フリーランスが法人化するメリットやデメリットは何ですか?
また法人化するタイミングや、具体的な手順が知りたいです。
2006年の法改正により最低資本金制度がなくなり、資本金1円からでも株式会社が設立できるようになりました。
法改正される以前は、株式会社であれば資本金が1,000万円以上必要でした。
仮に株式会社を設立する場合、費用として約30万円ほどかかりますが、30万円であれば高校生のバイト代でも頑張れば賄える金額です。
それほど法人化のハードルは低い訳ですが、法人化にはメリットがある反面、デメリットも存在するため十分理解した上で行う必要があります。
この記事では、フリーランスから法人化するメリットやデメリット、そのタイミングや手順等に関して初心者にも分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、法人化するべきかどうか判断できるようになるでしょう。
フリーランスから法人成りする場合は、その目的を明確にした上で行うべきです。
フリーランス(個人事業主)が法人化するメリット
フリーランスから法人化するメリットとしては、次の通りです。
金銭面 | 業務面 |
---|---|
・節税効果が高くなる ・給料(役員報酬)や退職金を経費にできる ・経費にできる項目が増える ・欠損金の繰越控除期間が長くなる ・社会保険が利用できる ・決算期が自由に選択できる ・最初の2年間は消費税の支払いが免除される | ・社会的な信用度が上がる ・人材募集が容易になる ・負債を有限責任にできる |
法人化するメリットの意外に多いため、分かりやすく金銭面と業務面に分けています。
中でも一番のメリットは税金面であり、フリーランス(個人事業主)の場合は、累進課税制度が適応されてるため、所得に対する最高税率は45%。
対して法人側は、最高税率23.4%と約半分の課税負担です。
そのため、フリーランスでかなり稼いでいる人が節税のために法人化する、というのが王道の考え方になります。
フリーランスの中には、マイクロ法人を設立して個人事業主と法人の二刀流で、経営されている方も意外に多いです。
フリーランスが法人化するデメリット
フリーランスが法人化するデメリットとしては、主に次のような項目が挙げられます。
- 設立や登記などに時間とお金がかかる
- 法人住民税の均等割の支払いが生じる
- 社会保険料の支払い負担が生じる
- 毎月の給与が固定される
- 最低限の簿記知識が必要となる
- 登録可能な事務所を用意する必要がある
端的にいうと最大のデメリットは、法人設立に際して手間やお金がかかることです。
個人事業主とは異なり、法人設立には必要な手続きや書類が多くなります。
その上、法人設立には約30万円(株式会社の場合)ほどの費用がかかるため、節税目的で法人化する人の中には、敢えて合同会社する場合もあります。
また、法人住民税に関しては、会社の事業が赤字であっても納めなくてはいけない他、社会保険料の支払い負担が生じるのもデメリットです。
株式社会や合同会社の他にも「合名会社」や「合資会社」など、合計で4つの会社形態があります。
フリーランスと法人の3つの違い【どっちが得?】
フリーランスと法人の違いとしては、大きく分けて3つ挙げられます。
- 事業開始時に必要な手続きが異なる
- 課せられる税金が異なる
- 社会的信用度が異なる
どちらがお得であるかはその人の状況によるため、一概に断言できません。
事業開始時に必要な手続きが異なる
フリーランスと法人の大きな違いは、法務局に登記が必要かどうかです。
その上、個人事業主とは異なり法人設立には費用がかかりますので、フリーランスよりもはじめる段階での難易度が異なります。
フリーランスや個人事業主の場合は「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を税務署に提出した後、最寄りの役場に「事業開始等申告書」を提出するだけです。
法人設立の具体的な方法に関しては、後述していますのでそちらを参考にしてください。課せられる税金が異なる
課せられる税金が異なる
フリーランスと法人では、課せられる税率が異なります。
フリーランスをはじめとした個人事業主の場合は、所得に対して税率が変動する累進課税制度が適応されており、最大税率は45%です。
対して法人は、最大でも税率23.4%なので圧倒的にフリーランスよりも、税金面でお得だといえます。
ただし、安易に税金面でお得だから法人化するのは時期尚早であるため、必ず総合的に考え合理的に判断した上で法人化しましょう。
社会的信用度が異なる
フリーランスや個人事業主とは異なり、法人化すると社会的な信用度が高まります。
例えば銀行からお金を借り入れる際には、個人事業主よりも法人の方が借入額が多かったりと、銀行側の対応も異なります。
手続きに必要な書類や工数なども、個人事業主と法人では全く異なるため、その点も考慮しておくべきでしょう。
今後より事業拡大させたいと考えている人は、法人化して信用度を上げ、資金調達の難易度を下げるのも一つの手段です。
フリーランスが法人化するタイミングと目安
フリーランス(個人事業主)が法人化するタイミングとしては、主に2つ挙げられます。
- 売上高が1,000万円を超えたタイミング
- 課税所得が約900万円超えたタイミング
上記は、あくまでも目安ですので実際に法人化を検討する段階になった時は、必ず税理士などの専門家に一度相談しましょう。
売上高が1,000万円を超えたタイミング(消費税の観点)
フリーランスの人で1年間の売り上げが1,000万円を超えた場合、消費税の納税義務が発生します。
実際に納税するのは2年後になりますので、その間は免税事業者として消費税が免除されます。
2年間の免税期間が終了した段階で、法人化するとその後また2年間は免税事業者扱いとなるため、合計で4年間消費税が免税される訳です。
ただし、インボイス制度が2023年(令和5年)10月1日から開始されるため、その点も考慮した上で判断すべきでしょう。
課税所得が約900万円超えたタイミング(所得税の観点)
所得税で考えるとフリーランスの場合は、課税所得が900万円未満であれば適応される所得税は23%なので、法人税の最高税率23.4%よりも低い水準です。
しかし、課税所得が900万円に達すると適応税率は33%となり、法人税の最高税率よりも高くなってしまいます。
そのためフリーランスや個人事業主は、課税負担を軽減させるために課税所得が900万円に達した段階で、法人化を検討するのが一般的です。
フリーランスが法人化するために必要な手続き
フリーランスが法人化(株式会社設立)する場合、次のような手続きが必要になります。
- 社名や事業内容などの基本事項を決める
- 本店所在地管轄の法務局で設立の登記申請を行う
- 銀行で法人名義の口座開設を行う
- 既存の取引先に対して通知する
- 役員報酬(給料)を決める
- 税務署と都道府県の税務事務所へ届出を行う
- 社会保険の加入手続きを行う
- 個人事業主の廃業手続きを行う
手続きに関しては、個人だけで行うとある程度の労力が必要になるため、大半が行政書士などの専門家に委託するケースが多いです。
詳細に関しては、専門家と話し合いながら会社の概要を決めていくべきでしょう。
合同会社であっても必要な手続きに関しては、それほど違いはありません。
手続きを委託する場合は、委託料金が発生します。その点も費用項目として考慮しながら、会社設立の予算を決める必要があるでしょう。
フリーランスが法人化する際の注意点
フリーランスが法人化する際の注意点としては、次の3つです。
- 会計や税金に関して最低限の知識を身につける
- 法人化する際には一度、専門家に相談する
- インボイス制度に関して理解しておく
最低でも日商簿記3級程度の知識は、身につけておきましょう。
会計や税金に関して最低限の知識を身につける
フリーランスが法人化するにあたり、会計や税金等に関する最低限の知識が必要になります。
個人事業主の場合は、クラウド会計ソフトなどを活用して効率化すれば、会計管理や確定申告なども容易に行えますが、法人の場合はさらに複雑化します。
そのため、多くの経営者は会計や税金などに関して、外部の専門家(税理士や会計士など)の力を借りることが多いです。
経営者に全く会計や税金の知識がないと、委託先の専門家が信頼できる人であるか判断が難しいため、最低限の知識は身につけておくべきです。
法人化する際には一度、専門家に相談する
既に複数の会社を経営している経営者であれば、独自の判断で法人化することもできますが、初めての方は必ず専門家に一度相談しましょう。
凄腕の経営者であっても決して万能ではないため、能力の高い経営者こそ専門家を含めた周りの意見を参考にします。
本当に法人かすべきかどうかは、税理士や会計士などのプロの意見を聞いてからでも、遅くはありません。
逆に専門家の意見を聞かずに、独自の判断だけで法人化してしまうと、取り返しのつかない事態になりかねません。
インボイス制度に関して理解しておく
インボイス制度とは「適格請求書保存方式」のことであり、所定の要件を満たした請求書でなければ、消費税の仕入税額控除が受けれなくなる制度です。
本制度は、フリーランス(個人事業主)、法人の双方に影響のある制度であり、どちらの立場であっても十分な制度の理解が必要になります。
フリーランスの法人化に差し当たり、大いに関係性のある制度ですので、事前にその内容を把握しておきましょう。
フリーランスの法人化に関するQ&A
フリーランスの法人化に関する多くの悩みや質問の中から、特に多かった内容だけに絞って、分かりやすく回答をまとめました。
ご自身でも十分調べた上で、法人化すべきか検討しましょう。
Q.月の売上が100万前後あるのですが法人化した方がいいですか?
消費税の観点からいうと法人化しても良いタイミングですが、課税所得が900万円を超えているかも法人化の判断目安になります。
マイクロ法人という選択肢も考えられますので、個人での判断が難しい場合は、一度税理士や会計士などの専門家に相談することをおすすめします。
Q.法人化したら人を雇わないといけませんか?
法人化するからといって、必ず人を雇わなければいけない、という決まりはありません。
実際に一人社長で経営されている方も多いです。
もちろん、雇用することも可能ですので事業内容に合わせて、臨機応変に対応すると良いでしょう。
Q.法人化するのはインボイス制度が始まってからがいいですか?
結論からいうと、インボイス制度が導入される前に法人化した方が良いです。
なぜなら、法人化すると消費税免税期間が2年利用できますが、インボイス制度が導入されると免税事業者は適格請求書が発行できません。
そのため事業者によっては、免税期間の意味がない可能性が挙げられます。
導入前か後か迷っている方は、できるだけ早く法人化して免税期間を活用した方が良いでしょう。
Q.フリーランスで年収高いのに法人化しない人がいるのはなぜですか?
フリーランスや個人事業主が法人化しない理由としては、メリットだけではなくデメリットがあるからに他なりません。
確かに法人化すればさまざまなメリットが受けられますが、その反面デメリットも背負うことになります。
どちらを優先して判断するかは個人に委ねられるため、一概に年収が高いからというだけで法人化するのは、安易な考えです。
まとめ
フリーランスが法人化するメリットに関して、分かりやすく解説しました。
金銭面 | 業務面 |
---|---|
・節税効果が高くなる ・給料(役員報酬)や退職金を経費にできる ・経費にできる項目が増える ・欠損金の繰越控除期間が長くなる ・社会保険が利用できる ・決算期が自由に選択できる ・最初の2年間は消費税の支払いが免除される | ・社会的な信用度が上がる ・人材募集が容易になる ・負債を有限責任にできる |
法人化することで沢山のメリットが受け取れますが、反対にデメリットも存在しますので、総合的に考慮して判断するべきです。
特にはじめて法人化される方は、個人の考えだけで判断せずに必ず一度、専門家に相談した上で最終的な判断を下しましょう。
フリーランスの方で法人化しようと悩んでいる人は、一度FPにご相談ください。
コメント