不動産を購入したり住宅ローンを完済したりしたときは、不動産登記の申請をしなければなりません。
しかし、不動産登記がどのような情報を記載しているものかが分からない人も多いのではないでしょうか。
不動産登記をスムーズに進めるためにも、あらかじめ不動産登記のポイントを押さえておくことが大切です。
そこで今回は不動産登記の概要や必要なケースを解説します。
不動産登記にかかる費用も紹介しているので、申請を控えている方も、ぜひ参考にしてみてください。
不動産登記とは
不動産登記とは、土地や建物がどこにあり、誰のものであるかを公にするために法務局の登記簿に記載することをいいます。
登記簿は、土地や建物ごとに表題部と権利部に区分して作成され、権利部はさらに甲区と乙区に分けられます。
まずは、表題部と権利部の記載内容をそれぞれ詳しく解説します。
表題部
表題部は、不動産の所在地や面積といった土地・建物に関する物理的な状況を記録する部分です。
具体的には、以下のような不動産の基本情報が記録されています。
土地 | 所在、地番、地目(土地の用途)、土地面積など |
建物 | 所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積など |
権利部
権利部は、所有権などの不動産の権利関係が記録されている部分です。
権利部はさらに甲区と乙区に分けられ、それぞれ以下の内容が記録されています。
甲区 | 所有権に関する事項所有者が誰で、いつ、 どのような手段(売買、相続など)で所有 権を取得したか |
乙区 | 抵当権や賃借権などの所有権以外の権利に 関する事項 |
乙区に記録されている抵当権とは、住宅ローンなどを払えなくなったときの担保として、金融機関が土地と建物に設定する権利のことです。
抵当権は住宅ローンなどを借りるときに設定が必要となりますが、住宅ローンを滞りなく返済している場合は、抵当権が実行されることはありません。
不動産登記簿謄本の取得方法
不動産登記簿謄本は、手数料を納付して申請すれば誰でも取得できます。
不動産登記簿謄本は、登記所の窓口もしくは法務省のホームページで請求でき、それぞれの請求方法にかかる手数料は以下の通りです。
請求方法 | 手数料 |
窓口請求 | 600円 |
オンライン請求・郵送受け取り | 500円 |
オンライン請求・窓口受け取り | 480円 |
登記所の窓口は平日17時15分までの対応となりますが、オンラインであれば21時まで利用できます。
不動産登記が必要なケース
不動産登記が必要となる主なケースは以下の通りです。
- 不動産を取得したとき
- 住宅ローンを完済したとき
- 所有者の住所や氏名が変わったとき
- 建物を取り壊したとき
一つずつ詳しく見ていきましょう。
不動産を取得したとき
家を新築した場合、建物に関する情報は登録されていないので、不動産登記が必要です。
具体的には、建物の表題登記で住所や床面積を登録してから、所有権などの権利関係を登記します。
建物の表題登記は所有権の取得から1ヶ月以内にしなければなりません。
申請をしなければ10万円以下の過料が科せられるので注意が必要です。
中古住宅を購入したり相続を受けたりした場合は、登記簿に所有権が自分へ移ったことを記載する「所有権移転登記」が必要になります。
なお、令和6年4月から相続登記(相続による所有権移転登記)が義務化されます。
相続により不動産を取得したときは、相続を知った日から3年以内に相続登記をしなければならないので注意しましょう。
住宅ローンを完済したとき
住宅ローンを完済したときは、抵当権を抹消する手続きが必要です。
一般的に、住宅ローンを組んだときは金融機関とともに抵当権設定登記をしますが、抹消の手続きは所有者がしなければなりません。
住宅ローンが完済したときは、金融機関から届く住宅ローンの解除証書などを使って、抵当権抹消登記を進めましょう。
なお、住宅ローンの借り換えをした場合は、借り換え先の抵当権設定登記と借り換え元の抵当権抹消登記をする必要があります。
所有者の住所や氏名が変わったとき
不動産の所有者の住所が変わったときは住所変更登記、結婚などで氏名が変わったときは氏名変更登記が必要です。
住所・氏名変更登記は、令和3年の不動産登記法の改正により、令和8年4月までの間に義務化されることが決まっています。
住所や氏名の変更があったにも関わらず登記をしなければ、本当にその不動産の所有者であるかの確認ができなくなります。
不動産の所有者であることを証明できなくなると、土地や建物を売却したり賃貸したりできなくなる可能性があるため、住所や氏名が変わったときは変更登記を忘れずにしましょう。
建物を取り壊したとき
建物を取り壊したときは建物滅失登記申請が必要です。
建物滅失登記申請は、建物が解体してから1ヶ月以内に申請しなければなりません。
申請をしなければ10万円以下の過料が科せられるので、建物の取り壊しが済んだら忘れずに対応しましょう。
不動産登記にかかる主な費用
不動産登記にかかる主な費用は以下の通りです。
- 登録免許税
- 必要書類の手数料
- 専門家への依頼費用
それぞれ詳しく解説します。
登録免許税
不動産登記をする際は、登録免許税という税金がかかります。
登録免許税の計算方法は以下の通りです。
税額=課税標準×税率
課税標準は固定資産税評価額を利用するのが一般的です。
主な登記の登録免許税の税率は以下の通りです。
登記の種類 | 登録免許税の税率 |
土地の売買による 所有権移転登記 | 課税標準額×2.0% |
新築住宅の 所有権保存登記 | 課税標準額×0.4% (令和6年3月31日まで軽減税率0.15%が適用される) |
中古住宅の 所有権保存登記 | 課税標準額×2.0% (令和6年3月31日まで軽減税率0.3%が適用される) |
必要書類の手数料
不動産登記をするときは申請書と添付書類をあわせて法務局に提出する必要があり、印鑑証明書や住民票の写し、戸籍謄本などを取得するための手数料がかかります。
交付手数料は自治体によって金額が異なりますが、1通あたり300~700円ほどです。
相続登記の場合は、亡くなった人の戸籍謄本や除籍謄本などが必要となるため、書類の取得費用がかさみやすい傾向があります。
専門家への依頼費用
不動産登記申請は、専門的な知識が必要となるため、専門家に手続きを依頼するケースが多くあります。
土地や建物の面積などを記載する表題部については土地家屋調査士、所有権などを記載する権利部については司法書士に依頼するのが一般的です。
それぞれの専門家に依頼するときの相場は以下のとおりです。
- 土地家屋調査士:5~10万円
(測量をする場合は+10~20万円) - 司法書士:5~10万円
専門家への依頼費用は、登記の種類や不動産価格、地域によって異なるので、あらかじめ見積もりを取っておくのがおすすめです。
不動産登記に関わるよくある質問
最後に不動産登記に関わるよくある質問に回答していきます。
不動産登記は自分でできる?
不動産登記は司法書士などの専門家に頼まずに自分ですることも可能です。
住所変更登記や抵当権抹消登記などの手続きは、難易度が高くないため、比較的自分でも申請しやすいかもしれません。
ただし、登記の種類によっては必要書類が多く、専門知識が求められる場合があります。
法務局に行く時間が割けなかったり書類の準備に手間取ったりするのであれば、専門家に依頼したほうがよいでしょう。
不動産登記は義務化されている?
すべての不動産登記の手続きが義務化されているわけではありませんが、以下は義務化が進められています。
登記の種類 | 義務化の予定 | 申請期限 |
建物の表題登記 | 義務化済み | 建物の取得から 1ヶ月以内 |
建物滅失登記 | 義務化済み | 建物の滅失から 1ヶ月以内 |
相続登記 | 令和6年4月1日 | 相続人が取得を 知った日から3 年以内 |
氏名や住所の 変更登記 | 令和8年4月まで (具体的な施行 日は未公表) | 変更があった日 から2年以内 |
義務化されていない手続きでも、登記を怠ることでトラブルが起きる場合もあるので忘れずに申請しましょう。
不動産登記の費用は抑えられる?
登録免許税や必要書類の発行手数料は金額が決まっているため、節約ができない部分です。
そのため、不動産登記の費用を抑えるには、自分で登記をする、もしくは比較的低価格で依頼できる専門家を探す必要があります。
ただし、自分で登記するのは難しい場合があるので、複数の専門家から見積もりを取り、比較しながら納得のいく価格の依頼先を見つけるのがよいでしょう。
見積金額が適正価格であるかを確認する際は、日本司法書士会連合会や日本土地家屋調査士会連合会などが公表している報酬例を参考にするのもおすすめです。
トラブルにならないためにも必要なタイミングで不動産登記をしよう
不動産登記は土地や建物を購入したときだけでなく、住宅ローンを完済したときや所有者の住所や氏名が変わったときにも申請が必要です。
すべての手続きが義務化されているわけではありませんが、登記の申請が漏れてしまうと不動産の売却ができなかったり、相続トラブルに発展したりする可能性があります。
トラブルにならないようにも、どのような場面で不動産登記が必要となるかを押さえておくことが大切です。
不動産登記が必要かどうかが分からない場合は、司法書士などの専門家に相談しましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
コメント