障害があったり寝たきりになったりしている人が使用している介護用おむつの購入費用が、医療費控除の対象になることをご存じでしょうか。
介護用おむつの購入費用は、一定条件を満たした方が確定申告をすると、医療費控除として税金の一部が還付されます。
ただし、医療費控除の適用を受けるには、明細書を作成したり、おむつ使用証明書を提出したりしなければなりません。
本記事では、介護用おむつの購入費用が医療費控除となる条件や、確定申告までの流れを紹介します。
ご家族がおむつを使用していて、介護費用の負担を少しでも減らしたい方は、ぜひ参考にしてください。

おむつ代は医療費控除にできる

冒頭のように介護用おむつの購入費用は、一定条件を満たした方が確定申告をすると医療費控除の対象として、税金が一部還付されます。
ここでは、おむつの購入費用が医療費控除の対象となる適用条件と、申請に必要な書類を詳しく紹介します。
適用条件
介護用おむつの購入費用は、以下の条件をすべて満たした場合に医療費控除の適用が受けられます。
- 傷病が原因で約6ヶ月以上寝たきり状態である
- 継続的な治療を必要とし、医師からおむつの使用が必要と認められている
寝たきりの状態が6ヶ月以上続いていることが条件であるため、病気の発症から間もない方は対象外です。
さらに、おむつの継続的な使用が必要であると医師に証明してもらわなければなりません。
必要書類
介護用おむつを医療費控除の対象として申請するには、以下の書類が必要です。
- 医療費控除の明細書
- おむつ使用証明書(確定申告1年目)
- おむつ使用認定書または主治医意見書の写し(確定申告2年目以降)
「おむつ使用証明書」は、初めておむつの医療費控除を受ける年の確定申告書に添付しなければなりません。
なお、おむつ使用証明書の内容を医療費の明細書に転記すれば提出を省略できます。
おむつ使用証明書は、医師が記載する書類となるため、治療を受けた病院に作成してもらいましょう。
また、2年目以降はおむつ使用証明書に代えて自治体が発行する「おむつ使用認定書」または「主治医意見書の写し」でも、医療費控除を受けられます。
おむつ使用認定書は主治医意見書の内容をもとに、自治体が作成する書類です。
なかには、要介護者の自立度や尿失禁の状況など、特定の要件を満たさなければ発行されない自治体もあるので注意が必要です。
おむつ使用認定書の発行を希望する場合は、あらかじめ要件に該当しているか確認してから依頼しましょう。
一方、主治医意見書は介護保険の認定申請を行った際に、医師が作成する意見書のことをいいます。
原本は自治体が保管しているため、医療費控除に利用する旨を伝えたうえでコピーを依頼しましょう。
なお、いずれの書類も介護保険の認定を受けている方のみが対象です。
介護保険の認定を受けていない方は、1年目と同様におむつ使用証明書の発行を病院に依頼しましょう。
おむつ代の医療費控除を受けるまでの流れ

おむつ代の医療費控除を受ける際は、以下の流れで手続きができます。
- 医師におむつ使用証明書を記載してもらう
- 医療費控除の明細書を作成
- 税務署に提出
おむつ使用証明書は医師が記載する書類となりますが、病院の文書受付窓口などを通して依頼すると手続きがスムーズに進みます。
書類作成に料金や時間がかかる場合があるので、依頼時にあらかじめ確認しておきましょう。
なお、医療費控除を受ける際は、おむつを購入した際の領収書を参照して自分で明細書を作成しなければなりません。
明細書を提出する場合は、領収書原本の提出は不要です。
明細書に購入費用を書き忘れてしまうと、還付される税金が減ってしまう可能性があるので、記載漏れがないように注意しましょう。
さらに、以下の内容を医療費控除の明細書の欄外余白に記載すると、おむつ使用証明書の提出も省略できます。
- おむつ使用証明書に記載された証明年月日、証明の名称
- 証明者の名称(医療機関名など)
医療費控除の明細書は、最寄りの税務署で作成できるほか、国税庁のホームページからダウンロードもできます。
自宅で医療費控除の明細書を作成しておくと、税務署での待ち時間が短縮できるので、ぜひ活用してみてください。
おむつ代の医療費控除を受ける際の注意点

おむつ代の医療費控除を受ける際には、以下の注意点があります。
- 医療機関ごとにおむつ証明書が必要になる
- 適用条件に該当する方以外のおむつ購入費は対象外
- 領収書とおむつ使用証明書は保管が義務付けられている
医療機関ごとにおむつ使用証明書が必要になる
おむつ使用証明書の記載項目には、おむつの使用期間があるため、複数の医療機関を受診していれば、病院ごとに作成してもらわなければなりません。
2023年3月に病気を発症しA病院で治療、2023年11月にB病院へ転院していた場合は、下表のように請求先が異なります。
治療期間 | おむつ証明書の依頼先 |
2023年 3月~ 9月分 | 医療費控除の対象外 |
2023年 9月~10月分 | A病院 |
2023年11月~12月分 | B病院 |
このように、おむつ使用証明書の作成をA病院・B病院のどちらにも依頼しなければなりません。
なお、おむつ使用証明書の作成依頼が遅くなった場合でも、さかのぼって記載してもらえます。
あくまでも治療が必要と医師が認めた期間の証明となるため、病院で治療を受けていない期間はおむつ使用証明書の発行が難しいと認識しておきましょう。
適用条件に該当する方以外のおむつ購入費は対象外
おむつの医療費控除は、寝たきり状態が6ヶ月以上続いていたり、おむつが必要と医師が認めていたりする方が対象となるため、子どものおむつなどは対象になりません。
医療費控除の適用要件を満たしている方以外に、おむつを使用する家族がいる場合は、レシートや領収書を分けて保管しておきましょう。
領収書とおむつ使用証明書は保管が義務付けられている
おむつ代の医療費控除を受けた場合は、領収書とおむつ使用証明書を確定申告から5年間保管しなければなりません。
医療費控除の明細書を作成すると、領収書とおむつ使用証明書の原本添付を省略できますが、確定申告後に提出を求められる場合があります。
いずれの書類も5年間は捨てずに、保管しておきましょう。
おむつ代の医療費控除を受けて自己負担を軽減しよう
おむつ代は医療費控除の適用を受けると、税金の一部が還付されます。
ただし、医療費控除を受けるためには、おむつ証明書を医師に発行してもらったり、医療費控除の明細書を作成したりする必要があります。
医療費控除の対象になるか分からない場合は、最寄りの税務署に相談してみましょう。
おむつ代や入院費用などの介護費用に不安を感じているのであれば、ファイナンシャルプランナーに相談してみるのもおすすめです。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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