デジタル遺産で相続税が加算!?ネット・クラウド上の資産にも相続対策を

相続・事業承継
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デジタル遺産とは、ネット銀行の預金やネット証券会社の有価証券、暗号資産、電子マネーの残高やオンラインで契約したサブスクリプション(定期契約)などを指します。

他に資産とは異なり目に見えないため相続時に相続人が見落とし、遺産分割をやり直すことになった事例が存在します。場合によっては相続税が加算されてしまう可能性があります。

本記事ではデジタル遺産とは、SNSのアカウントについて、デジタル遺産の相続トラブル事例と対策について解説していきます。

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デジタル遺産とは?相続での問題点

デジタル遺産とは、オンライン・クラウド上に存在する財産のことで、ネット銀行の預金、ネット証券会社で購入した有価証券、暗号資産などが該当します。

ネット銀行の預貯金
ネット証券会社の口座にある株式・債券・投資信託・FXなど
暗号資産(ビットコインなどの仮想通貨、NFT)
電子マネーの残高
ポイント
サブスクリプション(定期課金契約)

預金や有価証券などを始め、サブスクリプションもデジタル遺産となり、契約期間中は支払いが続きます。銀行口座からの引き落としやクレジットカード決済の場合、サービスを利用しないにも関わらずお金が引き落とされてしまいます。

故人がサブスクリプションを契約していたことが分かった場合、早めに解約しましょう。

NFT(非代替性トークン)とは、オンラインゲームやメタバースで取引される資産で、海外ではアートや不動産などが高額で売買されています。

デジタル遺産は現物資産と違い「見えない」資産であるため、相続人にとって把握しづらいという問題点があります。

そのため相続の際にデジタル遺産の存在を知らずに遺産分割、相続税の申告を行い後にデジタル遺産が見つかり遺産分割をやり直し相続税を修正申告しなければならない事例が存在します。

相続税は無申告・過少申告の場合加算税が課されますので、デジタル遺産の取りこぼしによって加算税を納める事態に陥ってしまう可能性があります。

SNSのアカウントはデジタル遺産では無いが…

国税庁の「相続税がかかる財産」のページには、

「相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものをいいます。」

と記載されています。

相続財産(遺産)は相続税の観点から言うと「経済的価値のある全てのもの」となりますので、基本的にSNSのアカウントはデジタル遺産の対象外となります。

しかし故人がSNSを利用して金銭を得ていた場合、例えば人気と影響力のあるインフルエンサーで企業から依頼された商品をPRしていたケースではアカウントは経済的な価値のあるものと言えるでしょう。

経済的な価値のあるアカウントは被相続人の「一身専属権」である可能性が高いです。

一身専属権とは特定の人が行使する相続人が受け継ぐことのできない権利で、例えば「親の土地を無償で借りて建物を建てた子供の権利」が該当します。親は「実の子供だから土地を無償で貸した」のであって、他人には無償で貸しません。
よって実の子供が持つ一身専属権となります。

SNSのインフルエンサーとしてのアカウントも、「被相続人が影響力のある人物だったので利益を得られた」ことから一身専属権に該当すると言えるでしょう。

デジタル遺産の相続トラブル事例2つ

ネット証券会社に口座が見つかった、ネット銀行のカードローンが発覚した相続トラブル事例を見ていきましょう。

  • 遺産分割後にネット証券会社の口座に有価証券があった事が判明
  • ネット銀行のカードローンが発覚

1.遺産分割後にネット証券会社の口座に有価証券があった事が判明

Aさんが亡くなり、相続人である子供のBさんとCさんは遺産分割を行いましたが知人の話で生前Aさんがネット証券会社に口座を保有していたことが分かりました。

Aさんが生前株式や投資信託を保有していることはBさん・Cさんは知っており、ネット証券会社ではない店舗型の証券会社にある有価証券は既に遺産分割が終わっていました。

BさんとCさんはAさんが使っていたネット証券会社が分からなかったため「証券保管振替機構(ほふり)」に開示請求を行い、証券会社や株式の保有銘柄などを突き止め、1000万円程のデジタル遺産を確認しました。
証券保管振替機構では、開示請求を行うと開示時点の上場株式等の口座が開設されている証券会社、信託銀行の一覧を閲覧できます。

BさんとCさんは遺産分割を最初からやり直すことになってしまいました。

2.ネット銀行のカードローンが発覚

Dさんが亡くなり、相続人のEさんが遺産を調査した所、Dさんには借金がある事が分かりました。しかし預貯金などプラスの財産もありトータルで遺産は100万円プラスであったため、相続放棄をせず相続をしました。

しかしDさんには、生前ネット銀行のカードローンで200万円の借り入れがあった事が発覚しました。
相続放棄は被相続人が亡くなった事を知った日から3ヵ月以内であり、申し立てられる期限を過ぎていたためEさんはカードローンを返済することになってしまいました。

Dさんのように借金がある方は他にも債務がある可能性がありますので、限定承認の手続きを取る事で上記のようなトラブルが回避できます。

限定承認とはプラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き継ぐことで、被相続人にどの位債務があるか分からない時に利用される手続きです。

デジタル遺産も含め、被相続人に借金がある場合、相続は慎重に検討しましょう。

デジタル遺産の相続トラブル対策

デジタル遺産の相続トラブルを防ぐためには一体どうしたら良いのでしょうか?

  • 遺言書・エンディングノートを残す
  • 死後事務委任契約を結ぶ

1.遺言書・エンディングノートを残す

遺言書やエンディングノートの財産目録にデジタル遺産を記入し、周りの人に存在を知らせておきましょう。
IDとパスワードも記載しておくことが重要です。
加えて生前に相続人となる予定の方にデジタル遺産について話しておくことも相続対策となります。

2.死後事務委任契約を結ぶ

死後事務委任契約とは、第三者に対し、自身が亡くなった後の諸手続き、葬儀・納骨などに関する事務について委任する契約をいいます。

死後事務委任契約を司法書士や弁護士などと契約し、「サブスクリプション契約の解約」や「デジタル遺産の周知」「SNSアカウント削除」などを委任しておくことでいざという時に実行してもらうことができます。

また諸手続きも代行してもらうことができ、相続人の負担を軽減が期待できます。
ただ一定の費用がかかることをあらかじめおさえておきましょう。

まとめ

デジタル遺産が周知されていないことによって、遺産分割のやり直しや相続税が加算されてしまう恐れがあります。

またEさんのように相続したくない借金を引き継いでしまう事例もあります。

事前に遺言書・エンディングノートを残す、死後事務委任契約を結ぶといった対策を検討しておきましょう。

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