1年間に支払った特定の医薬品の購入費に応じて所得控除を受けられるセルフメディケーション税制。
実際にどのくらいの節税額になるのかをご存じでしょうか。
「購入した市販薬がセルフメディケーション税制の対象医薬品ではなかった」という状況にならないためにも、セルフメディケーション税制への理解を深めておくことが大切です。
そこで今回は、セルフメディケーション税制の還付金額の計算方法や利用時の注意点を紹介します。
医薬品の購入費の負担が大きいと感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
セルフメディケーション税制の節税額の早見表
セルフメディケーション税制を利用したときの節税額は、課税所得金額と医薬品購入費によって異なります。
医薬品購入費が10万円、5万円の場合、課税所得金額ごとの節税額は以下の通りです。
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 | 5万円 (購入費) | 10万円以上 (購入費) |
1,000円 〜1,949,000円 | 5% | 10% | 5,700円 | 13,200円 |
1,950,000円 〜3,299,000円 | 10% | 7,600円 | 17,600円 | |
3,300,000円 〜6,949,000円 | 20% | 11,400円 | 26,400円 | |
6,950,000円 〜8,999,000円 | 23% | 12,540円 | 29,040円 | |
9,000,000円 〜17,999,000円 | 33% | 16,340円 | 37,840円 |
※実際の還付金額と異なる場合があります。
セルフメディケーション税制の還付金額の計算方法
セルフメディケーション税制の還付金額は、以下のステップで算出できます。
- 対象となる医薬品を確認する
- 控除金額を計算する
- 還付金額を求める
それぞれのステップを詳しく解説します。
1.対象となる医薬品を確認する
セルフメディケーション税制は、病気の予防や健康の維持・増進を目的とした医薬品の購入費が対象です。
具体的には、薬局やドラックストアで購入できるスイッチOTC医薬品や、スイッチOTC医薬品と同種の効能・効果を持つ一定の医薬品が該当します。
対象商品であるかは、領収書やパッケージの表示から確認できます。
領収書やパッケージが手元にない場合は、厚生労働省のホームページの対象品目一覧から確認してみましょう。
なお、本人だけでなく、生計を一とする配偶者やその他の親族のために支払った費用も対象となります。
2.控除金額を計算する
対象となる医薬品を確認したら、以下の計算式から控除額を求めます。
控除額(上限88,000円)=医薬品の購入費-12,000円
購入費が12,000円を超えない場合は、控除が受けられません。
また、購入費が100,000円を超えていても、控除額の上限は一律88,000円となります。
3.還付金額を求める
2つ目のステップで求めた控除額をもとに、実際の還付金額を算出します。
還付金額は、以下の課税所得に応じた税率をかけることで求められます。
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 10% |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% |
課税所得が250万円、450万円の方を例に、対象の医薬品に8万円の購入費を支払ったケースの計算方法を見ていきましょう。
このように、課税所得額が大きいほど、還付金額も多くなります。
セルフメディケーション税制を受ける際の注意点
セルフメディケーション税制を受ける際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 病気の予防や健康の維持・増進への取り組みが必要となる
- 確定申告をする必要がある
- 医療費控除と併用できない
- 副業をしていると納税額が増える場合がある
それぞれ詳しく解説します。
病気の予防や健康の維持・増進への取り組みが必要となる
セルフメディケーション税制を利用するには、適用を受けたい年に病気の予防や健康の維持・増進への取り組みを実施している必要があります。
具体的には、確定申告をする方が以下の取り組みをしていることが要件となります。
- 健康診断
- 予防注射
- がん検診
- 人間ドック
健康診断は勤務先で実施するものも含まれます。
ただし、これらの取り組みにかかった費用は、セルフメディケーション税制の控除対象にならないので注意しましょう。
なお、健康診断や人間ドックで異常が見つかった場合、検査費用は医療費控除の対象となります。
確定申告をする必要がある
セルフメディケーション税制は年末調整で適用が受けられないため、確定申告が必要となります。
確定申告の期限は、対象の医薬品の購入費を支払った翌年の2月16日から3月15日です。
確定申告書を提出する際は、薬局などの支払先や医薬品の名称、支払金額を記載する「セルフメディケーション税制の明細書」の添付が必要です。
また、以下の書類は提出する必要はありませんが、確定申告の期限から5年を経過するまでの間は、保管しなければなりません。
- 健康診断などの取り組みをしたことを明らかにできる書類
- 対象の医薬品の領収書やレシート
紛失しないように、大切に保管しておきましょう。
医療費控除と併用できない
医療費控除とセルフメディケーション税制は、選択制なので併用できません。
それぞれの違いは以下の通りです。
医療費控除 | セルフメディケーション 税制 | |
対象額 | 100,000円以上 | 12,000円以上 |
対象 | 治療目的で支払う医療費 や医薬品購入費、検査費 用など | スイッチOTC医薬品や、 スイッチOTC医薬品と同 種の効能・効果を持つ一 定の医薬品の購入費 |
控除額 | (支払った医療費-保険 などに補てんされた額) -10万円または所得額 の5%のいずれか少ない方 | 対象の医薬品の購入費- 12,000円 |
控除上限額 | 2,000,000円 | 88,000円 |
基本的には、市販薬の購入金額が多い方はセルフメディケーション税制、病院に行くことが多く、医療費が100,000円を超える方は医療費控除を受けるとよいでしょう。
ただし、どちらがお得になるかは、所得金額や支払った医療費、医薬品購入費によって異なるので、事前にシミュレーションをしてみるのがおすすめです。
医療費控除の還付金額の計算方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
副業をしていると納税額が増える場合がある
副業をしている方がセルフメディケーション税制の適用を受けると、納税額が増える場合があります。
給与所得者の場合、副業の所得金額が20万円を超えていなければ確定申告をしなくてもよいとされています。
しかし、セルフメディケーション税制を利用するには、確定申告が必要となり、あわせて副業の所得金額も申告しなければなりません。
例えば、セルフメディケーション税制の控除額よりも、副業の所得額が大きい場合は、本来納める必要のなかった税金が発生し、納税額が増えてしまうでしょう。
市販薬を購入したらセルフメディケーション税制を活用しよう
セルフメディケーション税制の節税額は、納税者の所得金額や医薬品購入費によって、大きく異なります。
医療費控除を活用した方が高い節税効果を得られる場合もあるため、それぞれの違いや控除額を押さえて、自分に適切な制度を活用しましょう。
どちらの制度を活用するか悩んでいる方や、申告方法に不安がある方は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるのがおすすめです。
お悩みの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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