昨年12月に2022年の税制改正大綱が閣議決定し、住宅ローン控除率の見直し、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置など控除制度の適用期限が2年延長といった様々な制度が創設・改正・延長となることが分かりました。
不動産関連ではどのような改正があるのでしょうか?
本記事では住宅ローン控除の改正を中心に、不動産に関する制度の創設・改正・延長などをまとめました。
今後の不動産関連の制度改正について知りたい方は是非ご覧ください。
2022年・住宅ローン控除の控除率が見直しに。1%から0.7%へ
税制改正大綱での注目点は住宅ローン控除の延長と控除率見直しです。
昨年の税制改正大綱で、住宅ローンの金利が1%を下回るケースが多く見直しが必要である記載されており、2022年からは0.7%に引き下げられます。
適用期限は2021年末までとされていましたが、2025年末まで4年延長されました。
居住年2022年・2023年
控除対象の借入限度額 | 控除期間 | 控除率 |
①下記以外の住宅:3,000 万円 ②認定住宅※1:5,000 万円 ③ZEH水準省エネ住宅※2 :4,500 万円 ④省エネ基準適合住宅※3:4,000 万円 | 13年 | 0.7% |
居住年2024年・2025年
控除対象の借入限度額 | 控除期間 | 控除率 |
①下記以外の住宅:2,000 万円 ②認定住宅※1:4,500 万円 ③ZEH水準省エネ住宅※2 :3,500 万円 ④省エネ基準適合住宅※3:3,000 万円 | 13年 ①のみ10年 | 0.7% |
※1:認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
※2:ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、建物の外側の断熱性向上に加え、高効率な設備システム・再生可能エネルギーの導入などにより、一次エネルギー消費量の収支ゼロを目標とした住宅
※3:省エネ基準適合住宅:一定の省エネ基準を満たした住宅。
上記は、マイホームの新築・未使用の住宅の取得・宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた際のものです。
既存の住宅取得・リフォームの場合は以下の通りとなります。
控除対象の借入限度額 | 一律 2,000 万円 |
控除期間 | 一律 10 年 |
適用対象者の所得要件は現行の3000万円以下から2,000 万円以下に引き下げられ、要件を満たす人の数は多くなる見込みです。
不動産登記法改正に伴う措置
民法等の一部を改正する法律により不動産登記法が改正、登記簿に登記される事項が新たに追加されます。
付け加えられる項目は以下の通りです。
法務局から市町村への登記情報に関する通知事項
所有権の登記名義人の死亡の符号
DV被害者等の住所に代わる事項
市町村の役場に設置されている「固定資産課税台帳」に記載されている事項について市町村が証明書の交付を行う時、DV被害者の住所が含まれている場合は、住所に代わる事項を記載しなければならないこととしています。
DV(家庭内暴力)の被害は年々増加しており、新型コロナ感染症拡大による自粛時間の増加によりさらにDV被害者の数が増加していることからDVに関する項目が追加されました。
コロナ禍での特例措置は、固定資産税の負担調整と医療関係者の不動産取得税軽減
新型コロナ感染症に関するイレギュラーな措置として、固定資産税・都市計画税の負担調整と医療従事者の不動産取得税軽減があります。
固定資産税・都市計画税の負担調整
新型コロナ感染症の影響で三大都市圏・地方の一部を除いた地価が下落していることから、固定資産税の安定的な確保のため負担調整を行います。
2022年に限り、商業地など負担水準が 60%未満の土地に対して固定資産税・都市計画税の税金の対象となる価額(課税標準額)に関しては以下の計算で行います。
2022年の課税標準額=2021年の課税標準額+(2022年の評価額+2.5%(現行:5%))
※60%を上回る場合には 60%相当額、20%を下回る場合には 20% 相当額
医療従事者の不動産取得税軽減
医療機関を開設した者が「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」に規定された認定再編計画に基づく再編のために取得した、一定の不動産に関する不動産取得税を軽減する措置です。
不動産取得税は取得した不動産の価格に税率をかけて計算しますが、不動産価額の2分の1相当が控除されます。
特例措置として2024年3月31日まで実施される予定です。
不動産関連で適用期限が延長になる制度一覧
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置や、マイホームの買い替えで譲渡損失が生じた時の損益通算・繰越控除の特例などの適用期限は2021年末までの予定でしたが、適用期限が2年延長となります。
制度 | 制度の概要 |
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | マイホームを売却して、損失が生じ新たにマイホームを購入した際、一定の要件を満たす場合譲渡損失を他の所得から控除できる控除しきれなかった損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越し(繰越控除) |
住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたときの特例 | 住宅ローンが残っているマイホームをローン残高以下の価額で売却、損失(譲渡損失)が生じた際に一定の要件を満たすものに限り、譲渡損失を他の所得から控除できる。 控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除できる |
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等 | 父母や祖父母など直系尊属からマイホームの新築、取得又は増改築等のための資金を贈与された場合一定の要件を満たす際は限度額までの金額は非課税となる |
登録免許税の税率の軽減措置 ※については、 ・築年数要件を廃止 ・新耐震基準に適合している住宅用家屋である(登記簿上の建築日付が1982 年1月1日以降)要件を加える | ・住宅用家屋の所有権の移転登記※0.3% ・特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記※0.1% ・住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記※0.1% ・特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記0.1% ・認定低炭素住宅の所有権の保存登記0.1% |
※軽減税率の適用を受けるためには、床面積が50平方メートル以上・新築又は取得後1年以内の登記など一定の要件を満たす必要があります。
まとめ
今回の税制改正大綱で最も注目された点は、住宅ローン控除の控除率見直しのニュースと言えるでしょう。
控除率が1%から0.7%となることが大きく報道されていますが、要件の1つである所得が3000万円以下から2,000 万円以下に引き下げられ適用対象が拡大されることはあまり知られていません。
新型コロナに関する特例措置や様々な制度の適用期限の延長と共に、詳細をおさえて今後に活かしていきましょう。
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