都道府県や市区町村に納める代表的な地方税の一つに住民税が挙げられます。
普段何気なく納めていますが、仕組みや計算方法を詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
住民税の基礎知識は、家計管理やライフプランの設計をするうえで、最低限身に付けたいものです。
そこで今回は住民税の仕組みや納付方法、計算方法を解説します。
おすすめの節税対策もまとめているので、住民税の基礎知識を押さえて家計の負担を軽くしたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
住民税とは
住民税とは、都道府県や市区町村が提供する行政サービスの維持費を、その地域に住む人々が分担して支払う税金です。
たとえば、以下のような生活に欠かせないところに税金が使われています。
- 教育
- 福祉・医療
- 役所の運営
- 道路の整備
- 救急・消防
- ゴミの収集や処理
所得額をもとに計算される税金には、住民税のほかに所得税があります。
住民税は都道府県や市区町村に納める税金「地方税」となりますが、所得税は国に納める税金「国税」に該当します。
住民税の仕組み
一般的に住民税は、市町村民税と道府県民税の2つから構成されます。
納税する際は、各市町村に一括で支払い、そのうちの道府県民税は各市町村から対象の都道府県に払い込まれます。
出典:総務省
納税義務者
住民税は原則、前年の1月1日から12月31日までに所得があった人が対象で、その年の1月1日時点に住所があった市区町村(都道府県)に納めなければなりません。
たとえば、1月2日に引っ越して住所が変わったとしても、1月1日時点に住んでいた地域が納税先となります。
ただし、生活保護を受給しているなどの一定要件を満たす方は住民税が免除されます。
住民税の免除の対象となるかどうかは、自治体のホームページや窓口で確認しましょう。
住民税の納付方法
住民税は、確定申告や年末調整によって集められた情報から自治体が納税額を算出します。
納税額が決定すると、住民税決定通知書が個人や会社に送られ、以下のいずれかの方法で徴収されます。
- 普通徴収
- 特別徴収
それぞれ詳しく見ていきましょう。
普通徴収
普通徴収は、市区町村から送付される通知書で直接納税する方法です。
主に個人事業主やフリーランスなどの事業所得者が対象となり、翌年3月15日までに税務署や自治体に所得を申告することで納税額が決まります。
納付方法は、一括納付か年4回の分割納付かを選択できますが、一括で納付しても年間納税額は変わりません。
特別徴収
特別徴収は、会社などの事業主が納税者の代わりに納税する方法です。
サラリーマンなどの給与所得者が対象で、毎月の給料から天引きされます。
退職した場合は、退職時期や再就職するタイミングによって、納付方法が変わる場合があります。
一括徴収されたり普通徴収に切り替わったりする可能性があるので、あらかじめ会社に確認しておきましょう。
住民税の計算方法
住民税は、所得に応じて負担額が変わる「所得割」と、所得に関わらず定額である「均等割」から算出されます。
計算の流れは以下の通りです。
- 課税所得金額を求める
- 所得割額を求める
- 均等割額を足す
具体的な計算方法を詳しく解説します。
課税所得金額を求める
まずは、年間収入から必要経費や所得控除を引き、課税所得金額を求めます。
年間収入-必要経費-所得控除=課税所得金額
所得控除とは、納税者の状況に応じて所得から差し引けるもので、住民税には以下のような控除があります。
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 基礎控除 など
所得割額を求める
課税所得金額に所得割の税率をかけ、税額控除額を引くと所得割額が求められます。
課税所得金額×税率-税額控除額=所得割
税率は原則10%(市町村税6%、道府県民税4%)ですが、一部例外があるので計算をする際はあらかじめ自治体のホームページで確認しましょう。
税額控除は、税額を算出したあとに差し引くもので、配当控除や住宅ローン控除などがあります。
均等割額を足す
最後に算出した所得割額と均等割額を足すと、住民税の納税額が求められます。
所得割額+均等割額=税額
均等割は納税者の所得額に関わらず、定額で課税されるものです。
均等割額は、市町村民税の3,500円と道府県民税の1,500円の合計5,000円です。
ただ、平成26年度から令和5年度までの間は、東日本大震災を踏まえた防災費用の確保のためにそれぞれ500円が加算されています。
また、令和6年度からは、森林環境税として1人年額1,000円が住民税均等割と合わせて割賦徴収されます。
住民税の節税方法3選
所得控除や税額控除を活用すると、住民税の節税につながります。
今回は取り入れやすい節税方法を3つ紹介します。
- 医療費控除を利用する
- iDeCoに加入する
- ふるさと納税を活用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
医療費控除を利用する
医療費控除やセルフメディケーション税制を利用すると、節税につながる可能性があります。
医療費控除とは、納税者本人または生計を一とする配偶者、その他の親族のために支払った医療費が一定額を超えるときに受けられる控除です。
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例制度で、特定の医薬品を購入した際に受けられます。
医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないので、違いを知って使い分けましょう。
それぞれの対象額や上限額は以下の通りです。
医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
対象額 | 10万円以上 | 1万2,000円以上 |
上限額 | 200万円 | 8万8,000円 |
対象 | 治療費や医薬品購入費、検査費用など | OTC医薬品の購入費 |
控除額 | (支払った医療費-保険などに補てんさ れた額)-10万円 または所得額の5%のいずれか少ない方 | OTC医薬品の購入費-1万2千円 |
医療費控除は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
iDeCoに加入する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で決めた掛金額を積み立てながら資産運用できる私的年金制度です。
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となり、掛金の全額を課税所得から差し引けます。
そのため、掛金が大きいほど課税所得が減り、節税効果が高くなります。
ただし、掛金には上限があり、フリーランスや会社員など人によって上限額が異なるので注意が必要です。
また、iDeCoは老後資金を準備するための制度なので、原則60歳までは引き出せません。
なお、加入期間が10年に満たない場合は、受給できる年齢が繰り下げられ、60歳になっても引き出せないので注意しましょう。
ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、応援したい自治体や故郷などの好きな地域に寄付できる制度です。
寄付金額の2,000円を超える部分が控除対象となりますが、寄付金を支払っているため「税金の前払い」に過ぎません。
しかし、寄付金額の30%程度の返礼品が受け取れるので、生活必需品や特選物を選択すれば、家計の負担を減らすことにつながるでしょう。
住民税の仕組みを正しく知って節税しよう!
住民税とは、都道府県や市区町村が提供する行政サービスを維持するために欠かせない税金です。
住民税は、所得に応じて負担額が変わる「所得割」と、所得に関わらず定額である「均等割」から算出されます。
医療費控除や小規模企業共済掛金控除などを利用すれば、住民税の軽減につながります。
住民税の計算方法や節税対策を詳しく知りたい方は税理士、家計の負担を減らしたい方はファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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