亡くなった方が遺した財産の中に「みなし相続財産」と呼ばれるものがある事例は数多いです。
中でも生命保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税枠となるため、相続対策としてよく活用されています。
死亡退職金も生命保険金と同様にみなし相続財産であり、非課税枠があります。
- みなし相続財産と通常の相続財産の違いとは一体何でしょうか?
- 生命保険金の他に非課税枠がある財産とは一体何でしょうか?
本記事ではみなし相続財産と相続財産の違いや特徴、非課税枠について、相続税が非課税となる財産についてお伝えしていきます。
相続の予定がある方、FP技能士や相続士・相続診断士などの資格の勉強をされている方はぜひご覧ください。
みなし相続財産とは?通常の相続財産との違い
民法上「相続財産」には該当しないものの、実質相続によって得られる財産を「みなし相続財産」と呼びます。
生命保険金や死亡退職金など、被相続人が亡くなったことによって生じる財産を指します。
相続財産は土地や家屋などの不動産、有価証券、現金・預貯金、貴金属・宝石類・骨董品など被相続人に属する全ての財産を指します。相続財産は相続税の課税対象となり、それぞれの財産に応じた方法により評価・計算されます。
一方でみなし相続財産は生命保険金、生命保険契約に関する権利、死亡退職金、定期金に関する権利、著作権・特許権など「被相続人が亡くなったことにより受け継ぐもの」となります。
定期金に関する権利は生命保険の個人年金といった定期的に支払われるお金です。
他には「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税」又は「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税」の適用を受けた場合の管理残額といった非課税制度を利用した際の「残額」もみなし相続財産となります。
一定の特例を受けた場合を除き、被相続人の亡くなる3年以前に贈与を受けた財産、相続時精算課税の適用を受け取得した贈与財産も当てはまります。
多くのケースでは生命保険金・死亡退職金がみなし相続財産となりますが、どちらも被相続人が亡くなった後の遺族の生活を守るために非課税枠が存在します。
相続財産の中には他にも非課税となるものが存在します。詳しく見ていきましょう。
相続税が非課税となる財産
遺産の中で非課税となる財産は主に以下の通りです。
- 墓地や墓石、仏壇、仏具など
- 宗教、慈善、学術など公益事業を行う方が取得した財産で、公益事業に使われることが確実なもの
- 心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金
- 生命保険金・死亡退職金のうち一定額
- 個人で経営している幼稚園の事業のための財産で一定の要件を満たすもの
- 相続財産を国又は地方公共団体・公益を目的とする特定の法人に寄付したもの
- 相続財産で特定公益信託の信託財産として支出したもの
実際の相続における事例では1、4が該当する方が多くなっています。
4は前の項でお伝えした通り、遺族の生活の保障を目的としており、1は基本的に先祖から受け継ぐものであるため祖先崇拝を尊重する観点から相続財産とは切り離され、非課税財産となっています。
次はみなし相続財産の非課税枠について解説していきます。
みなし相続財産の非課税枠とは
みなし相続財産として受け取るケースが多い「死亡退職金」と「生命保険金」には非課税枠が存在します。どのように計算するのでしょうか?
非課税枠=500万円×法定相続人の数
例えば法定相続人の数が3人の場合、500万円×3=1500万円で生命保険金又は死亡退職金のうち1500万円が非課税となります。
非課税枠は生命保険金、死亡退職金それぞれに設けられています。
法定相続人とは、被相続人の配偶者・子供・父母・兄弟姉妹などが該当します。
配偶者は常に法定相続人となり、第1順位は子供(亡くなっている場合には孫)、第2順位は父母(亡くなっている場合には祖父母)で、兄弟姉妹は第1順位、第2順位の人もいないとき相続人になります。
内縁関係の方は相続人に含まれません。
相続人でない方が受け取った場合には非課税枠が適用されず、全額相続税の課税対象となってしまいますので注意しましょう。
生命保険金は「保険料負担者」に注意!
生命保険金がみなし相続財産となるのは、保険の契約を結んだ人(契約人)、保険を掛けられている人(被保険者)、保険料の負担者が「被相続人」である場合です。
保険料の負担者が被相続人以外である場合には、所得税もしくは贈与税の課税対象となります。
1989年の生命保険金をめぐる裁判における事例で具体的に想定してみましょう。
生命保険の被保険者は長男、契約者と保険金受取人は父親です。保険料は、長男が親戚からもらった前祝い金を充てていたとの事です。
裁判では、長男が亡くなったことにより、父親が受け取った生命保険金は「一時所得」として所得税の課税対象となるか、「みなし相続財産」として非課税枠を差し引いた残額が相続税の対象となるかで意見が分かれました。
結果的には「保険金受取人の取得した保険金が、一時所得として所得税の課税対象となるのか、相続財産とみなされて相続税の課税対象となるのかは、保険料の負担者が何人であるかによって判定されるべき」とされ、「みなし相続財産」という判決が下されました。
よって生命保険金がみなし相続財産となるか、それとも他の税金の課税対象となるかは「保険料の負担者」が重要となります。
みなし相続財産の特徴
他にもみなし相続財産には、相続を放棄しても受け取れるが非課税枠は無い、相続対策として利用されることが多いという特徴があります。
- 相続を放棄しても受け取れるが、非課税枠がない
- 相続対策として利用されることが多い
相続を放棄しても受け取れるが、非課税枠がない
みなし相続財産は、相続放棄を行った際にも受取人に指定されている場合には保険金を受け取る事ができます。
相続放棄は基本的に被相続人のすべての相続財産を放棄しますが、みなし相続財産は民法上相続財産ではないため受け取る事が可能です。手続きの面でも、他の相続財産と違い受け取る時に他の相続人の合意は必要なく受取人が保険会社と手続きを行います。
ただし相続放棄をした際にはみなし相続財産とはならないため、非課税とはならず控除額を超えた場合には相続税が課されます。
相続対策として利用されることが多い
生命保険金は非課税枠がありますので、相続税を節約するために利用されるケースが多いです。
被相続人が契約した生命保険に「500万円×法定相続人の数」を保険料として支払い、亡くなった時に生命保険金として受け取ることで税金が控除されます。
保険料負担者を「被相続人」にしておく点に注意しましょう。
まとめ
みなし相続財産は民法上相続財産とはならないものの、実質的には相続財産として扱われる財産で、生命保険金・死亡退職金には一定の非課税枠があります。
みなし相続財産や非課税となる遺産を知り、相続に活かしていきましょう。
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