請する前の年の所得が一定額の場合は申請する事で納付を免除又は猶予できます。
本記事では国民年金の免除・納付猶予制度の概要と条件、免除のデメリットと注意点について解説していきます。
国民年金の免除・納付猶予とは?
日本に居住する20歳以上60歳未満の全ての方は国民年金に加入し、保険料を納付しなければいけません。
しかし収入減少や失業により経済的に困難になった方、学生の方向けに保険料免除・納付猶予制度があります。
免除制度は、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下であるもしくは失業したケース・新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した方が対象です。
免除額の割合には「全額、4分の3、半額、4分の1」があります。
納付猶予制度とは20歳から50歳未満で、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下の場合に申請書を提出し承認されると保険料の納付が猶予される制度です。学生の場合は「学生納付特例」が適用されます。
保険料の「免除」は該当する期間が年金額に反映されますが、「納付猶予(学生納付特例)」は老齢基礎年金に反映されません。
老齢基礎年金の受給資格期間への算入 | 老齢基礎年金の年金額への反映 | 障害基礎年金・遺族基礎年金への受給資格期間の算入 | |
納付 | 〇 | 〇 | 〇 |
全額免除 | 〇 | 〇 | 〇 |
一部納付※ | 〇 | 〇 | 〇 |
納付猶予学生納付特例 | 〇 | × | 〇 |
未納 | × | × | × |
※一部納付の承認を受けている期間は、一部納付の保険料を納付する必要があります。
保険料を免除した期間は老齢基礎年金を一定額受給できますが、手続きをせず未納となっている方は受け取ることができません。
保険料を支払えない状況であっても未納は避け、必ず免除申請を行いましょう。
免除が承認された場合の免除額と保険料は以下の通りです。
支払える状況になった場合は、保険料免除・納付猶予(学生納付特例)の期間は10年以内であれば追納が可能です。
追納によって老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができます。
免除・納付猶予の条件
国民年金の免除は本人・配偶者・世帯主それぞれの前年所得が、一定額以下である場合に申請者が免除を受けることができます。
免除額 | 前年所得 |
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 168万+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
猶予の種類 | 前年所得 |
納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
学生納付特例 ※学生であることも要件 | 本人の所得:128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等家族の所得は関係ありません。 |
「扶養親族等控除額」「社会保険料控除額等」は、年末調整や確定申告で申告された金額ですので、源泉徴収票・確定申告の控えで確認しましょう。
申請時の注意点
免除・猶予が申請できる期間は、申請前に関しては申請書が受理された月から2年1カ月前まで(納付済の月を除く)となります。
申請後は翌年6月(1月~6月に申請したときは、その年の6月)分までとなります。
1枚の申請書で申請できるのは、7月から翌年の6月までの12カ月間です。
申請方法
申請書に必要事項を記入し、添付書類と共に管轄の役所の国民年金担当窓口又は年金事務所に持参します。郵送による提出や電子申請も可能です。
申請用紙は下記のURLからダウンロードできます。
基礎年金番号通知書のコピー又は年金手帳(氏名の記載ページ)のコピーを添付書類として提出します。
基本的に所得を証明する書類の添付は不要ですが、場合によっては提出を求められることがあります。
学生納付特例を受けたい方は学生であることを証明する書類が必要で、在学中の学校にも申請ができます。
失業・廃業時、新型コロナウイルス感染症の影響で保険料を免除・猶予する場合
国民年金保険料の免除・納付猶予は失業もしくは廃業・休業した方、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した方にも適用されます。
失業・廃業による特例免除の要件
失業又は廃業・休業した際にも申請により、国民年金保険料の納付が免除・猶予が承認されることがあります。
雇用保険の被保険者であった方は雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知または雇用保険被保険者離職票のコピーなどを申請書と共に提出します。
事業を廃止(廃業)または休止している方は、税務署等への異動届出書もしくは個人事業の開廃業等届出書や事業廃止届出書の写しなど公的機関が交付した失業の事実が確認できる書類を提出します。
新型コロナウイルス感染症の影響で減収した方の免除について
2020年5月から、新型コロナウイルス感染症の影響により国民年金保険料の納付が困難となった方に対する臨時特例免除申請の手続きがスタートしました。
臨時特例免除は、①2020年2月以降に新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した、②2020年2月以降の所得等の状況から当年中の所得の見込みが、国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれるという2点を満たす必要があります。
申請できる期間は申請した月から2年1カ月前まで(2020年2月分以降)となります。
国民年金保険料免除のデメリットは受給額が低くなってしまうこと
国民年金保険料を免除すると、将来受け取る年金の額が低くなってしまいます。
免除額 | 満額に対する受給額の割合 |
全額免除 | 2分の1 |
4分の3免除 | 8分の5 |
半額免除 | 8分の6 |
4分の1免除 | 8分の7 |
納付猶予制度 | 10年以内に追納しないと老齢基礎年金額の受給額は増えない |
金銭的に厳しい状況を乗り越えた場合には、追納することで将来受給できる年金額を増やすことができます。
また公的年金制度は基本的に支え合いの仕組みとなっており、自身が免除した場合は保険料を現役世代全体が補てんすることになります。
少子高齢化が進む中で公的年金制度はますます厳しい状況になっていく可能性が高いため、可能であれば保険料は納付することが望ましいです。
まとめ
国民年金の免除・納付猶予制度、失業・廃業時や新型コロナウイルス感染症の場合、免除のデメリットと注意点について解説しました。
経済的に困窮している状況にある場合、免除・納付猶予の申請をすることで一定期間支払いをストップできます。
しかし将来の受給額が少なくなってしまいます。
加えて、保険料を支払っている現役世代の負担となり年金制度が厳しい状況に陥る恐れがありますので厳しい状況を乗り越えた際には「追納」をおすすめします。
この記事を参考に国民年金保険料の免除・猶予制度を知り、いざという時に活かしていきましょう。
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